充実した徳島でのインターンを終え、東京に戻って復学した保坂さんは、フリーランスとしてさまざまな仕事を受けつつ複数の企業のインターンに参加し、さらにいろいろ学んではハッカソンに参加し、という日々を過ごしていた。いわばこのころから、学生とフリーランスエンジニアという二足のわらじを履きこなしていたことになる。
就職を考える際に条件として考えたのも、副業を継続できることだった。シリコンバレーへのツアーに参加したことをきっかけに就職を決めた大手人材サービス企業と面談した際にも、就職後も副業が可能かどうか、自分のやりたい形で副業ができるかどうかを確認したという。
「本業以外に軸足を持っていたかったんです。他にも仕事があることで変に会社に縛られずに済むと考え、副業をしていたいという思いが強くありました」
逆に、フリーランスエンジニア一本で世の中を渡っていくという選択肢も頭をよぎった。だが、「会社という場所で、組織やチームで仕事をする経験を積みたい、人事制度も含めて組織について学びたいという思いもあり、就職することにしました」という。
こうしてエンジニアとして入社した本業では、ひょんなことから「向いてるんじゃない」と言われてプロジェクトマネジャーをやることになった。その後ももっぱらマネジメント畑を歩み、事業売却のプロセスを経験した他、開発内製チームの立ち上げに関わり、人材採用にも携わるようになっている。まさに、組織に属する一員ならではのさまざまな経験をしている最中だ。
昼間はコーディングはしていない。「でも、マネジメントも嫌ではないというか、どちらかというと面白いです。マネジメントが核になる組織ということもあり、この会社で一番面白い仕事ができていると思いますし、この先もマネジメントのキャリアパスもいいかな、と思っています」
その分、副業ではがっつりコーディング、もの作りをしている。過去のつながりや人づての他に、キャリアSNS「YOUTRUST」も活用している。最近は、同プラットフォーム経由で依頼を受けた「Mellow」で、フードトラックアプリの要件定義、設計、開発、テスト、運用に携わった。
「コードを書きたいなと思っても本業ではなかなか書けないことが多いので、副業でプログラミングしています。やっぱりコードを書いているときってすごく楽しいし、本業のリフレッシュにもなりますね」
とはいえその生活は、肉体的にはハードそうに思える。夜の10時に本業を終えて、軽く夕食を取ってから夜中の2時、3時まで副業をしていたこともあったそうだ。納期に余裕があるときには、平日の夜や土日で気が向いたときにやっているというが、それでも大変そうだ。
けれど保坂さんはひょうひょうとしている。「もともと仕事をしているのがけっこう好きですし、コードを書いているのは楽しいので、そんなに苦にはなりません。徳島にいたとき、家にこもってできることがコードを書くことくらいしかなかったので、自然とそれが癖になってしまったのかもしれません」、と当たり前だよという表情で話す。
副業を続けてきてよかったポイントはたくさんあるが、大きいサービスだとなかなか試せない新しい言語やツール、ライブラリをいろいろと試せるのが、エンジニアとしての楽しさの一つだという。また、本業の世界とは全く違う世界の人と出会えるのも、フリーランスならではだ。
「楽しいのはプログラミングで、面白いのは人だと思います」
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