GoogleがIstioなどの商標を管理する団体を設立、波紋が広がるCNCFへの移管はどうなる?

Googleは2020年7月8日(米国時間)、IstioやAngularのトレードマーク(商標)を管理する新たな団体、「Open Usage Commons」を設立したことをブログポストで明らかにした。このことが、議論を巻き起こしている。

» 2020年07月13日 08時41分 公開
[三木泉@IT]

 GoogleがIstioなどで新たな団体を設立したことが波紋を呼んでいる。

 Googleは2020年7月8日(米国時間)、IstioやAngularのトレードマーク(商標)を管理する新たな団体、「Open Usage Commons」を設立したことをブログポストで明らかにした。このことが、議論を巻き起こしている。

 Open Usage CommonsはGoogleの他、SADA Systemsや個人が参加する新たな団体。オープンソースプロジェクトの「ガバナンス構造(技術的ロードマップに対するユーザーからの提言など)やソースコードライセンス(既にOSSライセンスを定めたプロジェックとのみを扱っているが)ではなく、プロジェクトの商標の利用に焦点を当てている」(Open Usage CommonsのFAQページより)。発足時点で対象とするOSSはIstio、Angular、そしてGerritt Code Review。

 Open Usage Commonsはブログポストで、「Open Usage Commonsを設立した理由は、公平でオープンな商標の利用が、オープンソースの長期的な持続可能性に欠かせないからだ」と説明している。

 だが、Istioについてはこれまで長い間、Cloud Native Computing Foundation(CNCF)にいつ移管されるのか、なぜ移管されないのかが、関係者の関心の的になってきた。CNCFは、Kubernetesをはじめとしたコンテナ/クラウドネイティブ関連のOSSについて、商標を含めたガバナンスを確立し、普及を促進するためにGoogleが中心となって設立した団体。実際「Kubernetes」「k8s」「Certified Kubernetes」といった商標は、CNCFの親団体であるLinux Foundationの管理下にある。つまり、「Kubernetes」という言葉を製品/サービスに使えるかどうかはLinux Foundation、直接的にはCNCFが管理している。

 Istioはデビュー以来大きな注目を集めてきた。CNCFに入っていないにもかかわらず、同団体のイベント「KubeCon+CloudNativeCon」ではサービスメッシュの最有力技術として取り上げられることが多く、それだけにCNCFへの加入は待望されていた。

 2019年5月の「KubeCon+CloudNativeCon Europe 2019」で、MicrosoftがIstioを意識した動きと表現できる「Service Mesh Interface(SMI)」の推進を宣言した際、CNCFのCOO(最高執行責任者)/CTO(最高技術責任者)であるクリス・アニズィック(Chris Aniszczyk)氏は、「もし、GoogleがIstioのガバナンスを早期にオープンなものに移行していれば、こうしたことは起こらなかったかもしれないとも思う」と語った。また、「私たちの扉はいつでも開かれている」とも話していた。

「Open Usage Commonsがどう信頼を獲得するのか、楽しみにしている」

 Istioを中心とした技術にフォーカスするスタートアップ企業のTetrateは、2020年7月9日にブログを更新し、一応は歓迎しながらも懸念を表明した。

 Tetrateは、Open Usage Commons の設立で、Istioの商標が一応Googleから離れるのは、「全体的には良いことだ」と表現した。

 同社はもう1つの動きとして、Istioプロジェクトにおいて単一の企業の影響力を弱めることを目的とした運営委員会のメンバー数拡大が検討されていると指摘。こちらは「プロジェクト全体の方向性に関して、より多くの意見を持ち込めることで、コミュニティにメリットをもたらす」としている。

 Tetrateは、Istioに関するGoogleの支配力が多少なりとも低下することで、ガバナンスが向上することに期待している。一方で、「『商標を管理する中立的な団体』というのは、CNCFの主な存在理由でもある」といい、なぜCNCFへの移管を考えないのかと暗に疑問を呈している。

 「(今回の動きは)Istioプロジェクトの長期的な健全性を確保するための、Googleによる善意の表れの第1歩だと信じている。残念なことに、Googleが採用したやり方は、コミュニティ(コントリビューターとエンドユーザーの双方)に不要なストレスをもたらした。具体的には、Istioの商標の移管について、Istioコミュニティ内ではしっかりした議論がなく、Googleが一方的に、新たな、実績のない組織に移す決定をしてしまった。これは、コミュニティとの信頼を築ける、真に中立的な組織へ向けた出発点としては適切でない。どんなプロジェクトにとっても、IP(知的財産権)、商標、ガバナンスは議論の対象になるべきではない。それをGoogleは、私たちの頭から離れないものにしてしまった。Open Usage Commonsがどのように信頼を獲得し、時間をかけてこれらの懸念を解消していくのか、私たちは楽しみにしている」

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