2019年6月下旬に中国の上海で開催されたコンテナとオープンソース関連のカンファレンス、「KubeCon + CloudNativeCon + Open Source Summit China 2019」で目立ったのは、OSSの世界における中国企業の存在感だ。OSSの消費者というだけでなく、有力なリーダーになりつつある。
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「政治的なノイズも聞こえてくるが、オープンソースの精神を推進しているLinux Foundationに感謝したい」。2019年6月下旬に中国の上海で開催されたコンテナとオープンソース関連のカンファレンス、「KubeCon + CloudNativeCon + Open Source Summit China 2019」で、Huawei Technologiesの戦略/事業開発責任者、イバン・シャオ(Evan Xiao)氏は、自らの講演でこう話した。「オープンソースソフトウェア(OSS)なら活用し放題だ」ということではない。OSSを通じて、世界にリーダーシップを発揮していけることを感謝したいのだという。
米国政府の意向がどうであるかにかかわらず、OSSの世界における中国の企業・組織や個人開発者の存在感が増している。中国といえば、OSSに関しては「消費国」としてのイメージが大きかった。しかし、同カンファレンスでは、中国がOSSの利用に加え、開発にも大きく貢献している具体的な事実が、これでもかというほど明らかになった。
Linux Foundationのエグゼクティブディレクター、ジム・ゼムリン(Jim Zemlin)氏は次のように話した。
「OSSは、主要なテクノロジーのほぼ全てにおけるソフトウェアの大部分を占めるようになった。興味深いのは、OSSがどこででも生まれるということだ。Linuxのように、フィンランドの大学の寮で生まれるものもあるし、Apache Web Serverのように、米国の大学で生まれるものもある。また、国際的な通信企業で生まれるものもある。(仮想ネットワーク構築・運用プラットフォームのOSSプロジェクトである)ONAP(Open Network Automation Platform)は、中国のチャイナモバイルが始めたOpen-Oが源流(の1つ)になっている。どこで始まったかに関係なく、世界中の人々がアクセスできるようになる。さらに素晴らしいのは、誰もが参加できることだ。(中略)あらゆる人がイノベーションを共有できる。OSSは確実に機能している世界的なムーブメントだ」
今回のカンファレンスにおけるテーマの一つであるコンテナオーケストレーションシステム、Kubernetesについては、このOSSプロジェクトへの(四半期ごとの)コントリビューションを国別に分類すると、中国は米国に次いで第2位になっているという。
ゼムリン氏が講演で示した図を見ると、2016年第3四半期以降、ドイツとほぼ並ぶような形で、コントリビューション数2位と3位の座を分け合ってきたことが分かる。つまり、中国の企業や個人はKubernetesへのコントリビューションで、少なくとも過去3年間安定的に存在感を示してきたと表現できる(ちなみに、この図では、米国、中国、ドイツ、英国、インド、ポーランド、カナダ、フランス、オーストラリアと続き、第10位に日本が位置している)。
KubernetesをホストしているCloud Native Computing Foundation(CNCF)では、他のさまざまなコンテナ関連OSSプロジェクトが活動しているが、中国企業および中国の開発者はこれらのプロジェクトの一部にも積極的に関わっている。また、これらのCNCFプロジェクトのうち3つは、中国発祥のものだという。この3つには含まれないが、Alibabaは同カンファレンスで、Kubernetes上のアプリケーション管理自動化に関する新OSSプロジェクト、「OpenKruise」を発表した。
すなわち、中国企業は、OSSを消費し、既存OSSプロジェクトに貢献するのに加え、新たなプロジェクトを推進する側にも回っている。同カンファレンスでは、KubernetesやCNCFプロジェクトに限らず、今後にかけて重要性を増す分野において、有力なOSSプロジェクトを中国企業が創始、あるいは初期メンバーとして加わっている例も、次々に紹介された。
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