ITサービスの停止やパフォーマンスの低下は、ビジネス上の損失に直結する。では、サービスの吐き出す膨大なログデータを、サービス品質の向上や維持にどうつなげればいいのか。ここで検討すべきなのがAIOps(Artificial intelligence for IT Operations)だ。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
2018年にオーストラリアで最大級の2つのスーパーマーケットチェーンが全国で技術的問題に見舞われ、問題が解決されるまで営業を休止せざるを得なくなった。そのために両社は売り上げを失い、顧客は不満を募らせた。
現在、ITチームはデータ量の増大に対処し、データをモニタリングするために多様なツールを使っている。そのために、問題の発見と解決がかえって大幅に遅れることがある。
「IT運用担当部署は、収集、分析とそれに基づく対応が必要な、ITインフラとアプリケーションが生成するデータ量の急速な増大という問題に直面している」と、Gartnerのシニアディレクターでアナリストのパドレイグ・バーン氏は指摘する。
「しかも、IT運用チームは、相互連携が取れていないサイロ型の体制で業務を行っている場合が多い。このことも相まって、最も緊急のインシデントにチームとして随時対応するのが困難になっている」(バーン氏)
企業は、深刻度が高いサービス停止のようなIT運用の問題を迅速に予防、発見、解決するために、AIOps(Artificial intelligence for IT Operations)に目を向けている。
簡単に言えば、AIOpsは、機械学習(ML)とデータサイエンスをITオペレーションの問題に応用したものだ。AIOpsプラットフォームは、ビッグデータとML機能を組み合わせることで、ITオペレーションの全ての主要機能を向上させ、部分的に代替する。これらの機能には、可用性とパフォーマンスのモニタリング、イベントの相関付けと分析、ITサービスの管理と自動化などが含まれる。
ITによって生成されるデータは、量や種類、生成速度ともに増え続けている。AIOpsプラットフォームはこれらのデータを取り込んで分析し、その結果を有用な形で提供する。
Gartnerは、アプリケーションやインフラをモニタリングするためにAIOpsやデジタルエクスペリエンスモニタリングツールを使用する大企業の割合が、2018年の5%から2023年には30%に上昇すると予想している。
バーン氏によると、AIOpsは長期的に、IT運用を変えるような影響を与える見通しだ。
「ITリーダーは、IT運用へのAIの活用による可能性に大きな期待を寄せている。だが、ラージ・オブジェクトを動かすのと同様に、慣性を克服して速度を上げる必要がある」と、バーン氏は指摘する。
「幸いなことに、AIの機能は進化しており、実用的なソリューションが毎日のように登場している」(バーン氏)
近いうちにAIOpsプロジェクトを行う予定がなくても、AIとMLの語彙(ごい)と機能に今から精通しておく。優先順位や技術的に可能なことは変わるので、予想より早くAIOpsが必要になるかもしれない。
変革の取り組みは、小さくスタートして知識を獲得したり、そこからプロセスを繰り返しながら進めたりすることで恩恵を受けられる。同じアプローチでAIOps導入の成功を目指す。
シンプルな技術を例示し、同僚や経営陣にAIOpsを分かりやすく説明する。スキルと経験のギャップを特定し、それらのギャップを埋める計画を策定する。
AIOpsプラットフォームは、コストが高い非常に複雑な製品である場合が多い。だが、AIOpsやデータサイエンスのアプリケーションとユースケースの評価に利用できる低コストのオープンソースMLソフトウェアがたくさんある。
データやアナリティクス分野の人材は、社内に既に存在する可能性があり、そうした人材も活用すべきだ。AIOpsの大きな部分を占めるデータ管理については、多くの場合、さまざまなチームが必要なスキルを既に備えている。今日のあらゆる企業で重要な役割を担うビジネスアナリティクスと統計分析でも、AIOpsの問題領域をカバーする多くの技法が使用されている。
一貫した自動化アーキテクチャやコードとしてのインフラ(IaC)、イミュータブルインフラパターンの導入により、AIOpsの最終的な実装をサポートできるようインフラを準備する。
多くの変数がある。利用可能な製品が進化するだろうし、AIOpsでできることや、ITリーダーが責任を持つインフラとアプリケーションも進化するだろう。自社開発か購入か、あるいはこれらをどう組み合わせるかも検討する必要がある。
出典:How to Get Started With AIOps(Smarter with Gartner)
Director, Public Relations
ITがビジネスを加速させる昨今、多くの新規サービスが開発、リリースされ、運用管理者には安定したサービスの供給や、利用動向のログを解析することが求められている。だが、これに伴い解析すべきログや拾うべきアラートも増す一方となり、多大な負担が運用管理者の身に振り掛かっている。こうした中、AIを利用したIT運用「AIOps」が注目されている。では企業がAIOpsを取り入れる上で必要なこととは何か。運用管理者は、AIとどう向き合うべきなのか。本特集では、そのヒントをお届けする。
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