デジタルトランスフォーメーションの取り組みを活性化するため、「イノベーションラボ」を開設する企業が増えてきた。だが、こうした名前のラボを作ったからといって効果は保証されない。ビジネスに貢献するためにイノベーションラボで取り組むべきことを紹介する。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
Google X、Amazon Lab126、Microsoft Research、IBM Garage、Facebook Reality Labs。現在、ほぼ全ての大手IT企業が独自のイノベーションラボを擁している。そこではアイデアが開花し、新製品が生まれている。
イノベーションラボの創設は技術リーダーが成長を後押しし、新しいアイデアを推進する一般的な方策だ。物理的な場か仮想的な場かにかかわらず、これらの施設は、企業が業界の先端を走り続けられるよう支援する役割を担っている。イノベーションラボを運用している企業は、売上高の伸び率や顧客満足度が平均して高い。
「イノベーションラボは自由に時間を使って創造的な探求を行い、特定の成果を達成する仕組みを提供しなければならない。目指す成果は、新商品の創造から新市場への参入、文化や従業員エンゲージメントの改善まで何でも構わない」と、Gartnerのアナリストでシニアディレクターのエリック・ヴァン・オメレン(Erik Van Ommeren)氏は語る。
「イノベーションラボはしばしば失敗する。ビジネスに関連する明確な目標が欠けているからだ」(オメレン氏)
新しいイノベーションラボを創設する場合も、既存のものを強化する場合も、以下の4つの活動を進めることがデジタルトランスフォーメーションの支援につながる。
企業はトレンドをチェックすることで、業界で生まれる新しい機会や潜在的な脅威を常に把握できる。それを効果的に行えば、ハイプに振り回されずに済む。適切にトレンドをチェックするには、3ステップのアプローチが必要になる。情報源を見つけ、情報を手に入れ、自社の戦略の観点からふるいにかけるというものだ。
トレンドチェックの成果は社内の意思決定者向けに文書化するか、あるいはプレゼンテーションや説明をする必要がある。その際は、分かったことをビジネスの文脈に位置付け、潜在的な市場機会を経営幹部に明確に示さなければならない。
イノベーションは、アイデアが価値を生むときに起こる。イノベーションラボは企業がそれを実現する方法を探り、確立するのに最適な場だ。イノベーションラボは、自由にアイデアを出せる環境を提供するだけでなく、アイデアの実現を監督する責任を負う。これは、アイデアを実現するプロセスの各段階で成果物を評価することで可能になる。イノベーション投資を行うには、資金に見合うものが生まれつつある証拠が必要だ。
アイデアはイノベーションラボを離れると、より大きな組織が責任を負う。イノベーションは苗木に、組織は苗木が育つ庭に例えられる。組織はサポートや後押し、資金投入、さまざまなステークホルダーの連携によって、イノベーションの苗木の成長と開花を手助けできる。
ラボの役割は適切なストーリーを語り、イノベーションの苗木が最も歓迎される、または必要とされる可能性が高い土壌を見つけることだ。ステークホルダーと直接コンタクトを取るか、あるいはイノベーションコンテストへの参加、講演、ブログ投稿のような創造的なチャネルを利用するかにかかわらず、コミュニケーションはアイデアを現実のものにするのに不可欠だ。
外部組織(新興企業や大学、業界団体、政府機関など)も、イノベーションを加速させるのに大いに役立つ場合がある。こうしたサードパーティーから、アイデアや技術、IP(知的財産)、さらにはアイデアを実現する機能の提供を受けられる可能性がある。イノベーションラボは、こうしたパートナーと関わるのに最適な場だ。
サードパーティーと連携する際は顔を合わせて話す機会を見つけ、人的なつながりができるようにする。自社がどのような将来ビジョンを持っているか、どのような投資をしようとしているかを示す、明確な価値命題を用意しておく。
出典:How Innovation Labs Can Drive Digital Business(Smarter with Gartner)
Senior Public Relations Specialist
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