仮想マシンの状態を保存する「チェックポイント」Windows 10 Hyper-V入門(2/2 ページ)

» 2020年09月10日 05時00分 公開
[塩田紳二]
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チェックポイントの操作方法

 チェックポイントに対しては、「作成」「適用(戻る)」「削除」「エクスポート」の4つの操作が行える。操作は、仮想マシンウィンドウ(接続ウィンドウ)やHyper-Vマネージャーから行うが、少し機能の表記に違いがある。

チェックポイントの作成

 チェックポイントの「作成」は、その操作をする時点にチェックポイントを設定するものだ。チェックポイントを作成することで、AVHDXが作成され、そこからの変更は新規に作られたAVHDXに行われるようになる。作成はいつでも可能だが、AVHDXを作るために多少処理時間がかかる。

 また、後述の「適用」で過去のチェックポイントに戻っている状態でも作成することが可能で、チェックポイントは、ツリー構造のように枝別れした状態にすることもできる。作成すると必ずAVHDXが作られるため、多数のチェックポイントを作ってしまうとファイルのアクセスが遅くなるなどの影響がある。なお、Hyper-Vでは、1つの仮想マシンに対して最大50個のチェックポイントを作ることが可能だという。

 作られるチェックポイントは、前述した設定画面の「チェックポイント」で指定されたもの(標準または運用チェックポイント)で、個々のチェックポイントに名前を付けることができる。この名前は後から変更することもできる。

 チェックポイントの作成は、仮想マシンウィンドウとHyper-Vマネージャーから実行できる。仮想マシンウィンドウの場合、[操作]メニューの[チェックポイント]を選ぶか、ツールバーの[チェックポイント]アイコンをクリックする。どちらもチェックポイントの名前を設定するダイアログが表示されるので、その場でデフォルトの名前(仮想マシン名や日時などからなる)から変更できる。

チェックポイントの作成(1) チェックポイントの作成(1)
チェックポイントの作成は、仮想マシン接続ウィンドウの[操作]メニューで[チェックポイント]を選択する。
チェックポイントの作成(2) チェックポイントの作成(2)
チェックポイントの作成は、ツールバーでも行える。

 Hyper-Vマネージャーの場合は、該当の仮想マシンを選択して、右側の「操作」欄下部にある[チェックポイント]をクリックする。このとき、チェックポイント名は変更できず、仮想マシン名や作成日時からなるデフォルトの名前が付けられる。

チェックポイントの作成(3) チェックポイントの作成(3)
チェックポイントの作成は、Hyper-Vマネージャーの「操作」欄からも可能だ。

 どの場合も、選択した時点で確認なく、直ちにチェックポイントの作成が開始される。特に仮想マシンウィンドウで操作した場合、名前変更のダイアログが表示された時点で、チェックポイント自体の作成は既に開始されている点には注意したい。

チェックポイントの作成時点に戻る「適用」

 「適用」は、チェックポイント作成の時点に仮想マシンを「戻す」ことだ。適用することで、仮想マシンは、チェックポイントが作成された時点の状態に移行する。

 Hyper-Vマネージャーの「チェックポイント」欄には、選択した仮想マシンの全てのチェックポイントがツリー表示される。この中にある「現在」マーカーから伸びる線が適用中のチェックポイントを表す。この「現在」マーカーがどのチェックポイントを使っているかによって、次に作成するチェックポイントのツリーでの位置などが決まるので注意してほしい。

Hyper-Vマネージャーの「チェックポイント」欄 Hyper-Vマネージャーの「チェックポイント」欄
Hyper-Vマネージャーには「チェックポイント」欄があり、ここに仮想マシンが持つチェックポイントがツリー構造で並ぶ。

「チェックポイント」欄の「現在」マーカー 「チェックポイント」欄の「現在」マーカー
「現在」マーカーは、選択されているチェックポイントを示す。

チェックポイントは枝分かれする構造 チェックポイントは枝分かれする構造
1回前の状態に戻っているときに、チェックポイントを作ることも可能なので、チェックポイントは枝別れする構造にもなる。このため、チェックポイントを作成、削除する場合には「現在」マーカーの位置に注意すること。

 「適用」は、チェックポイントに対してのみ行え、チェックポイントのない状態には「戻る」ことはできない。例えば、Windows Updateの前にチェックポイントを作り、アップデートの後にチェックポイントを作らずにWindows Update前に状態を戻した場合、Windows Update後の状態に戻すことはできず、再びWindows Updateによるアップデートを実行する必要がある。

