Windows 10には、サポートする機能の違いにより、複数のエディションが用意されている。一般に量販店やメーカーの直販サイトで購入できるPCは、Windows 10 HomeまたはProを選択することになる。両者はどのような点が異なっているのだろうか。本稿では、Windows 10 HomeとProの機能の違いを整理する。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
ご存じの通り、Windows OSには実装されている機能によって幾つかのエディションが用意されている。
例えば、Windows 7では「Starter」「Home Basic」「Home Premium」「Professional」「Enterprise」「Ultimate」の6種類のエディションが提供されていた(「Home Basic」という日本などでは提供されていないエディションもある)。Windows 8.1ではエディションが整理され、Windows 8.1(無印)、「Pro」「Enterprise」と3種類となった(この他にARMプロサッサ向けに「RT」も提供されている)。
Windows 10では、「Home」「Pro」「Enterprise」「Education」「Pro Education」「Pro for Workstations」「S」と再びエディションが増えている(この他、ARMプロセッサ向けの「Windows 10 on ARM」やIoT向けの「Windows 10 IoT Enterprise」「IoT Core」などもある)。
このうちEducationとPro Educationは主に教育機関向けに提供されるエディションだ。Pro EducationはEducationに対して学校で必要とされる管理機能を追加したものだ。Sは利用可能なアプリケーションがMicrosoft Storeからダウンロード可能なMicrosoft Storeアプリ(UWPアプリ)に限定されるなど、機能を限定したエディションとなっている。いずれも機能的にはProエディションがベースとなっている。
Pro for Workstationsも、Proエディションをベースにしたものだが、ワークステーション向けに最大4ソケットプロセッサや最大メインメモリ6TBのサポートなど、規模や機能を拡張したものとなっている。
こうした少々特殊なエディションを除く、Home、Pro、Enterpriseが一般に企業で利用されているものとなる。Enterpriseは企業向けのエディションで、一般的にはPCへのプリインストールで提供されることはなく、Windows OSあるいはそれを含むサービスとしてライセンス契約を結ぶことで利用可能になる。これも機能的にはProをベースとしている。
通常、量販店やメーカーの直販サイトでPCを購入する場合、プリインストールOSとしてHomeまたはProのいずれかのエディションから選択することになる(量販店で販売されているPCはHomeを採用するものがほとんどだが)。
では、HomeとProの違いはどのような点にあるのだろうか。機能の主な違いをまとめてみた。
主な機能をまとめたものが下表である。
Home | Pro | ||
---|---|---|---|
Windowsの基本機能 | |||
Windowsセキュリティ(Windows Defender) | ○ | ○ | |
Microsoft Edge | ○ | ○ | |
Cortana | ○ | ○ | |
OneNote | ○ | ○ | |
Windows Ink | ○ | ○ | |
Windows Hello | ○ | ○ | |
仮想デスクトップ | ○ | ○ | |
PCからタブレットモードへの切り替え | ○ | ○ | |
BitLockerデバイスの暗号化 | − | ○ | |
Windows情報保護(WIP) | ○ | ○ | |
管理機能 | |||
モバイルデバイスの管理 | − | ○ | |
グループポリシー | − | ○ | |
Enterprise State RoamingとAzure Active Directory | − | ○ | |
ビジネス向けMicrosoft Store | − | ○ | |
割り当てられたアクセス | − | ○ | |
動的プロビジョニング | − | ○ | |
ビジネス向けWindows Update | − | ○ | |
キオスクモードの設定 | − | ○ | |
ドメイン参加 | − | ○ | |
Azure Active Directoryドメイン参加とクラウドにホストされたアプリへのシングルサインオン | − | ○ | |
Internet Explorerのエンタープライズモード(EMIE) | − | ○ | |
リモートデスクトップ(サーバ) | − | ○ | |
クライアントHyper-V | − | ○ | |
Windows 10 HomeとProの主な機能 |
この表を見れば分かるように大きな違いは、Active Directoryやグループポリシーなどによる管理機能に対応しているかどうかだ。会社でクライアントを集中管理しており、これらの機能が必須である場合は選択の余地はなく、Windows 10 Pro以上を選ぶべきだ。
一方で、Active Directoryなどを利用していないのであれば、会社で利用するPCであってもWindows 10 Homeでも構わない。
Windows 10 ProとHomeで基本的な機能に大きな違いはなく、アプリケーションを実行するという点で、違いを感じることはほとんどない。実際、筆者も会議や移動先で利用するノートPCに関しては、Windows 10 Homeを利用しているが、機能面で不便に感じたことはない。
Windows 10 Homeは、リモートデスクトップ(サーバ)やHyper-V、BitLockerといった機能にも対応していないが、これらはサードパーティー製ソフトウェアで代替可能だ。
リモートデスクトップは、Chromeリモートデスクトップなどのリモートデスクトップソフトウェアが使える(Chromeリモートデスクトップの使い方については、Google Chrome完全ガイド「外出先からPCをWebブラウザで遠隔操作、『Chromeリモートデスクトップ』入門」参照のこと)。
Hyper-VもVMware WorkstationやOracle VirtualBoxといった仮想化ソフトウェア製品を使うことで、仮想化環境の構築が行える。同様にBitLockerの代わりとなる暗号化ソフトウェアも多く存在する。
ただ、有償の仮想化ソフトウェア製品(VMware Workstationなど)や暗号化ソフトウェアを購入するのであれば、Windows 10 Proの方が安く済むので、どのような使い方をするのか検討してから選択した方がよい。
Windows 10 HomeとProでは前述のような機能差がある。価格差が小さいのであれば、Windows 10 ProはHomeの機能を包含しているので、Proを選べばよい。
そこでMicrosoftの直販サイト「Microsoft Store」におけるWindows 10のライセンス価格を比較してみよう(以下、いずれも執筆時点の価格)。Homeの税込み価格は1万9008円なのに対し、Proは2万7864円と、8000円弱の違いがある。メーカーの直販サイトで比較すると、LenovoのThinkPad X1 CarbonのWindows 10 ProとHomeの価格差は8800円、DellのXPS 15 2-in-1で8500円であった。Windows 10 ProとHomeで8000円から9000円ほどの価格差があると思えばいいだろう。
最近では、10万円前後でも比較的性能が高いPCが購入可能なことから、8000円程度の差となると、10%近い金額となる。
この価格差に見合った機能差かどうかは、使い方次第である。上述の通り、Active Directoryによる集中管理などを行っていないような場合でも、仮想化ソフトウェアや暗号化ソフトウェアが必要ならば、Proを利用するメリットは大きい。こうした機能が不要もしくはフリーソフトウェアで構わないのであれば、Windows 10 Homeでも十分といえる。
会社で利用するPCだから、Windows 10 ProもしくはEnterpriseと考えず、用途や必要な機能などを考慮して、Windows 10 Homeで問題があるかどうかをまずは検討してみるとよいだろう。
Copyright© Digital Advantage Corp. All Rights Reserved.