Amazonは、7500近くのOracle Databaseに保存していた75PBのデータを、さまざまなAWSデータベースサービスに移行した。レガシーなデータベースの運用管理から技術者を解放し、より優れた顧客エクスペリエンスの提供へと向かうためだ。コスト削減と性能向上にも成功した。
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Amazon Web Services(AWS)は2019年10月15日(米国時間)、7500近くのOracle Databaseに保存していた75PB(ペタバイト)に及ぶAmazonの各種データを、さまざまなAWSデータベースサービスに移行する作業が完了したと発表した。
これに伴い、Amazonの消費者向け事業部門は、購入管理やカタログ管理、注文処理、会計、ビデオストリーミングなどのデータベースをAWSにほぼ全て移行した。
ただし、一部のサードパーティーアプリケーションはOracle Databaseと密接に結び付いているため、AWSには移行しなかったという。
移行先のAWSのサービスは「Amazon DynamoDB」「Amazon Aurora」「Amazon Relational Database Service(RDS)」「Amazon Redshift」など、多岐にわたる。
移行作業には大きな問題がなかったという。移行したサービスの種類によって異なるものの、ほとんどのサービスで、ダウンタイムは全く発生しなかった。
AWSは移行の背景について次のように説明している。
「トランザクションとデータ保存量が増大を続ける中、データベース管理者は、付加価値の高い業務を推進するのではなく、レガシーなOracle Databaseの運用管理に追われていた。例えば複雑で効率の低いハードウェアプロビジョニングを含むスケーリングや、ライセンス管理などだ。これらの管理には、モダンなマネージドデータベースサービスを使って処理することで最適解が得られる業務が、数多く含まれていた」
今回のAWSへの移行では、Amazonの消費者向け事業部門から100以上のチームが参加した。その中には、知名度の高いAmazonのさまざまな顧客向けブランドやサイトが含まれる。例えば、「Alexa」「Amazon Prime」「Amazon Prime Video」「Amazon Fresh」「Kindle」「Amazon Music」「Audible」「Shopbop」「Twitch」「Zappos」などだ。
Amazonのさまざまな社内チームも移行に携わった。例えば、広告や注文処理技術、消費者決済、顧客返品、カタログシステム、エクスペリエンス提供、デジタルデバイス、外部決済、財務、情報セキュリティ、マーケットプレース、注文、小売りシステムなどだ。
移行前と移行後のコストとパフォーマンスを比較したところ、次のような成果が得られたという。
移行により、社内の各チームは、ニーズに最も合ったAWSの専用データベースサービスを自由に選択できるようになり、予算とコストモデルをより適切に管理できるようになった。
例えば、低レイテンシが要求されるサービスを、DynamoDBや他の高スケーラブルな非リレーショナルデータベース(Amazon ElastiCacheなど)に移行した。例えばWalletチームは100億以上のレコードをDynamoDBに移行したことで、レイテンシを50%削減、運用コストを90%削減できた。
高いデータ整合性が要求されるトランザクションリレーショナルワークロードはAuroraやRDSに移行した。例えば決済系のチームは40TBのデータをAuroraに移行し、コストを50%削減しながら性能を高めた。広告チームはピーク時のトラフィック処理に対応するため、RDSに移行し、数分でデータベースの処理能力を2倍にまで高められるようになった。
この他、分析ワークロードをクラウドデータウェアハウスであるRedshiftに移行した。
この結果、データベース管理者はより優れた顧客エクスペリエンスの提供に向けて、パフォーマンス監視やクエリの最適化などをより効果的に行えるようになった。さらに十分な時間をかけて取り組みを進めることが可能になった。
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