チェックポイントの戻れる場所 チェックポイントの戻れる場所
仮想マシンの状態は、チェックポイントとして指定されるため、常にチェックポイントが存在する。

 適用は、[仮想マシン]ウィンドウの[操作]メニューの[元に戻す]またはツールバーの[元に戻す]で行える。これらは、「現在」マーカーの直前のチェックポイントを「適用」する機能だ。

チェックポイントを「適用」する(1) チェックポイントを「適用」する(1)
仮想マシン接続ウィンドウからは、1つ前のチェックポイントを適用する[元に戻す]だけが可能だ。

 これに対して、Hyper-Vマネージャーの「チェックポイント」欄でチェックポイントの右クリックメニューにある[適用]および、「操作」欄の[適用]は、「チェックポイント」欄で選択しているチェックポイントを使って仮想マシンの状態を戻す。

チェックポイントを「適用」する(2) チェックポイントを「適用」する(2)
Hyper-Vマネージャーの「チェックポイント」欄では、任意のチェックポイントを適用して、過去の状態に「戻る」ことができる。

 また、Hyper-Vマネージャーの「チェックポイント」欄でチェックポイントが選択されていない場合には、Hyper-Vの「操作」欄には仮想マシンウィンドウのツールバーと同じ「戻す」が表示される。「チェックポイント」欄の選択状態で表示される機能が変わるので注意が必要だ。

チェックポイントの削除

 「削除」は、チェックポイントを削除するものだが、実際の動作は複雑である。チェックポイントを削除すると、前述のように1つ後ろのチェックポイントと差分ディスクファイルの統合が行われる。こうした処理が行われるため、チェックポイントの「削除」は取り消すことができない。

 削除するチェックポイントの後ろにはチェックポイントがなく、前には、自動チェックポイントだけという状態では、最初の差分ディスクファイルとの統合が行われる。つまり、自動チェックポイントが全ての変更状態を引き継ぐことになる。

 チェックポイントの削除は、Hyper-Vマネージャーの「チェックポイント」欄で行う。ここで削除したいチェックポイントを選択して、右クリックメニューから[チェックポイントの削除]を選ぶ。「操作」欄にも同様の項目がある。

チェックポイントの削除 チェックポイントの削除
チェックポイントの削除は、Hyper-Vマネージャーの「チェックポイント」欄でチェックポイントを選択して行う。

 チェックポイントを選んでから[Delete]キーを押した場合も、同様に削除される。ただし、削除前に確認メッセージが表示される。この確認メッセージには、「今後、このメッセージを表示しない」というチェックがあるが、[Delete]キーが有効なこと、削除したチェックポイントは元に戻せないことから、「オフ」のままにしておくことを「強く」おすすめする。

[チェックポイントの削除]ダイアログ [チェックポイントの削除]ダイアログ
チェックポイントの削除ダイアログには、確認メッセージを表示しないオプションのチェックがあるが、これは「オン」にしないようにする。

チェックポイントを仮想マシンとしてエクスポート

 「エクスポート」は、指定したチェックポイントの状態をVHDXに統合してエクスポートする機能だ。これには、現在の仮想マシンの設定やメモリ状態などの情報も付随し、独立した仮想マシンとして保存される。内容は、完全にチェックポイント時点の仮想マシンと同じであり、仮想マシンIDも元の仮想マシンと全く同じである。これを起動して使うためには、Hyper-Vマネージャーで「インポート」処理を行う必要がある。

 仮想マシンのエクスポートは、枝別れしたチェックポイントのうち1つを個別の仮想マシンとして独立させて扱うような場合に利用する。例えば、Windows 10をインストールし、機能アップデートが終わった段階でチェックポイントを作り、必要に応じてエクスポートしていけば、Windows 10の各バージョンの仮想マシンを用意することができる。これを使えば、開発中のソフトウェアの検証やテストを複数のWindowsバージョンで同時に行うことも可能になる。

 エクスポートは、Hyper-Vマネージャーからのみ行える。エクスポートしたいチェックポイントを選び、右クリックメニューから[エクスポート]あるいは、右側の「操作」欄から「エクスポート」を選択する。

チェックポイントのエクスポート チェックポイントのエクスポート
チェックポイントは、仮想マシンとしてエクスポートすることができる。それには、Hyper-Vマネージャーの「チェックポイント」欄でチェックポイントを選択して右クリックメニューから行う。

Windows 10でHyper-Vのチェックポイントの使い方

 Windows 10上でHyper-Vを使って、Windows 10やLinuxのようなゲストOSを動かす場合のチェックポイントの使い方を解説する。

 Windows 10 May 2020 Update(バージョン2004)では、Hyper-Vのチェックポイントに関しては、デフォルトの設定がベストであるといえる。このため、ここではその前提で使い方を考える。前述の通り、あくまでもWindows 10の上でHyper-Vを使う場合のやり方であり、Windows Server上のHyper-Vの使い方では「ない」点は明確に意識してほしい。

いつチェックポイントを作るべきか?

