阿部川 サイさんと同じようにがんばっている、日本の若いエンジニア読者に何かメッセージをいただけますか。
サイさん 多分、みんなそれぞれの立場でがんばっていると思います。でも、私は……負けたくない。そういう気持ちでがんばっています。
編集部 日本の学生は中学も高校も大学もあまり勉強しないので、そうゆう人たちに比べたら、負ける気はしないのではないですか。
サイさん そんなことは、ありません。中国の学生は、勉強はするけれど、何のために勉強したのかが分かっていないと思います。もし私が中学や高校のときに、「何のために勉強しますか」と聞かれたら、多分「試験のため」と答えたと思うんです。でも日本の学生は違うと思います。
インターンのとき同期だった日本人は、「エンジニアになるために勉強しました」ときっぱり言いました。そのために大学も情報関連の学科に行くなど、目標がとても明確でした。自分のために勉強しているんです。そう考えると、日本の学生の方が中国の学生より優秀だと思います。
阿部川 同期に恵まれてよかったですね。日本人でも試験のために勉強する人や、親のために勉強する人も、実際はいますからね。
サイさん 試験のために勉強する人にとって、勉強は苦しいことですよね。でもその同期にとっては、勉強は楽しいことで、それを自覚して勉強している。そうする知識の程度や幅が、広く深くなります。勉強したいから、「今日はこれ、明日はあれ」というように、自発的に勉強の範囲が広がっていっているのだと思います。
編集部 あのう、さっきから薬指の指輪が気になっていたのですが……。
サイさん 大学院を卒業してすぐに、高校時代のクラスメートと結婚しました! 主人は日本に来たばかりなので、いま日本語を勉強しています。ハードウェアが専門なので、じきに製造業やものづくりの仕事をすると思います。
阿部川 ご主人は、サイさんとご結婚するために日本に来たのですね。
サイさん はい。
一同 ほー!! (日本のエンジニアに)全然、負けてないですね(笑)!
美しい人だった。春のうららかな陽光を受けなくとも、その笑顔は透き通っていた。
強い人でもあった。「負けたくない」と静かに、しかし強く言った。中学、高校と勉強しかしてこなかった。その上での大学、留学、そして社会人。「ゆとり教育」とは真逆の試練。私には、「誰かに負けたくない」や「何かに負けたくない」ではなく、「自分に負けたくない」と聞こえた。
そして謙虚な人だった。「今のエンジニアとしての能力と日本語の力では、まだまだ戦えない」。自虐ではなく、冷静に実力を見定め、将来図を描いていた。
こんなときだからこと、私たちは変化を恐れず、進化し続けなければならない。ある老舗の四代目は、「変わらないために、変わり続ける」と言った。現状を変えるには、いつでも必ず、人知れぬ努力や鍛錬が必要になる。しかしそれを支えるのは、まずは己の強い意思、そして柔軟な知恵、それと支えてくれるチームワークだ。
当たり前のことを当たり前に、負けずに、謙虚にやり続ける。輝く瞳は、私たちが忘れてはいけないITの原点、仕事の王道を思い出させてくれた。
「Go Global!」では、GO阿部川と対談してくださるエンジニアを募集しています。国境を越えて活躍するエンジニア(日本在住、35歳まで)、グローバル企業のCEOやCTOの来日などがあれば、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。
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