VMwareは2019年8月に開催した年次イベント「VMworld 2019」で、「ナンバーワンのエンタープライズKubernetesベンダーになる」と宣言した。同社にとって、Kubernetesは中核事業の一つになるという。VMwareのKubernetes戦略を探る。
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VMwareは2019年8月に開催した年次イベント「VMworld 2019」で、「ナンバーワンのエンタープライズKubernetesベンダーになる」と宣言した。同社にとって、Kubernetesは中核事業の一つになるという。VMwareのKubernetes戦略を探る。
VMware CEOのパット・ゲルシンガー氏は、「Kubernetesは当社にとって、クラウドや20年前の仮想化、あるいはおそらくJavaと同じくらい、重要な意味を持つ」と話した。また、プロダクト/サービス担当COO(最高執行責任者)のラグー・ラグラム氏は、「VMware vSphereやVMware NSXと同様、Kubernetesは今後当社にとって中核的な存在になる」と表現した。
では、Kubernetesをどのようにして自社の中核事業の1つに育てようとしているのか。
別記事で紹介した通り、VMwareは「VMware Tanzu」という名称で、同社のKubernetes戦略を説明している。その基本的なテーマは、Kubernetesを通じてIT運用担当者と開発者との間の橋渡しをすることにある。Pivotalなどの提供するKubernetesをベースとした開発支援の製品/サービスを通じて、開発者と直接つながり、そのニーズに応えることも、橋渡しに貢献する。
Tanzuでは、「Build(モダンアプリケーションの構築)」「Run(稼働)」「Manage(管理)」という3つの分野で、製品やサービスを展開する。
「これらを全て合わせると、顧客の組織における開発者の世界と運用担当者の世界の橋渡しをするための、包括的な環境が構築できる。Kubernetesはそのために活用できる、画期的な技術だと確信している」(ゲルシンガー氏)
「私は顧客に会う機会が多いが、興味深いことに、多くの人がシャドーITについて話す。社内のアプリケーション開発チームが、IT部門を通すことなく、クレジットカードでパブリッククラウドを活用してしまう現象だ。こうした状況の顧客と、ぜひ(VMwareのKubernetesソリューションについて)話したい」(VMwareのオープンソースオフィサー、ダーク・ホーンデル氏)
開発チームは、自分たちが高い生産性を発揮できるような環境が欲しいだけだが、IT部門はそれを支援してくれない。一方IT部門は、コンテナアプリケーション基盤や、ソフトウェア開発者のニーズについての知見やノウハウがなく、支援しようにもできない。
こうした状況を打開できるツールとして、VMwareはKubernetes製品/サービスを展開しようとしている。
このための最も重要な要素といえるのが、VMwareのフラッグシップ製品であるVMware vSphereを「再設計(リアーキテクト)」する「Project Pacific」だ。同社にとって「10年に1度」とも言える大掛かりなプロジェクトで、3年ほど前から開発を進めてきたという。
Project Pacific では、2020年にも提供を考えているとされるvSphereの将来バージョンに、Kubernetesを埋め込む。VMwareが「埋め込む」という表現をする理由は次の通りだ。
Project Pacificでは、管理用にKubernetesのマスターノード/APIサーバを備え、ハイパーバイザーのESXiには、ノードでPodを起動・管理するkubeletをインストールしている。これにより、Kubernetes APIを通じてvSphereを含めた管理ができる。
こうした仕組みに基づき、開発者はセルフサービス的にnamespaceを使ってコンテナ環境を利用できる。一方、IT部門の運用担当者は、vSphereの管理ツールを用い、(仮想化環境と統合的に)Kubernetesのリソースや稼働状態、ガバナンスなどに関する管理を行えばいい。新しい運用ツールを学習する必要はない。これをVMwareでは、「vSphereのユーザーが、指を1本動かすだけで、すぐにKubernetesを使えるようにする」とも形容している。
VMwareのクラウドプラットフォーム事業部門CTO、キット・コルバート氏は。開発者にとっての使い勝手という観点から、次のように説明する。
「現在、vSphereにアクセスするために人々が使うのは、仮想マシンのインタフェースだ。今後はvSphere上の全ワークロード管理に、Kubernetesをインタフェースとして用いられるようにしたいと考えている。なぜそんなことをする必要があるのか。目覚ましいイノベーションが起こっているKubernetesのエコシステムを、フル活用するためだ。仮想マシンかコンテナかにかかわらず、vSphere上のあらゆるアプリケーションを並べて動かし、YAMLによる宣言的なモデルで一貫した管理ができる。Pacificでもサーバ仮想化を使うことには変わりがないが、現在とはデベロッパーエクスペリエンスが異なる。また、Project Pacificでは開発者によるセルフサービスを実現する。運用担当者が各開発チームにnamespaceを提供すれば、これを使って開発者側は自由にワークロードをプロビジョニングできる」
「また、Kubernetesが組み込まれているため、コンテナで何が起こっているか、細かな文脈をvSphere側で把握できる。今のところ、vSphere上で仮想マシンが動いていることは分かっても、その中に何があるか、例えばPodやNodeの数を知ることはできない。一方、Pacificでは、こうした情報を全て把握できる。それはKubernetesのクラスタ、namespace、Podなどが、(仮想マシンと同様に)一級市民として扱われるからだ」
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