高価なPBXを止めた後――「FMC」か、それとも「スマートコミュニケーション」か羽ばたけ!ネットワークエンジニア(21)(1/2 ページ)

先日、ある企業でネットワーク設備の打ち合せをしていてなつかしい言葉を久しぶりに聞いた。「FMC」である。聞けばPBXの更改を検討しているのだが、PBXがあまりに高いのでFMCを使ってダウンサイジングをしたいのだという。果たしてこれは正しい選択なのだろうか?

» 2019年10月28日 05時00分 公開
[松田次博@IT]

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連載:羽ばたけ!ネットワークエンジニア

 FMC(Fixed Mobile Convergence)は固定電話と携帯電話の間で内線番号を使った通話を可能にするサービスだ。約10年前に携帯通信事業者が始めた。メリットは固定電話と携帯電話間で内線電話が使える利便性と、携帯端末の月額料金が定額であるため、固定/携帯間の通話が多い場合に、コスト削減効果が得られることだ。

 だが、これからは携帯電話会社視点の発想から脱して、企業の視点でより利便性が高く、低コストのコミュニケーションを目指すべきだ。

第1世代のFMC

 FMCには第1世代と第2世代がある。図1に第1世代のFMCを示す。企業の電話機は固定電話の数が多く、携帯電話機(フィーチャーフォン)は少ない。大型PBX(Private Branch eXchanger:構内交換機)とFMCの間を専用回線で接続し、携帯電話には090/080番号の他に内線番号を付与する。

図1 第1世代のFMC(2009年ごろ) 大型PBXと少数の携帯電話機で構成する

 外出中の営業マンは携帯電話で内線識別番号(内線通話であることを示す番号で“8”などの1桁の数字)と相手の内線番号(固定電話あるいは携帯電話)をダイヤルして内線通話ができる。逆に固定電話から携帯電話に対しても内線通話が可能だ。

 FMCの料金は携帯端末1台当たり月額1000円程度の定額であるため、営業マンのように社内の固定電話との通話が多い場合は経済効果が得られる。内線電話の利便性(少ない桁数でダイヤルできる)もある。

第2世代のFMCとPBXダウンサイジング

 第2世代のFMCは企業へのスマートフォンの導入とともに広まった。固定電話機を大幅に減らしスマートフォンを主体に使う。収容する電話機数が少なくなるとPBXを小型化でき、コストも安くなる。例えば300台、1000台といった台数を収容できる中容量、大容量のPBXと、いわゆるボタン電話と呼ばれる100台未満の収容能力を備えたPBXとでは数倍のコスト差がある。

 図2のようにFMC側に収容するスマートフォンを多く、PBXに収容する固定電話をごく少なくすればPBXのコストは数分の1になる。これがFMCによるPBXダウンサイジングの狙いだ。PBXにつながっている固定電話機はPBX本体を更改しても継続して利用でき、月額料金もかからない。だが、数を増やしたスマートフォンには月額料金がかかる。しかもFMC料金だけでなく通常のスマートフォンとしての基本料金なども必要だ。

図2 第2世代のFMC(2010年代前半〜) 小型PBXとFMC、スマートフォンで構成する(PBXのダウンサイジング)

 このため、大型PBXから大型PBXへ更改する場合と、大型PBXから「FMC+スマートフォン+小型PBX」に変える場合を比較すると、更改した時点では大型PBXの方が高くなるが、累積コストをみると2〜3年以内にFMCの方が高くなる可能性が高い。

 PBXが高いからといってFMCでダウンサイジングしたとしても次の更改までに経済効果を得ることは難しいのだ。

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