リクルートマネジメントソリューションズは、「テレワーク緊急実態調査」の結果を発表した。それによると、テレワーク環境は、業務の生産性と個人的生活の質を高める要因になり得ることが分かった。
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リクルートマネジメントソリューションズの組織行動研究所は2020年5月19日、「テレワーク緊急実態調査」の結果を発表した。対象は、テレワーク経験があり、従業員数300人以上の企業に勤務する一般社員664人と管理職253人。
リクルートマネジメントソリューションズによると、テレワークは働く場所だけでなく、オフィスという空間が促したり補ったりしていたものが変化する。例えば、意思疎通や人とのつながりの実感、自律やセルフマネジメントの実感、安定した日常と所属の実感などだ。テレワークだと、それらがぽっかりと抜け落ちてしまうという。
今回の調査は、こうした「これまで当たり前のものとして存在していたのに失われてしまったもの」に光を当てて、働き方改革が個人や企業に促す心理的な改革への理解を深めることが目的だとしている。
調査結果は次の通り。
今回の調査では、主にテレワーク環境下でのワークライフバランスの変化について調べた。リクルートマネジメントソリューションズは、「ワークの質の変化」「ライフの質の変化」「業務ストレスの増減」という3つの因子の組み合わせについて分析した。その結果、テレワークでもオフィスワークとの違いを感じずに仕事生活や個人的生活を送れる人が約4割に及ぶことが分かった。
仕事生活と個人的生活のどちらの質も向上した人の割合は2割強だった。しかし、その半数弱は業務ストレスも高まっていた。「ライフの質」のみが向上して「ワークの質」と「業務ストレス」はオフィスで仕事をしているときと変わらない人も2割強を占めていることが分かった。そして、ワークとライフの質がどちらも低下し、生活全体の活性度が低下する人が1割強存在していた。
次に、テレワーク歴や頻度がワークライフバランスに及ぼす影響を調べた。その結果、ワークの質とライフの質がともに向上し、業務ストレスが減少している人の割合は「テレワーク歴が長く頻度は高い」「テレワーク歴が長く頻度は低い」「テレワーク歴が浅く頻度は高い」「テレワーク歴が浅く頻度は低い」という順で高かった。その中で「テレワーク歴が浅く頻度は高い」グループは、ワークの質とライフの質がともに低下し、業務ストレスは変化なしという人の割合が高かった。
これらの結果からリクルートマネジメントソリューションズは次のように分析している。
「通勤やオフィス勤務に関連する何らかの理由で、業務の生産性や個人的な生活の質に改善の余地があった人にとって、テレワーク環境は、業務の生産性と個人的生活の質の両方を高める要因となり得ることが示唆された。テレワーク環境に慣れないうちは業務ストレスが高まることがあるが、経験が増すことによって、業務ストレスを減少させるスキルが身に付いたり、環境が整っていったりすることが推測される」
「ワークの質」「ライフの質」「業務ストレスの大きさ」について、時間(経験)以外に改善する要因があるかどうかも調べた。その結果、「達成状態を描く」「自らゴールを設定する」「前提を見直す」といったセルフマネジメントが、ワークの質とライフの質の両方に影響を及ぼすことが分かった。本人の工夫に任せる部分があり、仕事の全体像や責任、成果が明確な「自律的な職務設計」も重要だった。
テレワーク時の業務ストレスには、チームメンバーと互いに業務の進捗(しんちょく)が影響し合う「職務の相互依存性」や、内向きだったり受け身だったりする仕事姿勢を示す「大企業病傾向」といった要因が影響を及ぼしていることが分かった。リクルートマネジメントソリューションズでは、テレワーク時の生産性と健康を高めるには、責任範囲を明確にしながら、チームや組織全体の成果に主体的に関心を向け合うような「自律」と「つながり」を意識した職務の再設計が重要だと指摘している。
そして、テレワーク環境下では、感謝や助け合いなどのコミュニケーションが、管理職のきめ細かいマネジメントに支えられていた。このことからリクルートマネジメントソリューションズは「テレワークでは管理職の業務負荷が高まり、組織での協働が滞ることが懸念される」としている。
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