パーソルプロセス&テクノロジーは、テレワークとエンゲージメントの関係について分析した。テレワークの長期継続によってチームワークが悪化することがあるものの、職場仲間とのオンラインを通じたコミュニケーションによって改善できることが分かった。
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パーソルプロセス&テクノロジーは2020年4月21日、テレワークとエンゲージメントの関係についての分析結果を発表した。同社で「働き方改革の専門家集団」として働き方改革の支援やコンサルティングを行うワークスイッチコンサルティングと、テクノロジーで人の能力や意欲を引き出す「People Tech」事業を運営するアトラエが共同で調査を実施。調査にはアトラエが提供するエンゲージメントサーベイサービス「wevox」を利用した。
なお、ここでいうエンゲージメントとは、組織に対する自発的な貢献意欲や、主体的に仕事に取り組んでいる心理状態を指標化したもの。
今回の調査は、テレワークを実践しているワークスイッチコンサルティングの社員を対象に、2019年10月から2020年3月の様子を分析した。ワークスイッチコンサルティングでは2015年からテレワークを実施しており、今回の調査対象のチームは、テレワークを週4〜5回のペースで実施している。
wevoxのエンゲージメントスコアの時間推移を見ると、「チームワーク」と「組織への共感」のエンゲージメントスコアが下降傾向にあることが分かった。パーソルプロセス&テクノロジーは、この点について「長期間のテレワークによって直接会えない時期が続くことで、人とのつながりが弱まっていることを示唆している」と分析している。
次に、2019年10月に人事異動があった組織となかった組織の間で、エンゲージメントスコアの推移を比較すると、異動があった組織の「仕事への熱中度合い」スコアが低下していた。人事異動がなかった組織にはこうした傾向は見られなかったことから、パーソルプロセス&テクノロジーは「テレワークの実施と人事異動が重なると、仕事への熱中度合いが低下することがある」とみている。
ただ、2019年11月以降は異動があった組織のスコアに改善が見られる。2019年11月以降は、部署全体でオンラインミーティングを実施したり、オンライン通話サービスを利用した1on1を行ったり、月次のワークショップを実施したという。こうした施策がエンゲージメントスコアの改善に影響を与えた。
「組織への共感」や「チームワーク」のスコアも改善していることから、パーソルプロセス&テクノロジーは「リモート環境下で直接顔を合わせられなくても、1対1のコミュニケーションを適切に実行することで組織への共感やチームワークを維持・強化可能だ」としている。
こうした分析結果について、慶應義塾大学の教授でwevoxの学術顧問を務める島津明人氏は、「新型コロナウイルスの感染が拡大している現在、十分な体制が整わないまま主に在宅勤務によるテレワークを実施せざるを得ない企業が増えている。今回の調査結果は、テレワークであっても、オンラインを活用したマネジメントの工夫によって『ワークエンゲージメント』が維持される可能性を示唆している。社会的距離を保つことが要請されている状況では、職場の仲間とのオンラインを通じたコミュニケーションが、人間が持つ親和欲求を満たしていると思われる」と述べている。
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