 多くのユーザーが疑問に思うのは、チェックポイントは「いつ作るべきか」ということだろう。自動チェックポイントにより、何かが起こる前の最初のチェックポイントが作られているため、基本的には「ゲストOSやアプリケーションに大きな変化があったとき」がチェックポイントを作るべきタイミングだ。

 というのは、チェックポイントはその性質上、変化が起こる前に作っておく必要があるからだ。何かが変化する前の最初のチェックポイントは、既に自動チェックポイントで作成されており、手動で対処する必要はない。一方、1回目の大きな変更の後に手動でチェックポイントを作っておけば、それは2回目の大きな変更の前のチェックポイントになる。

 このように、ゲストOSが大きく変更されたら、チェックポイントを作るがベストなやり方である。こうしておけば、少なくとも、直前の大きな変更だけを取り消すことが可能だ。また、チェックポイントには必ず変更の内容を示す名前を付けるのがよい。具体的には既定の名前でチェックポイントを作り、作成日時の入った名前としておき、その後で、変更の種類を示す名前に変更して日時は残しておくのがいいだろう。

 もう1つのチェックポイントの役目が「戻ってくる」位置としてのチェックポイントだ。例えば、何かの変更を行った後、その前の状態を確認したいので一時的に過去のチェックポイントを「適用」する場合、現時点と同じ状態に戻ってくるためには、チェックポイントがなければならない。

 もし、チェックポイントなしで過去のチェックポイントを適用すると、[現在]マーカーがあった位置のシステムの状態は捨てられてしまい、もう戻ることはできなくなる。そのためにも、重要な変更が行われた後には必ずチェックポイントを作るべきだ。なお、Hyper-Vマネージャーから「適用」を使う場合、ダイアログに[チェックポイントを作成して適用]というボタンがあるので、一時的に前の状態に戻る場合には、これを活用するといいだろう。

[チェックポイントを作成して適用]ボタンの使い方 [チェックポイントを作成して適用]ボタンの使い方
Hyper-Vマネージャーの「チェックポイント」欄から「適用」を選ぶと、仮想マシンの状態を戻す前に確認のダイアログが表示される。このとき、「チェックポイントを作成して適用」ボタンがあるので、必要に応じて使うと、現時点に戻ってくることができるようになる。

チェックポイントをどう維持管理すればいいのか

 次にチェックポイントをどう維持管理するかという問題だが、特に大きな変更がなく、手動でチェックポイントを作成していなければ、利用頻度にもよるが、月に1回など、時々シャットダウンして差分ディスクファイルをVHDXに統合するのがいいだろう。ただし、シャットダウンではなく休止状態としたときには、自動チェックポイントはそのまま維持され、統合は行われない。

 一方、手動でチェックポイントを作成する場合、ホスト側のストレージ容量が不足しないか常に注意が必要だ。VHDXやAVHDXは、サイズが大きくGB単位でファイル領域を利用する。こうしたファイルに対する処理では、ストレージ側に同程度の作業領域が必要となるからだ。

チェックポイントを削除するタイミングは?

 チェックポイントを作ったときには、様子を見て、削除するかどうかを判断する。Windows Updateによるエラーなどが心配なら、しばらく残しておいて問題がないようなら削除すればよい。チェックポイントが複数できてしまったが、枝別れまではしていない場合、自分で適当と判断したところで、古いチェックポイントを削除して片付けていく。判断基準は「戻るべき状態」なのかどうかである。

 チェックポイントには作成できる上限数があることと、ファイルアクセスの負荷になることを考えると、多数のチェックポイントを作成したままの状態で長期間運用することは避けた方がいいだろう。

 1つの仮想マシンに20〜30個のチェックポイントは、明らかに多すぎだし、仮想マシンを休止させることなく連続して1週間以上稼働させるのは少し危険である。実際、筆者の環境では、今回の執筆にあたり、Windows 10 May 2020 Updateで1週間以上複数の仮想マシンを起動したままにしたが、ブルースクリーンが数回発生している。しかもほとんどがチェックポイントの適用や削除のタイミングだった。結果的に仮想マシンの状態が失われたり、稼働しなくなったりするといった問題は起きていないが、何かの保証を与えるような出来事でもない。

