IDC Japanによると、国内セキュリティ市場は2023年まで堅調推移する見込み。2018〜2023年の年間平均成長率は、セキュリティソフトウェア市場が3.4%、セキュリティサービス市場が4.4%と予測する。
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IDC Japanは2019年12月26日、国内のソフトウェアとアプライアンス製品を含めた情報セキュリティ製品市場とセキュリティサービス市場について、2019年上半期までの実績に基づいた2023年までの予測を発表した。
2019年のセキュリティソフトウェア市場は、2018年よりも高い成長率を示す見込みだ。2019年の市場規模は、対前年比3.8%増の2638億円。ソフトウェア製品は、特にSaaS(Software as a Services)型セキュリティソフトウェアの伸びが著しく、IDCは対前年比14.5%増の325億円と予測する。
2018年に成長率が高かった企業向けエンドポイントセキュリティとメッセージングセキュリティは、その反動で成長率が鈍化するが、家庭向けPCの出荷台数が増えていることに加え、クラウド向けセキュリティ製品への需要が高い。
これに対してIDCは「セキュリティアプライアンス市場は、2018年に引き続きUTM(Unified Threat Management:統合脅威管理)製品が市場をけん引するものの、需要は低下する」と予測する。IT環境のクラウド移行が進んでおり、メッセージングセキュリティやWebセキュリティを中心にSaaS型への移行が進んでいるためだ。
一方、「セキュリティサービス市場は、IT環境の移行が進んでいるクラウドへのセキュリティシステムの構築や運用管理サービスの需要が拡大する」とIDCは予測する。2019年の市場規模は、対前年比4.9%増の8275億円の見込みだ。
2020年以降についてIDCは「東京オリンピック・パラリンピックによってサイバー攻撃の多発が見込まれ、サイバー攻撃に対する防御や検知、対処するセキュリティ製品の需要が拡大する」と予測する。
さらに、見直しが検討されている国内の個人情報保護法の他、EU(欧州連合)のGDPR(一般データ保護規則)や、米国政府調達での管理すべき重要情報(CUI:Controlled Unclassified Information)の保護に対する政府以外の企業や組織に適用されるセキュリティ対策基準「NIST SP800-171」と合わせて、暗号化やDLP(Data Loss Prevention)などの情報漏えい対策製品、アイデンティティー/デジタルトラスト製品、脆弱(ぜいじゃく)性管理製品といった内部脅威対策製品への需要が拡大する見込みだ。
これらの点を勘案してIDCは、「国内セキュリティソフトウェア市場の2018〜2023年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は3.4%、2023年の市場規模は2997億円に拡大する」と予測する。特にSaaS型セキュリティソフトウェア市場の成長率が高く、2018〜2023年のCAGRは13.0%、2023年の市場規模は521億円とみている。
一方の国内セキュリティサービス市場は、「重要社会インフラ事業者でのセキュリティサービスのニーズが高まるなど、2018〜2023年のCAGRは4.4%、2023年の市場規模は9794億円に拡大する」とIDCは予測する。
IDCは、サイバー攻撃の高度化が進み、検知されにくい攻撃手法が開発されていると指摘する。
「ゼロデイ攻撃や未知の脅威に対するセキュリティ対策については高度な分析が必要になっているが、セキュリティ専門技術者の人材不足で重大なインシデントを見逃す恐れが生じている」
IDC Japanでソフトウェア&セキュリティのリサーチマネジャーを務める登坂恒夫氏は、「製品サプライヤーやサービスベンダーは、セキュリティ運用の自動化を可能にするセキュリティオーケストレーション/オートメーション製品と連携したサイバーセキュリティソリューションを訴求すべきだ。これによって、高度化するサイバー攻撃で生じる重大なセキュリティインシデントの見逃しを防ぐとともに、セキュリティ専門技術者の負荷を軽減できる」と述べている。
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