阿部川 ディレイソンさんは、エンジニアとして20年お仕事をなさっているわけですが、仕事をしていて、どんなところに一番魅力を感じますか?
ディレイソン氏 仕事をしていると、毎週、いや毎日、新しく学ぶことがあります。その中でも一番魅力を感じるのは新たに出てきた問題を、新たな方法で解決したとき。そして、それまで知らなかった新しいことを学んだときです。
それはテクノロジーの面でも、ビジネスの面でも、マーケティングの面でも同じです。Tenableで長い間、このように感じながら仕事ができていることは、非常にラッキーなことだと思います。新しいことを学ぶたびに、自分が成長していることが感じられますし、「まだまだいろいろな分野で学ばなければならないことが多いな」と常に思います。
阿部川 日本の、特に若いエンジニアに対して一言メッセージをお願いできますか。
ディレイソン氏 はい(といって、しばし沈思黙考して)。
まずは「自身の地平線を越えよ」ということです。自分が今、限界と思っていることの先まで行こう、とでも言いましょうか。もちろんさまざまな分野で状況は違うとは思いますが、自分のインスピレーションを信じてほしいと思います。
私は分野や文化が違っても、あるいは違うからこそ、新しいことが学べると強く信じています。例えばヘルスケアの業界で仕事をしていたとしても、ファイナンスの分野の考え方を学ぶと、新しい視点が生まれるといったように。
2番目は「限界に挑むような環境を作れ」です。居心地の良い、ぬくぬくした自分の殻から飛び出して、面倒くさい問題に取り掛かりましょう。それを解決したときこそ、大きな見返りがありますし、大きな満足も得られると私は思います。
この2つが、私にとっての「エンジニアとしての信条」です。
阿部川 素晴らしいアドバイスを、ありがとうございます。それと「大学は辞めない方がいい」ですかね(笑)。
ディレイソン氏 そうですね(笑)。フランスは大学の学位がないと就職するのが難しい国ですから、20年前の私の決断は「シートベルトなしで車を運転していた」ようなものです。安易に私のまねはしないでください(笑)
どう言えば思いが伝わるのかと少し考えるようなしぐさをして、言葉を選んでゆっくり話すのだが、その時に必ずといっていいほど、大きめの瞳が輝きを放つ。素直な青年が、その情熱の導くままに、日夜セキュリティソフトウェアの開発に取り組んでいたあの日から20年、生まれついてのホワイトハッカーは、より粘り強いエンジニアに、そしてしぶとい経営者へと成長した。
「世界を救う」などと決して大上段には振りかぶらないが、毎日、毎日、ユーザーコミュニティーとともに、細かいことや面倒くさいことに「それが僕には楽しかったから」(Linuxカーネルを開発したリーナス・トーバルズ氏の言葉)と、コツコツと向き合って解決策を積み重ねてきた。
お話を伺って、IT業界は、やっぱり“人々の情熱が支えている”と感じた。情熱を込めてなされた仕事が誇りとなり、その誇りは必ず効いてくるときが来る。また、最後はそれが「世界を救う」原動力となる。ディレイソンさんの言葉が、何よりの証左だった。
アイティメディア グローバルビジネス担当シニアヴァイスプレジデント兼エグゼクティブプロデューサー、ライター、レポーター
コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時より通訳、翻訳なども行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在は英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行うほか、作家として執筆、翻訳も行っている。
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