IDC Japanは、日本と米国、欧州で実施した「働き方の未来」に関する調査結果を発表した。日本では、働き方の未来に向けた取り組みが遅れているが、新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに、取り組みが一気に進展する可能性がある。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
IDC Japanは2020年6月4日、「働き方の未来」に関する調査を日本と米国、欧州で実施し、3地域の比較分析結果を発表した。働き方の未来とは、デジタルトランスフォーメーションを継続的に成功させるために必要な働き方のトランスフォーメーションであり、ワークモデルを根本的に変えるコンセプトのことだ。
今回の調査では、ワークカルチャーやワークスペース、ワークフォースといった分野の改革を推進するためのICTソリューションの導入状況、改革の決定者と予算、改革の促進要因や阻害要因などを調べた。ワークカルチャーは人材の獲得や開発、維持に関する分野で、ワークスペースはコネクティビティやデジタルアシスタンスといった場所や時間にとらわれずに働けるようにする環境に関する分野。そしてワークフォースは、AI(人工知能)やAR(Augmented Reality:拡張現実)、VR(Virtual Reality:仮想現実)、ロボティクスといった、人と技術の協働に関する分野だ。
IDC Japanの調査結果によると、働き方の未来に向けて独立した予算を持っている企業の割合は、日本が41.0%で3地域の中では最も低く、米国が75.4%、欧州が78.6%だった。IDCでは、社内活動に独立した予算が付けられているか否かは、経営層のその活動に対する積極性や真剣度の表れだとしている。そのため日本では、働き方の未来を実現するための取り組みが遅れている可能性がある。
この点は調査結果からも明らかだ。働き方の未来を実現するための自社の取り組みが「進んでいる」と回答した企業の割合は、米国の41.6%、欧州の20.9%に対して、日本は10.5%にすぎず、日本の自信のなさが目立った。
こうした点は、働き方の未来に向けて改革すべき3領域のうち、日本は特にワークカルチャーとワークフォースで遅れが目立つことからも、裏付けられる。
例えばワークカルチャー分野に属するデジタルスキルのトレーニングの導入率は、日本では31.0%。この値は米国や欧州よりも14〜20ポイント低い。人材採用/管理プラットフォームの導入率も、日本では米国や欧州よりも7〜22ポイント低く26.0%だった。
一方、ワークフォース分野に分類されるRPA(Robotic Process Automation)の導入率は、日本では28.3%で米国と欧州を大きく上回ったが、ワークフロー自動化の導入率は15.3%で、米国や欧州よりも25〜32ポイントも低かった。さらにロボット/ドローン、ウェアラブル、AR、VRといったワークフォース関連ハードウェアの導入率も、日本では非常に遅れていた。IDCでは、ワークフローの導入率が日本で低い原因として、経費精算や交通費精算、稟議(りんぎ)書といった書類が紙やメールなどで処理されていることだと推測している。
これに対してワークスペース関連のITソリューションについては、日本は米国や欧州と互角だった。ワークスペース分野は、事務作業で利用するITツールが属している。
IDC JapanでPC,携帯端末&クライアントソリューションのグループマネージャーを務める市川和子氏は、「今回の調査は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行する前に実施した。働き方の未来という観点では日本は米国と欧州から遅れている点が目立っているが、COVID-19流行を機に、日本企業のIT投資の優先度や企業文化、組織の在り方に変化をもたらす可能性があり、働き方の未来の実現に向けた取り組みが一気に進展する可能性がある」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.