初期のコンピュータには「スイッチ」しかついてなかった。次に大量のデータを読み込ませるために「穴の開いたカード(パンチカード)」が作られた。
HAL 9000が「アンテナAE-35が故障した」と報告した後、ボーマンの要求でアンテナのデータを取り出すメディアがパンチカードである。
現代のコンピュータはキーボードを使ってテキストデータを入力する。しかし「2001年」を通してHAL にキーボード入力するシーンは一度も登場しない。
ちなみに、「2010年」では、HAL の開発者の一人とされるドクター・チャンドラが、HAL 9000と同形機の「SAL」に作戦名「PHOENIX」をキーボード入力するシーンがあり、キーボードも持っていることが示される。その後、HALの再起動時にもキーボードをたたくシーンがある。
「2001年」で人間は、HAL 9000と音声でやりとりをする。これは「音声インタフェース」で、入力と出力は別々の技術である。
音声入力は「音声認識」といい、「Speech Recognition」や「Dictation」という。業界では「ASR」(Automatic Speech Recognition)というのが標準的な用語である。現代のASR技術は、音声パターンを識別技術でテキストデータに変換するのが一般的で、テキスト入力装置だと考えることができる。
音声出力は「音声合成」(Speech Synthesizer)といい、「TTS」(Text To Speech)が最近の一般的な呼び名である。最近流行のスマートスピーカーも、人の声を聞き取り、発話するために内部ではASRやTTSを使っている。
HAL 9000には、そのイメージを象徴的にしている「赤い眼」がある。
想定としては高解像度の広角カメラである。HALはこの「眼」で、人を見分け、スケッチを鑑賞し、唇の動きを読む。
コンピュータと人間のやりとりを行う箇所を「インタフェース」と呼び、最近は「HMI」と言うこともある。HMIは、Human Machine Interfaceの略だ。
HAL 9000にはキーボード、音声、カメラによる入力と、スピーカーによる出力、ディスプレイによる表示が備えられている。このように複数の入出力を同時に使うHMIのことを「マルチモーダルHMI」と呼ぶ。
興味深いのは、HAL 9000にはマウスやタッチパネルといった「ポインティングデバイス」がないことである。いまでは当たり前になった「GUI」(グラフィカルユーザーインタフェース)やマウスのようなポインティングデバイスが世の中に知られるようになるのは、「2001年」制作以降のことである。
HAL 9000には、カメラ、マイクの入力とスピーカー出力が組み合わされたマルチモーダルHMIが搭載されている
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