15歳の若さで8つの肩書を持つTanmay Bakshi(タンメイ・バクシ)氏。単なる夢物語ではなく、今必要とされているものを作り続ける同氏を突き動かすものとは何だろうか。
世界で活躍するエンジニアの先輩たちにお話を伺う「GoGlobal!」シリーズ。今回は「Sansan Innovation Project 2019」に登壇した若きエンジニアであるTanmay Bakshi(タンメイ・バクシ)氏にご登場いただく。IBM Champions for Cloud & Honorary Cloud Advisor(IBM 主任クラウド研究員兼名誉クラウドアドバイザー)、AI Developer & Neural Network Architect(AI開発およびニューラルネットワークアーキテクト)、Algorithm-ist @Darwin Ecosystem(ダーウィンエコシステム社アルゴリズム研究家)、IBMのFB-Liveのホスト、そしてTanmay Teaches(YouTubeのチャンネル)の管理人。15歳の若さでこれら8つの肩書を持つ彼を形作るのは「好奇心」? それとも「使命感」?
阿部川“Go”久広(以降、阿部川) まずは誕生日を確認させてください。2003年10月16日生まれの15歳ですね。
バクシ氏 はい。改めて聞かれると変な感じですが(笑)。
阿部川 ご両親がインドのご出身で、ご家族でカナダに移られたのですよね。ではタンメイくんはカナダの幼稚園や学校に通っていたのですか?
バクシ氏 はい。カナダの教育制度は、K-12といった幼稚園の年長から高校卒業までの13年間がひとかたまりになっています。僕は12歳まで学校に通いました。その後は、ホームスクール(家庭で学校のカリキュラムを実施する方式)です。
父はエンジニアですが、プログラミング以外にもチューターとしていろいろ教えてくれます。カリキュラムがあり、父はそれに沿ってさまざまなことを教えてくれます。母や姉も一緒に教えてくれます。家族みんなで一緒に学んでいるという感じです。
阿部川 5歳の誕生日にお撮りになった写真を見せていただきましたが、誕生日のプレゼントでしょうか、2冊の本を持っていらっしゃいますね。1冊は「Gingerbread Man」そしてもう1冊は、いわゆる「誰でも分かる」シリーズのコンピュータ関連本のようなのですが……。
バクシ氏 すみません、この本はそれほど覚えていないんです(笑)。インドにいたころからですが、家には本当にたくさんの本があって、それは技術や数学や、物理学や生物学などでした。大きな書架が2つ並んでいたのをよく覚えています。その中にあった本のうちの2冊ですね。
阿部川 ではこのすぐ後に「Swift」を学んだのですね。
バクシ氏 はい、有名なコンピュータ言語の中で最初に僕がはまって、学んだのがSwiftだと思います。もちろんその前にも幾つかのコンピュータ言語は学び始めていました。データベース(DB)のソーススクリプト言語や、Windowsのバッチ、「Visual Basic」「Objective-C」そしてSwiftといった感じでした。その後も本当にたくさんの言語を学んでいます。
今は「Ruby」や「Python」「Julia」などが気に入っています。僕は膨大な言語を学んできましたが、学ぶこと自体は大変ではありません。
阿部川 その後、タンメイくんが9歳のときですね、T-tableを開発なさった。
バクシ氏 はい。僕の最初のiOSアプリケーションでした。このためにObjective-Cを学びました。アプリケーション開発は、とても楽しかったです。このプログラムを作ったのは、7歳のときにあった掛け算の試験がきっかけでした。僕はVisual Basicでアプリケーションを書いて九九の練習をしました。おかげで試験はとても良い成績でした。
それで思ったんです。自分にとってこんなに役に立ったのだから、きっと他の子どもも助けることができるはずだと。それともっと多くの人に使ってもらえるにはiOSで使えるアプリにした方がいいと思い、T-table開発に至ったわけです。
阿部川 たくさん売り上げたのでしょうね(笑)。
バクシ氏 いえいえ、このアプリは無料です。私は自分で開発したソフトウェアからお金を取ったことはありません。全て無料か、オープンソースです。
阿部川 いいですね。It's for everyone(全ての人のためのソフトウェア)ですね。
バクシ氏 おっしゃる通りです。
阿部川 5歳のころからコンピュータに関わり、11歳のころに「ディープラーニング」に出会い、虜(とりこ)になったと聞いています。最初はどんな風にこの技術に出会ったのですか。
バクシ氏 きっかけは「IBM Watson」(以下、Watson)でした。YouTubeで確か「世界で一番頭の良いコンピュータ」というようなタイトルが推奨チャンネルとして表示されました。面白そうだと思い、クリックしたその40分後にはWatsonに魅了されていました(笑)。それがディープラーニングとの出会いです。
阿部川 偶然の出会い、ということですね。
バクシ氏 その番組はディープラーニング以外にも、機械翻訳や、AI(人工知能)を活用したリテールビジネスなど多くの内容が紹介されていました。そこからWatsonのことを深く知るようになり「ソフトウェア開発のためのAPIツール」としてWatsonを使うことを思い付きました。
僕は自分のYouTubeチャンネルを持っていた(注)ので、そこでWatsonの質疑応答(Retrieve and Rank)や文字変換(Document Conversion)のサービスに関するチュートリアルを公開しました。当初は、継続的にコンテンツ化していく想定でしたが、広がり過ぎてしまい、Twitterなどでそのことを発信しました。するとそれがIBMの方の目にとまって、IBM主催のイベントである「Interconnect 2016」に招待されました。そこで初めて、僕の開発した「マシンラーニング」によるアプリケーションを紹介できました。それがきっかけとなって、現在まで、IBMと一緒に仕事をしています。
※注:「Tanmay Teaches」というチャンネルを開設しており、2019年4月現在その登録者数は28万8000人を超える。
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