新年度の始まりは、CIOが新しい目標を立てる良い機会だ。職業人として目指す方向を再設定しよう。本記事では何に取り組むべきかについて、10の例をお届けする。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
新年度は、CIO(最高情報責任者)にとっても、自己研さんの目標を見直す良いタイミングだ。2019年度は、デジタルビジネスの計画策定に必要な文化の転換が大きな焦点になる。ほとんどの企業がデジタルトランスフォーメーションを進めているが、この取り組みを大規模に展開するのに苦労しているのは、文化の転換がうまくいっていないからだ。
「少し自分の内面を見つめて自己研さんを積むことは、一般的に良いアイデアだ。CIOにとっては特に大事なことだと、われわれは考えている。CIOの役割は変化し、進化しているからだ。最近では特に、文化の転換をリードする役割が重要になっている」と、Gartnerのアナリストでディスティングイッシュト バイスプレジデントのマーク・ラスキーノ氏は語る。
Gartnerは、経済の逆風でビジネスの課題が深刻化しそうな新年度に入り、CIOが求められる役割を果たせるように考え方を転換するにはどのような目標を立てて自己研さんすべきかを考察し、10の目標例をまとめた。
これらの目標例は、3つのグループに分類される。
CIOは、以下の例から3つか4つを個人目標として選び、2019年度を通じて取り組むとよい。
定義されたデジタル目標に直接関わる領域に的を絞って、物事を見る力を養うのは簡単だが、他の領域への目配りがおろそかになり、新しいものを見落としてはならない。自分の視野の外にある潜在的な新しい変化や技術を常に頭に入れておくには、従来のITとは異なる技術に関連する「SXSW」や「CES」のようなイベントに参加する。
自社がデジタルプロジェクトに乗り出したもともとの理由を振り返るときだ。市場や業界は、デジタルプロジェクトが開始されたときと比べて変化している。プロジェクトが計画に沿って進んでいること、適切に活用されていることを確認する必要がある。ITチームに、プロジェクトを行うビジネス上の理由を考えるよう促すようにする。
自社のビジネス部門が手掛けていない技術関連分野(データサイエンスなど)を見つけて、ごく小さなチームを立ち上げ、その分野のビジネス上の可能性を社内に提示する。
IT予算についてではなく、ビジネス上の利益と損失について話すようにする。CEO(最高経営責任者)は、デジタルビジネスの成長を収益の成長と関連付けるが、ITはコストで評価される場合が多い。コストを示す指標だけでなく、貢献度を示す指標も定義し、デジタルプロジェクトの予算は収益条件とともに設定する。
われわれの行動の動機に光を当てる行動神経科学は、ほとんどのリーダーが十分に活用していない分野だ。だが、文化の変革を目指すリーダーにとって、強力なツールになり得る。企業役員向けの神経科学のクラスを受講したり、チーム全員を受講させたりして、チームの知力向上を推進するとよい。また、空想にふける時間を作り、自身の想像力を刺激する。
2〜5日間、スマートフォンやコンピュータ、タブレットの使用を控えるデジタルデトックスを行う。デトックスを成功させるには、電話の機能をデジタルと非デジタルに分ける。例えば、物理的なカレンダーは使い続け、印刷された書籍や新聞も読むようにする。デトックス後は、電話の自動通知を切るとともに、デバイスなしでミーティングを行うことを検討する。
誰もが無意識の偏見を持っており、それらは人材採用や技術利用に大きく影響する場合がある。求人広告に、性別、民族、宗教に基づいて応募者を引き付ける、または締め出す可能性がある言葉がないか調べる。社内の給与水準や昇進についても、性別、民族、宗教に基づく格差を是正する機会がないか調べる。
IT部門の権限を増やし、リーダーシップを拡大する方法として言葉を使う。IT部門の社内での位置付けを、サービスプロバイダーからビジネスパートナーへとリセットする言葉遣いをするとよい。例えば、社内の同僚に言及するときに「顧客」という言葉は使わない。
「CIOは取締役会へのプレゼンテーションに、これまで以上に多くの時間を費やすようになっている。彼らは毎回、効果的なプレゼンテーションを行う必要がある」と、Gartnerのアナリストでディスティングイッシュト バイスプレジデントのティナ・ヌノ氏は指摘する。CxO(最高責任者レベル)の役員と話すときは、例えば、バランスシートなどについてのやりとりが必要になる。
誰もがIT部門について意見を持っており、聞こえてくる意見が全て肯定的なものとは限らない。このことは、IT部門の士気に大きく影響しかねない。CIOは、肯定と誇りの文化の構築に向けて動く必要がある。例えば、完全性の実現は良い目標だが、どんなプロジェクトにも障害があることを認めることで、現実的な期待を設定できる。新しい文化の構築に当たっては、誇りを持てること、これまでの成功の積み重ねを可視化すること、IT部門が進化することを考慮に入れる。
CIOが日々、お役所的な仕事に追われるのは珍しいことではない。だがCIOは、新しく出てきた技術を理解する(そして場合によっては、その実装を指揮する)責任も負わなければならない。これらを両立させることが重要だ。一部の新しい技術は読むだけで理解できるが、理解するには一定時間、手を動かす必要がある技術も存在する。そのための小規模な予算を確保する。
「今も、デジタルトランスフォーメーションの社内における最大の課題は、よりデジタルな組織文化をどうやって作るかだ」。Gartnerのアナリストでディスティングイッシュト バイスプレジデントを務めるマリー・マザーリオ氏はそう語る。「そのためには、CIOは自分を律して新しい技術を学び、アイデアを書き留め、時間を捻出してそれらを実行する必要がある。それを半年続けたら自分の進度をチェックし、それを踏まえて次の半年も努力を重ねる。このサイクルを継続していく」
出典:10 CIO Resolutions for 2019(Smarter with Gartner)
Brand Content Manager at Gartner
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