VMware Cloud on AWSで用いられる物理ホストは、AWSのデータセンターにある豊富な数のベアメタルインスタンスから払い出される。顧客は、必要な時に必要なだけベアメタルインスタンスをSDDCの物理ホストとして利用する。この「必要な時に必要なだけ」、というのは2つの意味で重要である。
まず、顧客は規模による設計の使い分けや将来の最大キャパシティーを見越した設計を行う必要がない。VMware Cloud on AWSのSDDCアーキテクチャは、最小構成(3ホスト)から最大構成(320ホスト)まで、vSphereクラスタが増える以外は同一の設計でスケールするからである。
次に、1時間ごとのオンデマンド課金で利用ができ、変動するキャパシティが必要な場合に、コストを最小化できる。オンデマンド課金以外にも、1年、3年のサブスクリプション形式での課金が可能。また、支払い方法も、「Subscription Purchasing Program(SPP)」というVMwareによるポイントプログラムの利用、請求書ベースでの利用、クレジットカードといったさまざまな方法を提供している。オンプレミスでのSDDCの投資に応じた「Hybrid Loyalty Program(HLP)」という割引プログラムもあるので、既存のVMwareベースのオンプレミス環境への投資が無駄にならない。
VMware Cloud on AWSでは、SDDCの環境を操作するために、vCenter Serverに対する直接のアクセスを顧客に提供している。これによりオンプレミスのvCenter Serverを操作する際に利用しているvSphere Clientによって、全く同様のUI(ユーザーインタフェース)操作を行うことができる。つまり、オンプレミスのvCenter Serverを扱うことができれば、学習コストなくVMware Cloud on AWSのSDDCを運用できる。また、vCenter ServerのAPIも開放されているので、vSphere PowerCLIなどのスクリプティングツールやvCenter Serverと連携するサードパーティー製の運用ツールも流用できる。
VMware Cloud on AWSのSDDCと、オンプレミスのvSphere環境では、同じハイパーバイザが稼働し、仮想マシンは同一の仮想マシン設定ファイル、同一の仮想ディスクフォーマットで実行される。このためクラウドへ移行するために、仮想マシンの停止や仮想マシンの長時間の変換作業が必要ない。同一フォーマットであることにより、最小の移行手順、最小の停止時間での移行、あるいはvMotionによる無停止での移行を実現している。この事実が、VMware Cloud on AWSを、オンプレミスとの親和性が高いハイブリッドクラウドソリューションであることの裏付けとなっている。
「Hybrid Cloud Extension(HCX)」という移行支援機能を用いると、その親和性はさらに高まる。HCXを介したvMotionでは、vSphereのバージョン互換性、物理ホストのハードウェア世代の互換性が向上し、古い世代の仮想環境からのライブマイグレーションが行いやすくなっている。また、HCXによるvMotionのバリエーションである「Cloud Motion with vSphere Replication」では、vMotionにおける最も時間のかかるプロセスである仮想ディスクのコピーをvMotion実行前にあらかじめ行うことで、数千台規模の仮想マシンの一括移行を可能としている。
さらには、オンプレミスのvSphere環境からクラウドのSDDCへの一方向の移行に加え、クラウドのSDDCからオンプレミスのvSphereの環境への逆方向の移行や、SDDCクラウド間の移行を実現している。
VMware Cloud on AWSは、AWSのデータセンターで稼働するため、VMware Cloud on AWSからAWSの各種サービスを低遅延、広帯域で利用できる。Amazon S3、Amazon Route 53、AWS Lambdaといったグローバルまたはリージョンレベルのサービスだけでなく、VPC Endpoint、Amazon RDS、Elastic Load Balancer(ELB)といったVPCレベルのサービスへのアクセスも可能になっている。連携できるAWSのサービスの所有者は、顧客が保有するAWSアカウントとなる。
顧客のVPC内のAWSサービスにVMware Cloud on AWS内の仮想マシンからアクセスできるようにするために、VMware Cloud on AWSのSDDCは「Elastic Network Interface(ENI)」を使ってVPCと接続されている。この ENI は「VMware Cloud ENI」と呼ばれ、AWSアカウントを超えたリソース同士を接続するためにVMware Cloud on AWSに向けていち早く開発されたAWSの機能である。
VMware Cloud on AWSは、AWSのデータセンター内でAWSの機能を用いて実装されている。つまり、AWSのリージョンがありVMwareの準備が整えば、どのリージョンでもVMware Cloud on AWSを利用できる。グローバルな顧客であれば、欧米事業所のITのクラウド化の推進や、グローバルビジネスを支える災害対策などにも、世界各地のリージョンを活用できる。
2019年3月現在、米国西海岸(オレゴン、北カリフォルニア)、米国東海岸(北部バージニア、オハイオ)、GovCloud(東部)、カナダ、欧州(ロンドン、フランクフルト、アイルランド、パリ)、シドニー、東京、シンガポールでVMware Cloud on AWSが利用可能で、今後、残りのリージョンについても順次利用可能にする。日本では、大阪ローカルリージョンでもVMware Cloud on AWSを提供する予定である。AWSでも特徴的な位置付けの大阪ローカルリージョンで、どのようにサービスが提供されるかについては、リリース時までお待ちいただきたい。
VMware Cloud on AWSでは、ユーザーに対しvCenter ServerのUIおよびAPIを開放している。つまり、これまで利用していたサードパーティー製の運用管理ツールとVMware Cloud on AWSを組み合わせて利用できる。VMware Cloud on AWSに対応したサードパーティー製ツールは、VMware Solution Exchangeで確認できる。バックアップソフトウェアについては、より詳細な組み合わせをVMware Compatibility Guideで確認可能だ。
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