Gartnerは、2020年以降のデジタルインフラサポートに大きな影響を与えるトレンドのトップ10を発表した。これまでの自動化戦略を考え直す必要が生じる、さらに従来のディザスタリカバリー対策が無効になるといった新たな課題が生まれるという。
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Gartnerは2019年12月10日(米国時間)、ITインフラ&オペレーション(I&O)のリーダーが備えるべき10のトレンドを発表した。同社はこれらのトレンドが2020年以降、デジタルインフラのサポートに大きな影響を与えるだろうと予想している。
Gartnerのシニアリサーチディレクターを務めるロス・ウィンザー氏は、次のように説明した。
「2019年のインフラトレンドは、人工知能(AI)やエッジコンピューティングのような技術が、急成長するインフラと、ビジネスニーズの両方をどのようにサポートするかが焦点となっていた。これらの技術には引き続き需要があるが、われわれの2020年のトレンドリストは、このような技術が生み出す連鎖的影響を反映している。これらのトレンドの多くは、すぐには見えてこない」
ほとんどの企業が何らかのレベルで自動化を進め、高付加価値業務への人員の再配置を進めている。だが、全社的な自動化戦略を欠いた状態での投資も少なくない。
こうした行動は、ツールやプロセスが重複してしまったり、ビジネス部門の期待に沿ったインフラの柔軟なスケーリングができなかったりする状態へとつながる。業績が良好な先進企業は2025年までに、こうした問題を回避するために、自動化の管理や適切な自動化戦略の構築への投資を専任で統括する役職を置くようになるとGartnerは予想している。
現在のインフラはさまざまな場所に分散している。例えばコロケーション施設やオンプレミスデータセンター、エッジロケーション、クラウドサービスなどだ。こうしたハイブリッドITは、これまでのディザスタリカバリー(DR)対策を阻害してしまっている。そうでない企業でも阻害する見通しだ。
多くの企業はSaaSに強く依存している。だが、適切なレベルの耐障害性を保証するオプション機能を見落としがちだ。例えば、2021年までにクラウドベースで生じる可用性の問題の90%は、クラウドサービスプロバイダーが提供するネイティブな冗長性機能をうまく使いこなせなかったことに起因するようになるだろう。
「企業は、新しいハイブリッドインフラを考慮して、従来のシステム用のDR対策を見直す必要がある。導入後しばらくしてから検討するのではなく、システムの設計段階からクラウドサービスのネイティブ冗長化機能を活用したり、回復力要件を考慮したりすることが賢明だ」(ウィンザー氏)
ウィンザー氏によると、共有型セルフサービスプラットフォームを採用していない企業の大部分にとって、DevOpsの取り組みをスケールアップするのは容易なことではない。それぞれの製品チームでは、DevOpsを実践できていることも少なくないが、組織がDevOpsチームをスケールアップしようとすると、制約が生まれ始める。
「共有プラットフォームのアプローチを採れば、製品チームはI&Oのデジタルツールを活用するとともに、スケーリングに必要となる高度なガバナンスや効率性の恩恵を受けることができる」(ウィンザー氏)
AIや機械学習のような技術が競争上の差別化要素として利用されるようになるとともに、企業がインフラを必要とするあらゆる場所に、インフラを展開するようになっている。これに伴って爆発的に増加するデータをどう管理するか、事前の計画が極めて重要になる。
実際、Gartnerの調査によると、2022年までに企業のITインフラストラクチャの60%は、従来のデータセンターに置くことを止める。
「パフォーマンスとコンプライアンスの観点から、ワークロードをユーザーの近くに移動したいという要求は理解できる。だがわれわれは、同じワークロードが多くの場所で動作し、データの保護が困難になる状況へと急速に進んでいる。I&O担当者は、データの爆発的増加とデータ移動の複合的影響に、今から備えなければならない」(ウィンザー氏)
IoTプロジェクトを成功させるには、考慮すべき点が多い。完全に包括的なIoTソリューションを1社で提供できるベンダーはなさそうだ。
このため、IoTプロジェクトでは、初期の計画検討段階からI&O担当者が関与して、ベンダー各社のサービスとサポートの提案をよく理解しなければならない。サービスやサポートの穴が生じないようするためだ。そうした穴に気付かずにいると、重大な問題につながりかねない。
パブリッククラウドサービスが地理的に異なる場所に置いた複数のデータセンターに分散されて、サービスの運用やガバナンス、更新、進化の責任をパブリッククラウドプロバイダーが負うサービス方式を分散クラウドと呼ぶ。
分散クラウドの中にはオプションにより、パブリッククラウドサービスが運用される場所を選択できるものがある。I&Oチームはこのオプションを考慮できる。パブリッククラウドを利用したモダナイゼーションを目指す企業にとって魅力的だろう。
「だが、こうしたソリューションの多くは歴史が浅いため、考慮すべき点が多い。『AWS Outposts』『Microsoft Azure Stack』『Google Anthos』のような新サービスが注目を集めており、早い段階から精査すべきだ。サポートを担当することになるI&Oチームが、こうしたソリューションの提供モデルを十分に理解しなければならない」(ウィンザー氏)
I&O機能によって得られる体験に対する顧客の要求が高度化している。「シームレスな統合や迅速な対応、ダウンタイムがないといった従来の「付加価値」は、顧客からの要求のベースラインにすぎない」(ウィンザー氏)
ウィンザー氏は、デジタルビジネスシステムのI&Oインフラとの結び付きが強まる中、I&Oのごくささいな問題も、自社の評判に直ちに影響する恐れがあると警告する。「顧客満足度が高ければ、時がたつにつれてマインドシェアと市場シェアが拡大するだろう。だが、エクスペリエンスが悪いと影響はすぐに現れ、顧客満足度だけでなく企業の評判にも影響を及ぼす可能性がある」(同氏)
ビジュアルなローコード開発アプローチが、ビジネス部門の人気を呼んでいる。なぜなら、経験の有無にかかわらず、Webやモバイル向けのアプリケーションを作成できるからだ。正式なプロジェクト計画としてIT部門に頼るのではなく、ビジネスユニットが独自に「セルフサービス」モデルを推進できる。
「だが、ローコード開発が一般化すると、ITポートフォリオはより複雑になる。ローコードアプローチが成功すれば、I&Oチームは、いずれはビジネス部門からのサポートを提供するよう求められるだろう」(ウィンザー氏)
ネットワークチームは多くの場合、可用性の高いネットワークを十分に提供できており、注意深い変更管理がこれを支えている。だが、ネットワークの安定稼働を求めるプレッシャーが根強いことによって、予想外の問題へとつながっていく。
「安定性や信頼性を優先するあまり、リスク回避という文化的問題や、技術的な負債、ベンダーロックインという副作用が生じており、一部のネットワークチームは今後、苦労しそうだ。新しいネットワーク技術への投資は、問題解決策の一部でしかなく、2020年には文化的シフトが必要になる」(ウィンザー氏)
企業はHDIM(ハイブリッドデジタルインフラ管理)という考え方を自らのものにする必要がある。HDIMは、ハイブリッドインフラの管理課題への対処を目指すものだ。「これはまだ新しい分野なので、万能のツールを持っていると宣伝するベンダーには、注意が必要だ。だが、数年後には、ITリーダーにとって有用な技術が登場してくるだろう」(ウィンザー氏)
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