Google CloudのAnthosと、ハイブリッド/マルチクラウドKubernetesのユースケース(2/2 ページ)

» 2019年04月25日 05時00分 公開
[三木泉@IT]
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 また、角守氏は国内の企業顧客の間で、GDPR(EU一般データ保護規則)などの規制/コンプライアンスを確保した、コンテナベースのアプリケーション開発環境を構築・運用したいという引き合いが非常に多いと話した。

NTT Com クラウドサービス部門ホスティングサービス部門長の角守友幸氏

 NTT Comは今回のAnthos発表で、アジア唯一のパートナーとしてリストされている。ただし上記の通り、ハイブリッド/マルチクラウドKubernetes以前のニーズが大きいという理由から、AnthosのうちGKE on Premを先行して提供する計画だ。まず、同社の企業向けクラウドサービス「Enterprise Cloud」で、顧客専用のベアメタルサーバを使ったGKE On-Premの構築・運用代行を行う商用サービスを2019年度中に提供開始する。併せてサーバコロケーションサービスの「Nexcenter」におけるGKE on Premの提供も検討している。

 当初はNTT ComのデータセンターにおけるGKE on Premのみだが、その後はIstioなど他の要素を含む、Anthosとしての提供に発展させていきたいという。具体的には、同社データセンターとVPN接続した上で、工場などの顧客拠点におけるGKE on Prem/Anthosの運用代行サービスを展開し、さらに場合によってはGCP上のGKEを連携させた、ハイブリッド/マルチクラウドのコンテナ環境サービスにつなげていきたいとしている。

 阿部氏によると、製造業に属するGoogle Cloudのある国内顧客は、「これまでエッジ、プライベートクラウド、パブリッククラウドを統合的に活用する効果的な手段がなかった。一方Anthosを使うと、各システムがどこで動いているかを管理しながらも、柔軟な配置ができるようになる可能性がある」と話したという。

Anthosのキラーアプリケーションとは?

 前出のAnthos責任者であるマナー氏は、Anthosのキラーアプリケーションとして3つを挙げる。

開発スピードの向上

 「Anthosの成功度を測る方法の一つは、顧客の開発スピードをどれだけ加速できるかにある。Anthosによって1日何回のリリースが可能になるか。そのために、テストやカナリアリリースなどの作業を含めて自動化できる環境を提供する」(マナー氏)

SaaSなどのサービス提供支援

 「独立系ソフトウェアベンダー(ISV)がデータベースや電子商取引などのサービスを開発し、これを複数のクラウドなどで提供させたいといったときには、Anthosが唯一の(効果的な)選択肢になる。開発したソフトウェアを、各デプロイ先に合わせて構築しなくて済むからだ。例えば今回、MongoDBなどオープンソースベンダー6社との提携を発表した。これらのベンダーはAnthosをベースとして各社のサービスを構築している」(マナー氏)

セキュリティが組み込まれた柔軟な本番運用環境

 「コードを一度書けば、セキュリティが確保されていることを当然と考えて、どこでも動かすことができる。セキュリティソフトウェアを別途購入して適用すると、問題が発生しやすいし、セキュリティギャップも避けられない。AnthosではIstioサービスメッシュによるレイヤー7をカバーした通信制御や、承認されたデプロイメントが適用できる。本番環境では、署名されたコンテナのみを走らせることができる。その上で、監査ログを含めた監視/ログ機能を組み込んでいる」(マナー氏)

法規制対応や、機械学習/エッジコンピューティングのユースケースも

Google Cloudエンジニアリング担当バイスプレジデントのエイヤル・マナー氏

 Google Cloud Next ’19では、東京オリンピックも担当するAtosなどのグローバルなシステムインテグレーターが、こぞってAnthosへの期待を口にした。GDPRなどの関係で、これらインテグレーターのグローバル顧客は、データと処理の場所を確実に管理せざるを得なくなっており、こうしたニーズにAnthosを適用しやすいからだという。

 一方、Google Cloudの機械学習/AI担当者は、今回のイベントで発表したパイプラインサービスとAnthosを組み合わせることで、学習プロセスと推論プロセスをさまざまな場所へ柔軟に配備できるようになると話した。

 機械学習/AIにも関連するが、エッジコンピューティングが今後広がるにつれ、Anthosの価値はさらに大きくなると、マナー氏は説明した。

 「ロケーションベースのサービスやオンラインゲーミングをはじめとした用途で、エッジコンピューティングは今後とても重要になる。レイテンシを極限まで低減するには、エッジで機能を提供する必要があるからだ。こうしたケースで、Anthosはサービスを迅速にデプロイし、走らせるためのおそらく唯一の手段になる」

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