不確実性の高まるこの時代、自分も副業をしてみたいと考えるエンジニアは少なくないだろう。保坂さんは経験者ならではのアドバイスとして、「副業をするときは、頭の中で本業で抱えている問題を考えつつ、切り替えてやらなければいけません。本業にすごく集中していてそこの切り替えが難しい場合は、あまり副業はしない方がいいかもしれません」と話す。
保坂さんの場合は、頭の中もそうだが、環境をすぱっと切り替えるようにしている。
「PCや道具は全部別です。仕事の時間が終わったら、本業用のPCや社用携帯は部屋の片隅において見ないようにして、副業中は副業の情報しか見ません。もちろん本業のときは本業の方しか見ません」
引っ越しとテレワークで、それはさらに徹底されたという。「最近は本業も自宅でするようになっていますが、本業は書斎でやって、副業はリビングでするようにしています。物理的に部屋を切り分けています」
日本でも到来したテレワークの広がりに伴って、本業でも副業でもエンジニアの働き方は今後変わってくるかもしれないという。「仕事をする姿が見えなくなった分、どんなことをして、どういう成果を出したか、どんなことを考えて、それがどのようにプロダクトに反映されたかというアウトプットが重要になってきているように思います」と保坂さんは述べる。
アウトプットといっても、仕事をしている姿をWebカメラで監視したり、トラッキングしたりするのではない。もうちょっと性善説に寄った形で、「最終的に、自分の仕事がどういう価値につながっていくか」を考えることが重要になるのではないかという。
「そのために、自分のした仕事が誰の手に届き、どういうところで喜ばれるのか、ステークホルダーの関係やジャーニーをマッピングし、図式化してみるのが重要だと思います。どこまでやったらどういう価値が発揮されるかを図にしてみるといいのではないでしょうか」
副業の場合も同様だ。むしろ受託で開発を請け負い、成果物が決められている場合こそ、図式化しやすいかもしれないと話す。
一方、会社やマネジメント側は、「作業者がそうした成果を生み出しやすい環境を用意し、阻害する要因をなくす仕組みをどう作るかにマネジメントの軸が移ってくるのではないか」と保坂さんは考える。本質を考え抜くことがいっそう重要な時代になってきている――そんなふうに思わされる、保坂さんならではの言葉だ。
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