中堅中小企業が注目すべき、IT活用のための「3つのポイント」とは ノークリサーチ「具体的な活用場面提示の手間を惜しまない」

ノークリサーチは、年商500億円未満の中堅中小企業に向けたIT活用の注目ポイントを発表した。2020年以降は実証実験的なIT導入で補助金を得ることは難しいとしており、具体的なIT活用場面を提示する手間を惜しまないことが成功の秘訣だという。

» 2020年01月08日 08時00分 公開
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 ノークリサーチは2020年1月7日、年商500億円未満の中堅中小企業に向けたIT活用の注目ポイントを発表した。複数の市場調査レポートを分析し、ソリューション視点からまとめた結果、「具体的なIT活用場面を提示する手間を惜しまないこと」が成功の秘訣(ひけつ)だとしている。

 ノークリサーチは、2019年に多く見られたIT企業の悩みや課題として以下の3点を挙げた。

1.「経営課題」や「デジタルトランスフォーメーション(DX)」といった抽象的な標語を用いた訴求と提案したいIT商材とのギャップ

2.「テレワーク」や「ワーケーション」など企業の構造改革や意識改革を必要とする啓蒙(けいもう)に伴う現場感覚との乖離(かいり)

3.新しい技術の話題性と補助金を活用した実証実験的な事例構築

訴求と提案したいIT商材とのギャップ

 まず、経営課題など抽象的な標語を用いた訴求と提案したいIT商材とのギャップについては、今後モノ志向からコト志向への変化が加速するとし、「コト志向」と「抽象化」の違いを意識した具体的なITの活用場面を提示すべきだという。これは「経営課題は企業の個別事情に起因する内容が多い」ためだ。経営課題を漠然と捉えてしまうと、IT企業が提案するIT商材と顧客企業の経営課題とが大きく乖離してしまう。

画像 「IoTなどを用いて、設備/機器の稼働状況を把握/共有する」というIT活用では製造業とサービス業で目指すものが異なる(出典:ノークリサーチ

 ノークリサーチでは、本来「コト志向」とは、具体的なITの活用場面を提示して顧客企業が潜在的に抱えるITの活用ニーズを顕在化させる取り組みだと説明する。「DX」も同様に抽象的なキーワードであり、具体的なIT活用場面への落とし込みが不可欠だ。同社は、こうした具体化の手間を惜しまないことが、IT活用提案の成否を左右すると主張する。

啓蒙に伴う現場感覚との乖離

 2つ目の企業の構造改革や意識改革を必要とする啓蒙に伴う現場感覚との乖離については、時間外労働規制が2020年4月に中小企業にも適用されることを挙げ、既存の人材を最大限に生かすための具体的な手段を提示することが必要だという。

 中堅中小企業を対象としたノークリサーチの調査によると、働き方改革や人材不足に対処するIT活用の基本方針や実施体制として、「業務改善の契機として、積極的に取り組む」と回答した割合は、「手間をかけず、最低限の法令順守に留める」と回答した割合を上回っていた。「経営層や管理職が主体となって取り組む」と回答した割合も2割を超えた。この結果から同社は、働き方改革や人材不足に向けたIT活用が中堅中小企業でも本格化すると予想する。

画像 「業務改善の契機として、積極的に取り組む」と回答した割合が「手間をかけず、最低限の法令順守に留める」と回答した割合を上回る(出典:ノークリサーチ

 ただし中堅中小企業は大企業と異なり、人員の配置転換に伴う教育や支援の負担が大きい。ノークリサーチでは、人員配置による対策を恒常的に続けるためには、企業全体の構造を再考する必要が生じることもあると指摘する。そのため、中堅中小企業を対象とする場合、IT活用を「構造改革」や「意識改革」と無理に絡めず、流行に便乗しない姿勢が大切だとしている。

新しい技術の話題性と補助金を活用した実証実験的な事例構築

 最後の新しい技術の話題性と補助金を活用した実証実験的な事例構築については、要件未達時に返還が求められる補助金制度が始まることから、今後は補助金で新技術の実証実験をするのではなく、実効性の高いIT導入を支援すべきだという。

 2020年以降の「中小企業生産性革命推進事業」では、「給与支給総額が年率平均1.5%以上向上、事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上」が申請要件とされている。さらに未達の場合には、一部の事情・理由を除いて補助金額の一部返還を求める旨が記載されている。そのためノークリサーチは、2020年以降は実証実験的なIT導入で補助金を得ることは難しいと指摘する。IT企業には、従来よりも実効性の高いIT導入を支援する役割が求められるという。

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