自動チェックポイント以外を削除したら統合処理を行う

 こうして自動チェックポイント以外のチェックポイントを全部削除してしまったら、シャットダウンして統合処理を行えばよい。

 不要なチェックポイントをどんどん削除するのは問題ないが、チェックポイントなしで長期間運用するのも避けた方がよい。気がついたら、ゲストOSやアプリケーションが自動更新されていたという可能性もあるからだ。最低でも自動チェックポイントがある状態で運用しておくべきだ。

残しておきたいチェックポイントはエクスポートする

 チェックポイントが枝別れしたり、どうしても残しておきたいチェックポイントがあったりする場合、そのチェックポイントはエクスポートするのがいいだろう。エクスポートすれば、少なくともそのチェックポイントに戻ったのと同じ仮想マシンができるため、元の仮想マシンではチェックポイントを維持しておく必要がなくなる。エクスポート処理自体は、チェックポイントに何の影響も与えない。枝別れさせてしまうと、削除やエクスポートの判断に困ることになるので、できれば枝別れさせることは避けた方がいいだろう。

チェックポイントの維持はストレージの空き容量次第

 チェックポイントを維持しておくかどうかは、最終的にはホストOS側の空き容量次第ということになるだろう。ホスト側のストレージ容量が逼迫(ひっぱく)しているような場合には、エクスポートするなどの作業も困難になる可能性がある。

 チェックポイントなしの運用も問題だが、一方で作りっぱなしというのも、ストレージの空き容量を圧迫する可能性もある。このあたりはストレージ容量や別ドライブがあるのかどうかなど、ハードウェアによる違いが大きい。仮想マシンは便利な半面、ストレージ消費が一般的なアプリケーションよりも大きいことは意識しておく必要があるだろう。

 仮想マシンが動作していてチェックポイント(自動チェックポイントを含む)が存在する場合、差分ディスクファイルなどの保存フォルダを変更することができない。このため、ディスク容量が逼迫している状態で仮想マシンを起動してしまうと、起動前の状態に戻るしか選択肢がない状態になってしまい、行った設定などが無駄になる可能性があることに注意してほしい。

問題が発生した場合は「現在」マーカー以後のチェックポイントを削除

 仮想マシンに何か問題が発生した場合、チェックポイントを適用して仮想マシンの状態を戻す。このとき、「現在」マーカー以後のチェックポイントは、どうせ選択しても問題が起きるだけなので削除しても構わない。

チェックポイントを操作する際は必要なローカルファイルに注意

 チェックポイントを削除、適用するときに注意するのは、仮想マシン内に保存されているローカルファイルの状態だ。チェックポイントには、ローカルファイルの状態なども保存されているため、アプリのデータファイル(Excelのブックファイルのようなもの)や、ログファイルなども、チェックポイントの適用により過去の時点に巻き戻されてしまう。どうしても残しておきたいローカルファイルがあるなら、チェックポイントの適用などの前にネットワークなどを使って別のマシンに保存するしかない。

大きな問題が発生したら自動チェックポイントに対して「適用」を行う

 仮想マシンに何か大きな問題が起こり、これまで仮想マシンで行ってきた変更を全て破棄したい場合には、自動チェックポイントに対して「適用」を行う。自動チェックポイントに対して「適用」を行うと仮想マシンはオフ状態となる(なぜなら自動チェックポイントは起動直前の状態を記憶しているから)。このとき、自動チェックポイントは残った状態なので、手動でこれを削除する。この場合、複数のチェックポイントが残っているなら、これらもまとめて削除する。このとき、チェックポイントで使われる差分ディスクファイルや状態ファイルなどは全て破棄される。

 この操作は、比較的確実に実行できる。このため、起動直前の状態に戻ることはホスト側システムのトラブルなどに関係なく行うことが可能だ。これを考えると、時々、仮想マシンを終了し、自動チェックポイントを統合して、VHDXを更新させておくことが望ましい。例えば、Windows Updateによる更新プログラムの適用に問題がなく、以前に戻す必要がなくなったら、手動で作成したチェックポイントを削除して、仮想マシンを終了させ、自動チェックポイントを統合させる。


 チェックポイントによる状態復元は、実機のバックアップ、リストアよりも簡単だ。本来の使い方ではないが、ゲストOSの変更を行う前と後を行き来させることも可能なので、Windows Updateで何が変化したのかを見ることも可能だ。こうしたメリットを考えると、自動チェックポイントを設定しておき、チェックポイントを積極的に利用した方がいいだろう。

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