先日、主にWeb検索とテスト用として少数のHyper-V仮想マシンの実行に使っているノートPCをシャットダウンしようとした際に、タスクバー右端の「アクションセンター」アイコンに1件の通知があることに気が付きました。なぜか気になったのでもう一度起動して確かめようとしたら……。
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「Windows 10」の「アクションセンター」は、システムやアプリ、リマインダーなどを表示する通知機能です。2020年8月のとある日、Windows 10 バージョン2004(May 2020 Update)が稼働するノートPCの1台で、タスクバー右端(画面の右下)のアイコンに通知「1」と表示されていることに理由のない胸騒ぎを覚え、アイコンをクリックしてアクションセンターを開いて確認しようとしました。
しかし、全く反応がありません。アクションセンターを開く別の方法としては、アイコンを右クリックして「アクションセンターを開く」を選択する方法や、[Windows]+[A]キーのショートカットキー操作がありますが、これらの方法も全く反応しません(画面1)。
Windows 10の「設定」アプリの「システム」の「通知とアクション」では、通知設定やアクションセンターの下半分にあるクイックアクションの設定を管理できます。この設定をいろいろイジってみても状況は改善しません。
「通知とアクション」で「クイックアクションの編集」をクリックすると、通常であればアクションセンターが「編集モード」で開くはずですが(画面2)、詳細なメッセージは忘れてしまいましたが「Windowsシェルエクスペリエンスホストの再構成を待っている……」のメッセージが表示されるだけで、いつまでたっても編集画面は表示されません。
「イベントビューアー」を見てみると、DCOMエラーでWindowsシェルエクスペリエンスホストの起動に失敗しているというログが多数記録されていました。そして、「タスクマネージャー」に「Windowsシェルエクスペリエンスホスト」のプロセスは存在しません。何かが異常です。Windowsシェルエクスペリエンスホストは、スタートメニューやタスクバー、通知、時計、カレンダー、ストア(UWP)アプリなどの動作で重要な役割を担う、エクスプローラーと同様にWindows 10には欠かせないプロセスです。
「エクスプローラー(Explorer.exe)」プロセスを再起動したり、Windowsを再起動したりしても状況は改善しません。試しに別のローカルユーザーを新規作成してサインインしてみると、そのユーザーでは問題なくアクションセンターを開くことができました。しかし、「新しい通知はありません」と表示されるだけで、問題のユーザーの1件の通知が何なのかを知ることはできません。
新しいユーザーで問題がないということは、問題のユーザーのユーザープロファイル(%LOCALAPPDATA%)にある「Windowsシェルエクスペリエンスホスト」アプリのデータに問題があるようです。
Webを検索して、民間療法をいろいろと試してみましたが、最終的にスタートメニューの表示や他のストア(UWP)アプリの起動を含め、「重大なエラー」が発生するようになり、さらに状況を悪化させてしまいました(画面3)。
Webを検索して、1つ分かったのは、結構な数のユーザーがスタートメニューやアクションセンターが開けなくなるトラブルに遭遇していながら、これで確実に直るという対処方法が見当たらないことでした。ちなみに、筆者が自ら問題を悪化させるまでは、スタートメニューに問題はありませんでした。
先日、Windows Updateの後、再起動が必要だという通知を確かに見たような記憶はありますが、それが前回の更新のことかどうか記憶が曖昧です。筆者はスタートメニューを使うことが少ないため、この状況になったのはつい最近の出来事かもしれませんし、随分前からのことだったのかもしれません。
筆者がPCのデスクトップ環境が壊れてしまうリスクがあるのに、いろいろと民間療法を試してみたのは、別の方法で問題を解消する手段を持っていたからです。
このPCはWindows 10 バージョン2004を実行しているのですが、アップグレード直前のバージョン1909、アップグレード直後のバージョン2004、そしてこの問題に気が付いた少し前のWindows Updateの後、少なくとも3つのチェックポイントを持つ、USB外付けディスクに作成しておいた「フルバックアップ(システムイメージ)」があるからです。
最後の(最新の)バックアップからシステムを回復したところ、問題は解消されました(写真1)。バックアップを取得してから数日しかたっていなかったので、失われたのはWeb検索の履歴くらいで済みました。
「PCのリセット(このPCを初期状態に戻す)」でクリーンな状態にすれば、恐らく問題は解消するでしょう。しかし、ユーザーの設定とデータを維持した状態でのリセットでは問題は解消しない可能性があります。
また、筆者はPCのリセットをあまり信用していません。このPCで問題が発生したのはWindows 10 バージョン2004のPCで2020年8月のことですが、2020年2月にはセキュリティ更新プログラムの問題でPCのリセットがエラーで失敗するようになったり(Windows 10 バージョン1909以前に影響、既に提供停止)、10月には特定のハードウェア構成でPCのリセットがエラーで失敗するというWindows 10 バージョン2004の問題(回避策あり)が明らかになったりしているからです。
Windows 10のフルバックアップ機能(以下の一覧の「システムイメージバックアップ(SIB)ソリューション」)は、Windows 10 バージョン1709で開発終了(非推奨)扱いになりましたが、最新のWindows 10 バージョン2004でも問題なく使えています。フルバックアップがあると、状況を悪化させてしまうかもしれない思い切ったトラブルシューティングができますし、失うものはバックアップ以後の変更だけなので、何より安心感が違います。
Windows 10の推奨されなくなったフルバックアップでバックアップができない、回復用のバックアップがある共有に接続できないなどの問題に遭遇した場合は、本連載の第180回を参考にしてください。成功する方法が見つかるでしょう。
筆者はWindows 10の新しいバージョンが出るたびに、フルバックアップとイメージの復元が機能すること、問題があっても回避策があることを確認するようにしているので、何とかなるはずです。
問題のPCは現在、Windows 10 バージョン20H2(October 2020 Update)に更新され、これといった問題はなく稼働しています。そして、複数の外付けHDDの中には、Windows 10 バージョン1909、バージョン2004、バージョン20H2のそれぞれで取得したフルバックアップを保持しています。何かあっても、最悪、Windows 10 バージョン1909まで戻って回復することができます。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2019-2020)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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