NTTデータ経営研究所がDXの実態調査 DXに成功した企業に共通する5つの変革とは戦略と組織でDXに適した体制構築が重要

NTTデータ経営研究所は、国内企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)に対する取り組みの実態について調査し、その結果速報を発表した。DXで成果を上げるには戦略と組織の両面でDXに適した体制を築くことが重要だとしている。

» 2019年08月22日 08時00分 公開
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 NTTデータ経営研究所は2019年8月20日、売上高が100億円以上の国内大企業と中堅企業1万4509社を対象にした「企業のデジタル化への取り組みに関するアンケート調査」の結果速報を発表した。

DXの取り組みは必ずしもうまくいっているとはいえない

 まず、デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組み状況について見ると、「具体的に取り組んでいる」と回答した企業の割合は全体の42.7%、「具体的に取り組んでいないが興味がある」と回答した割合は同42.2%だった。DXへの取り組み比率は企業規模が大きいほど高くなる傾向にある。売上高が1000億円以上の企業では77.9%がDXに取り組んでいたのに対して、売上高が500億円未満の企業でDXに取り組んでいる割合は34.0%にすぎなかった。

 DXに取り組んでいる企業に対して「DXへの取り組みはこれまでのところうまくいっていると思うか」と聞くと、「強くそう思う」または「おおむねそう思う」と回答した割合は42.0%、「そう思わない」または「あまりそう思わない」と回答した割合は47.6%だった。NTTデータ経営研究所では、日本企業がDXに取り組むことは一般的になりつつあるものの、DXに取り組んでいる企業は必ずしもうまくいっているわけではないと分析している。

画像 DXに対するこれまでの感触(出展:NTTデータ経営研究所

成果を実感しているのはごく一部

 次に、DXへの取り組みの推進段階を尋ねた。NTTデータ経営研究所では推進段階を、「助走フェーズ」「構想策定フェーズ」「プランニングフェーズ」から成る「実践着手前段階」と、「トライアルフェーズ」「設計・構築フェーズ」「本格活用・展開フェーズ」から成る「実践段階」に分けている。

 結果は、「助走フェーズ」が29.4%、「構想策定フェーズ」が16.4%、「プランニングフェーズ」が11.9%で、実践着手前段階が過半数を占めた。これに対して実践段階に当たる、「トライアルフェーズ」は15.3%、「設計・構築フェーズ」は11.0%で、最終段階の「本格活用・展開フェーズ」まで到達しているのは16.0%だった。

画像 「本格活用・展開フェーズ」に到達した取り組みにおける成果の状況(出展:NTTデータ経営研究所

 「本格活用・展開フェーズ」にある企業に成果の状況を聞くと、「事前に定めた評価指標に基づいて測定した結果、成果が出ている実感がある」と回答した割合は29.8%。これは、DXに取り組んでいる企業全体から見ると4.8%にすぎない。NTTデータ経営研究所ではこの結果を受けて、「DXに取り組む日本企業のうち厳密な意味で客観的に成果を出しているといえるのはごくわずか。実践着手前段階にあるDXの取り組みが実践段階に移行する中で、DXで成果を出すために今後多くの企業が新たなチャレンジに直面する」と推察している。

「守りのDX」が好きな日本企業

 一方、DXの取り組みテーマを「攻めのDX」と「守りのDX」に分けると、日本企業は守りのDXに取り組んでいることが分かった。

 NTTデータ経営研究所は、「攻めのDX」と「守りのDX」に、それぞれ3つのテーマを分類した。

 具体的には、「攻めのDX」は以下3点。

  • 既存の商品やサービスの高度化や提供価値向上
  • 顧客接点の抜本的改革
  • ビジネスモデルの抜本的改革

 「守りのDX」は以下3点。

  • 業務処理の効率化や省力化
  • 業務プロセスの抜本的改革や再設計
  • 経営データの可視化によるスピード経営や的確な意思決定
画像 DXの取り組みテーマの分類(出展:NTTデータ経営研究所

 各企業が取り組んでいるDXのテーマを調べると、最も多かったのが「業務処理の効率化や省力化」で、84.0%の企業が回答した(複数回答)。次いで、「業務プロセスの抜本的改革や再設計」が61.1%、「経営データの可視化によるスピード経営や的確な意思決定」が36.1%で、いずれも「守りのDX」だった。「攻めのDX」に分類されているテーマで最も回答割合が高かったのは「既存の商品やサービスの高度化や提供価値向上」で、34.4%だった。

 これらのテーマごとに成果が出ているかどうかを調べたところ、成果が出ている割合が高かったのも「守りのDX」だった。成果が出ていると回答した割合が最も高かったのは「業務処理の効率化や省力化」で、40.5%の企業が挙げた。次いで「業務プロセスの抜本的改革や再設計」の22.7%、「顧客接点の抜本的改革」の19.8%が続いた。

画像 各テーマ別の成果の状況(出展:NTTデータ経営研究所

 NTTデータ経営研究所はこの結果について、現在の日本企業のDXは、成果の実感を得やすい「守りのDX」が先行しており、DXの本丸である「攻めのDX」への取り組みは難易度の高いことが示唆されたとしている。ただし同社は、「攻めのDX」で成果を出せる土台を持つ企業が増えてくれば、今後取り組みが本格化していくと見ている。

今後、取り組むべき変革の方向性とは

 最後に、DXに成功した企業とそれ以外の企業のスコアを比較して、まだDXに成功していない企業が今後強化していくべき変革の方向性を分析した。NTTデータ経営研究所は、今後強化していくべき上位5項目として以下の項目を挙げた。

  1. 「戦略」DXで何を達成するかが明確になっている
  2. 「戦略」状況に応じてDXの戦略や計画を適宜修正するなど柔軟に運用している
  3. 「組織」組織間で連携し、全体最適の取り組みを進めやすい組織構造になっている
  4. 「組織」DXの推進組織またはチームは関係部門を巻き込んで組織の役割を果たしている
  5. 「ガバナンス」各DX施策を個別施策単位ではなく、施策群として依存関係と進捗(しんちょく)を管理し、整合性をとっている

 NTTデータ経営研究所は、DXで成果を上げるには「戦略」と「組織」の両面でDXに適した体制を築くことが重要だとしている。さらに、これから成果創出に向けて取り組みを加速させるDX推進企業は「戦略」「組織」「ガバナンス」に強化の余地があり、これらの項目について客観的に評価、点検することが必要だとしている。

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