DX推進人材が大幅に不足、IPAが企業のDXに関する取り組みを調査自社が競争力を維持できるのはあと2〜3年?

独立行政法人情報処理推進機構の「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」によると、日本企業ではまだDXが黎明(れいめい)期にあり、「本来のDX」実現までの道のりはまだ遠いようだ。

» 2019年05月21日 08時00分 公開
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記事の訂正について(2019/5/29)

人材の不足感に関する調査結果に訂正があり、本文中の表現を一部修正しました。

 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は2019年5月17日、「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」の結果を発表した。これは、デジタルトランスフォーメーション(DX)に対する企業の取り組み状況や課題などを把握することが目的。調査からは、多くの企業がビジネス変革の必要性を強く認識していることや、DXを推進する人材が大幅に不足していることなどが明らかになった。

 AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)といった技術の普及が自社に与える影響については「自社の優位性や競争力の低下」を懸念する声が最も多く、58.7%(複数回答)だった。他には「新たな代替製品・サービスの台頭」(52.2%)や「既存企業間での競争の激化」(43.5%)、「新規参入企業による競争の激化」(42.4%)を挙げる企業が多かった。

 自社が競争力を維持できる年数が短いと考えている企業が多いことも分かった。自社が競争力を維持できる年数が、「約2〜3年後」と回答した割合は22.8%、「約5年後」は28.3%で、およそ半数は5年以下だと考えていた。「15年後以降」と回答した割合は2.2%しかなかった。

 こうしたビジネス環境の中、63.0%の企業が、既存ビジネスの変革や新ビジネス創出の必要性を「非常に強く」感じていた。「ある程度強く感じている」(28.3%)も合わせると、9割以上になる。

DXの導入成果は?

 次に、DXについて聞いてみると、日本企業はまだ黎明(れいめい)期にあるようだ。

 DXという用語を社内で利用しているかどうかについては「あまり使われていない」との回答が52.2%、「聞いたことがない」は13.0%で、「全社的に広く使われている」は7.6%にすぎなかった。

 CDO(Chief Digital Officer:デジタル担当役員)を設置している企業は、「専任の役員がいる」(3.3%)と「CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)が兼任している」(9.8%)、「CIO以外に兼任している役員がいる」(2.2%)を合わせて15.3%。これに対して「そのような担当役員はいない」との回答は84.8%に上った。

 なお、現在取り組んでいるDXの内容については、「業務の効率化による生産性の向上」が最も多く78.3%。次いで、「既存製品・サービスの高付加価値化」の56.5%が続いた。将来のデジタル市場で勝ち残るための本来のDXである「新規製品・サービスの創出」は47.8%で、3番目だった。

 一方、DXの取り組みに関する成果の創出状況については、難易度が高く、時間を要することが分かった。最も取り組みやすい「業務の効率化による生産性の向上」であっても、「既に十分な/ある程度の成果が出ている」との回答は3割程度にとどまった。こうした結果を受けてIPAは「DXの取り組みは、成果を創出するための難易度が高く、時間を要する場合が多いが、こうしたDXの取り組みを着実に継続することで、その成功率を向上させ、わが国全体としてのDXの取り組み成果を拡大していくことが期待される」としている。

 成果創出の難易度は高いものの、そうした中で高い成果を出している組織は「DX専門組織」を設置していることが分かった。今回の調査では、全体の約4割の企業がDX推進のための専門組織を設置していたが、組織体制別にDXの推進レベルを見てみると、DX専門組織に加え情報システム部門も関与している企業のレベルが最も高かった。それに対して、情報システム部門のみにDX推進の役割を負わせた企業は、最もレベルが低かったDX担当組織を設置していない企業に次いで、レベルが低かった。

本来のDXからの乖離をどう埋めるのか

 最後に「プロデューサー」や「ビジネスデザイナー」「アーキテクト」「データサイエンティスト/AIエンジニア」「UXデザイナー」「エンジニア/プログラマー」という6つの役割を定義し、それぞれについて企業内でDX推進を担う人材の不足感について調査したところ、いずれも「大いに不足」という回答が最も多かった。特に、「プロデューサー」と「データサイエンティスト/AIエンジニア」「ビジネスデザイナー」では「大いに不足」との回答が半数を超え、「アーキテクト」でも47.8%に上った。

 こうした調査結果を受けてIPAでは、次のように分析している。

 多くの企業が取り組んでいるDXは、現状では「既存業務の効率化」が主流で「新規製品・サービスの創出」などの将来のデジタル市場で勝ち残るための「本来のDX」とはまだ少し乖離(かいり)があることが把握された。こうした状況から脱し、第一歩を踏み出すためには、将来に対する強い危機感を行動に移し、失敗を恐れずに新たな挑戦を始めることが重要だ。

 一方、「本来のDX」に取り組み始めた企業にとっては、その取り組みが成功するまでに時間を要することが課題として明らかになった。将来のデジタル市場で勝ち残るための「本来のDX」は難易度が高く、容易に成功しないことを広く共有しつつも、漫然と取り組みを続けるのではなく、失敗要因を分析し、徐々に成功率を高めていくような辛抱強いマネジメントが求められる。

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