「テレワークへの取り組みがうまくいかなかった5つの要因」の対処法 ガートナー資料のデジタル化や労務管理など

ガートナー ジャパンは、テレワークに取り組もうとする企業が注意すべきポイントを発表した。単にアプリケーションを導入して使うだけでは不十分で、ビジネス文化や習慣、マネジメント層の意識改革も求められ、一朝一夕に成功するものではないと注意を促している。

» 2020年03月16日 08時00分 公開
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 ガートナー ジャパンは2020年3月13日、テレワークに本格的に取り組もうとする企業が注意すべきポイントについて発表した。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止策や、東京オリンピック開催期間の交通混雑緩和策として、テレワークの導入を進めている企業が増えつつある。だがガートナーでは、テレワークは単にアプリケーションを導入して使うだけでは不十分で、ビジネス文化や習慣、マネジメント層の意識改革も求められ、一朝一夕に成功するものではないと注意を促している。

 ガートナーの企業内個人向けの調査では、従業員数2000人以上の企業に勤務する従業員の8割近く (76%) が、2017年11月の調査時点でテレワークに取り組んでいたというデータがある。ただし、テレワーク制度を導入している大企業の中には実際の運用に尻込みするところが見られ、同社は、テレワークの運用や勤怠管理の実施方法などについての問い合わせを受けるという。

【訂正:2020年4月2日16時33分 ガートナーがプレスリリースを一部訂正し、「従業員数2000人以上の大企業のうち、テレワークのインフラと制度を整備した企業は8割」を「従業員数2000人以上の企業に勤務する従業員の8割近く (76%) が、2017年11月の調査時点でテレワークに取り組んでいた」としたため、記事内容も修正しました。】

準備態勢をチェックしてトラブルに備える

 そこでガートナーは、企業のCIO(最高情報責任者)やアプリケーションリーダーに対して、コラボレーションと勤怠管理というアプリケーションの観点から、主にオフィスワーカー向けにテレワークを推進する際の注意点として、以下の2点を挙げた。

 1つ目は、自社のテレワークに関する準備態勢がどのレベルにあるかをチェックして、対象者を設定すること。もしも、テレワークを今回のCOVID-19対策として導入しようとしている場合は、スピード感を持って一気に進めることが重要だ。だがガートナーは、強引に進めてしまうと業務が滞る恐れがあると指摘する。まずはオフィスワーカーの業務内容を吟味してテレワークへの移行難易度を調べ、自社の準備状況を考慮した上で対象者を設定すべきだとしている。

 具体的にガートナーは、テレワークの実施段階を、主に外勤職のみが対象のレベル0から、顧客やパートナー企業などとコラボレーション環境の利用を許可しているレベル5の6段階に分けている。同社によると、現在テレワークを導入している企業の中で最も多いのは、全てのオフィスワーカーを対象に個人作業を自宅でこなすレベル1だという。

画像 テレワークにおける実施段階のモデル例(出典:ガートナー

 ガートナーのアナリストでバイスプレジデントを務める志賀嘉津士氏は、「企業が緊急措置としてテレワークを導入する場合は、必ずしも平常時のように難易度の低いものから難しいものへと時間をかけて進める必要はない。準備が整っている部門や拠点であれば、ハイレベルな施策を早期に実施することも可能だ。全社一律に、準備が整うまで石橋をたたいて渡るようなアプローチではなく、個々の対象ごとに状況やリスクを評価し、可能なところから速やかに着手することを考慮すべきだ」と述べている。

 2つ目は、これまでテレワークを導入してきた企業で生じた問題とその回避策を知り、自社で発生し得るトラブルに備えること。ガートナーでは、国内企業のテレワークへの取り組みがうまくいかなかった要因として、具体的に5つの要因を挙げている。

資料が自宅から閲覧できない

 従業員が必要なときに必要な資料を閲覧できる環境の構築が必要だ。すぐに構築できるものではないが、必要な文書からデジタル化したり、ペーパーレスを推進したりするなど、継続的な取り組みをすべきだ。

ビデオ会議の品質が安定しない

 特に複数拠点間でのビデオ会議時に不安定になる事例が報告されているという。当座の対策として、音声のみ電話回線を利用するなどを挙げているが、ネットワークの通信容量の見直しや、品質面で実績のあるツールを精査すべきだ。

コラボレーションツールの使い方が分からない

 ガートナーは「従業員のITリテラシーの向上は、企業の競争力に直結する要因であり、恒常的に取り組む必要がある」としている。ただ、COVID-19対策のような緊急時には、組織内でITに詳しい人をあらかじめ特定しておき、簡単な使い方などは組織内で完結することで、社内のヘルプデスクに問い合わせが集中することを防げるとしている。

勤務時間を正確に把握できない

 2019年に労務管理が厳格化され、裁量労働制の対象者についても労働時間を客観的な方法で把握することが義務付けられた。オフィスへの出勤を前提に勤怠を管理している企業は、テレワーク導入に当たって代替手段を検討する必要がある。短期間で導入できるツールとしてガートナーは、ネットワークにつながっていれば利用できるクラウド型の勤怠管理ツールを挙げている。

従業員がシャドーITの利用を拡大してしまう

 平常時でも見られる問題だが、今回のCOVID-19にまつわるテレワーク特需では、ITツールベンダー各社がフリートライアルなどのキャンペーンを実施しており、特に利用拡大が進みやすい。ガートナーは「IT部門がこうした情報をいち早く押さえて、ツールの利用可否や、推奨ツールの提示、利用時の注意点などについて社内に向けて積極的に発信することが重要だ」としている。

 志賀氏は、「これらの課題は一朝一夕に解決できるものではなく、抜本的に解消するためには、長期的に取り組まざるを得ない。テレワークは、今回の感染症対策だけでなく、大型台風や大震災、その他の災害時にも事業継続の観点から必要であり、これを契機に取り組みをより強固なものへと進化させていくべきだ」と述べている。

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