平たく言えば、Project Pacificで、vSphereの膨大なインストールベースが、VMwareによるKubernetesソリューションの潜在的な顧客になる。vSphereを使うだけで、これをKubernetes基盤としても活用するための下準備はできているので、コミュニティー版など、好みのKubernetesディストリビューションをアプリケーションプラットフォームとして導入して使えばいい。
「(vSphereには、)数十万の組織が顧客となっており、世界全体のワークロードの約半数に当たる7000万のワークロードが稼働している。私たちはこれをそのまま、Kubernetesフレンドリーなものにする。他の誰もできないことだ。非常に大きな差別化の源泉になると考えている」(ゲルシンガー氏)
ゲルシンガー氏は他に、2つの差別化要素を挙げる。
vSphereは、Amazon Web Services、Microsoft Azure、Google Cloud Platform、IBM、Alibabaといった主要クラウド事業者全てにおいて、サービスとして提供されている。「当社は中立的なクラウドパートナーとしての信頼を勝ち取っている」(ゲルシンガー氏)。上記のようなクラウド事業者におけるvSphereが、Project Pacific対応バージョンになれば、顧客にとってコンテナアプリケーションの開発・運用において、さらに多くの選択肢が生まれることになる。そしてこれらをTanzuの管理ツール「VMware Tanzu Mission Control」で、オンプレミス環境と共に統合管理できるようになる。Project PacificとVMware Tanzu Mission Control、そしてVMwareのKubernetesソリューション全体が、同社の続けてきたハイブリッド/マルチクラウド戦略の恩恵を受け、一方でこれを促進する役割を果たす。
Heptioの買収により、Kubernetesの創始者3人のうちの2人が、VMwareに加わった。「彼らは大きな信頼を獲得しており、コミュニティーおよびオープンソース業界のコンセンサスと、エンタープライズレベルの品質やスケールとのバランスをとることに長けている」(ゲルシンガー氏)。このコメントは、ジョー・ベダ氏とクレイグ・マクラッキー氏が、オープンソースプロジェクトを発展させる活動と私企業としてビジネスを推進する活動の間で利益相反が起こりがちな部分を、回避できる能力を備えていると評価したものと解釈できる。
前出のVMwareオープンソースオフィサー、ダーク・ホーンデル氏は、エンタープライズIT製品の調達における開発者の発言力が、年々増していると指摘する。さらに開発者のせ間では、オープンソース製品の利用を考えることが当たり前になっていると話す。このため、エンタープライズITベンダーは、当然のごとくオープンソースへの取り組みを拡大していく必要があるという。
ホーンデル氏は、「VMwareがオープンソースカンパニーになることを目指している」と話した。ただし、HeptioやPivotalを買収したからといってこの動きが飛躍的に進展するわけではない。経営陣の理解をはじめとして、今後も継続的に取り組んでいく必要があるとしている。
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