アールト大学などが参加した国際共同研究によれば、モバイルアプリケーションのUIデザインは従来の常識が通用しないという。画面上の何が視覚的注意を引きつけるかについてのこれまでの共通理解は、モバイルアプリケーションには当てはまらない。
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フィンランドのアールト大学の研究者は国際共同研究の一環として、画面上の何が視覚的注意を引きつけるかについて調査した。その結果、これまでの共通理解が、モバイルアプリケーションには当てはまらないことが明らかになった。
この研究はアールト大学の研究者の他、インドのIITゴアやトルコのイルディズ技術大学、中国のHuawei Technologiesの研究者が共同で実施した。研究チームは2020年10月6日(現地時間)、仮想カンファレンス「MobileHCI 2020」で研究成果を発表した。
今回の研究は、よく使われるモバイルアプリケーションの要素をユーザーの視線がどのように追い掛けるのかを初めて実験的にテストしたものだという。画面上の何が視覚的注意を引きつけるかに関する従来の研究ではデスクトップアプリケーションやWebインタフェースを中心としていた。
研究チームは代表的なモバイルUI(ユーザーインタフェース)のサンプルを多数使用し、アイトラッカー装置でユーザーの視線を追跡した。AndroidデバイスとiOSベースのデバイスの両方について、ユーザーがモバイルアプリケーションの画面をどのように見るのかを調べた。
これまでは大きな要素や明るい要素に人の視線が向けられるだけでなく、そこに長くとどまると考えられてきた。さらに人が特定の種類の画像を見ているとき、人の注意は画面の中心に引きつけられて、画面の水平方向に拡散すると従来の研究は結論付けてきた。ところが、研究チームは、モバイルUIでは、こうした原理がほとんど働いていないことを発見した。
「モバイルアプリケーションの表示は、PCやWebブラウザとは異なっている。画面が小さいため、より少ない要素で済むようにデザインされているからだ。通常、モバイルデバイスは水平レイアウトの代わりに垂直レイアウトを採用している。これまで、これらの違いがユーザーの視線と注目にどのように影響するかは不明だった」(アールト大学で教授を務めるアンティ・オーラスヴィルタ氏)
「意外にも明るい色には人々の目をアプリケーションの細部に向けさせる効果がなかった。モバイル画面ではあらゆる要素が目立つようにデザインされており、結果的に何も目に飛び込んでこないようだ」と、アールト大学の博士号取得後の研究者で、研究論文の主著者であるルイス・レイバ氏は語る。
この研究ではモバイルアプリケーションに当てはまるデザイン原理も確認した。
画像要素は予想以上に頻繁に視覚的注意を引きつけたものの、ユーザーが画像を見た平均時間は他のアプリケーションの要素と同程度だった。顔も注意を引きつけたが、テキストが併記されていると、視線はテキストの場所の方に近づいた。
「視覚的な注意がどこに向かうかについてはさまざまな要因が影響する。写真ではそうした要因として色やエッジ、質感、動きなどがある。だが、GUIのような生成された視覚コンテンツではデザイン構成が重要な考慮点になる」(アールト大学のハミド・タバコリ氏)
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