AWSが「Amazon Aurora Serverless」の次期バージョンを発表、SQL Serverからの移行を助ける機能もスケーラビリティを強化、ユースケースも拡大

Amazon Web Services(AWS)は、よりスケールアップが柔軟になった「Amazon Aurora Serverless」の次期バージョンを発表した。併せて「Microsoft SQL Server」ワークロードを「Amazon Aurora PostgreSQL」で実行できる新機能も発表した。

» 2020年12月23日 11時30分 公開
[@IT]

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 Amazon Web Services(AWS)は2020年12月1日(米国時間)、「Amazon Aurora Serverless v2」と「Babelfish for Aurora PostgreSQL」を発表した。

 Amazon Aurora Serverless v2は、「Amazon Aurora Serverless」の次期バージョン。Babelfish for Aurora PostgreSQLは、「Microsoft SQL Server」ワークロードを「Amazon Aurora PostgreSQL」で実行できる機能だ。さらにAWSは、2021年にBabelfish for Aurora PostgreSQLをオープンソース化する計画も明らかにした。

Amazon Aurora Serverlessのメリットとは

 Amazon Aurora Serverlessは、「Amazon Aurora」をオンデマンドの自動スケーリング構成で利用できるサービス。Amazon Auroraは、「MySQL」や「PostgreSQL」と互換性のあるクラウドベースのリレーショナルデータベースだ。

 Amazon Aurora Serverlessは、アプリケーションの使用状況に合わせて自動的に起動し、コンピューティング性能をスケールアップまたはスケールダウンし、不使用時にはシャットダウンする。データベースキャパシティーを一切管理することなく、データベースをクラウドで実行できる。

 データベースキャパシティーを手動で管理すると、手間と時間がかかることはもちろん、データベースリソースの非効率な使用につながる恐れもある。Amazon Aurora Serverlessを使えば、シンプルにデータベースエンドポイントを作成し、オプションで望ましいデータベースキャパシティー範囲を指定した後、アプリケーションを接続できる。

 AWSでは、データベースのアクティブ時におけるデータベースキャパシティーの使用量に応じて、秒単位で利用料金が課金される。「Amazon RDS管理コンソール」から数クリックの操作で、こうしたサーバレス構成と標準構成を切り替えることもできる。

v2で何が変わったのか

 今回発表されたAmazon Aurora Serverless v2は、データベースワークロードを1秒もかからずに数十万トランザクションにスケールアップできる。従来版では、ワークロードのスケールアップが必要になるたびに、データベースキャパシティーを倍増させていたが、新版では、アプリケーションニーズに合わせてキャパシティーをきめ細かく調整し、データベースリソースを適切な量だけ提供できる。

 さらに新版では、ピークキャパシティーのプロビジョニングコストで比べると、データベースコストを最大90%節約できる。

 Aurora Serverless v2は、Amazon Auroraの幅広い機能を全て提供する。その中には、マルチアベイラビリティゾーンのサポートによる高可用性、「Global Database」による低レイテンシ、リードレプリカによる高パフォーマンス、バックトラックによる高いレジリエンシー(復元力)、並列クエリによる高速クエリなどが含まれる。

 AWSはAurora Serverless v2に適したユースケースとして、従来版の可変ワークロードと予測不能なワークロードに加え、新たにエンタープライズデータベースフリート管理、SaaS(Software as a Service)アプリケーションを挙げている。これらの概要は以下の通り。

  • 可変ワークロード
     アプリケーションの使用頻度が低く、ピークは1日に数回または1年に数回、30分〜数時間ほどの場合
  • 予測不能なワークロード
     ワークロードの実行でデータベースを終日使用するが、アクティビティーのピークが予測しにくい場合
  • エンタープライズデータベースフリート管理
     企業が数十万のアプリケーションを持っており、フリート全体でデータベースキャパシティーを管理したい場合
  • SaaSアプリケーション
     それぞれ異なる顧客をサポートする数百または数千のデータベースが稼働するマルチテナント環境を持つSaaSベンダー

 Amazon Aurora Serverless v2は、Amazon Auroraの「MySQL 5.7」互換エディション向けにプレビュー版が提供されている。

Babelfish for Aurora PostgreSQLはSQL Serverユーザーに向く

 Babelfish for Aurora PostgreSQL(Babelfish)は、Microsoft SQL Server向けに作成されたアプリケーションを、コードをほとんど、または全く変更することなく、Aurora PostgreSQLで直接実行できる新機能だ。

 Amazon Aurora PostgreSQL向けの新しいトランスレーション層を提供して、SQL Serverアプリケーションから受け取ったコマンドをAurora PostgreSQLが理解できるようにした。

 レガシーなSQL Serverデータベースからの移行は時間がかかり、多大なリソースを必要とする。AWSデータベース移行サービス(DMS)により、データベーススキーマとデータの移行は自動化できるが、アプリケーション自体を移行するには、多くの場合、データベースとやりとりするアプリケーションコードの再作成など、多くの作業が必要になる。

 Babelfishを使えば、Aurora PostgreSQLが「T-SQL」(Microsoft SQL ServerのプロプライエタリなSQL方言)を理解でき、同じ通信プロトコルをサポートする。そのため、SQL Server向けに作成されたアプリケーションが、わずかなコード変更でAurora PostgreSQLとともに動作する。

 その結果、「SQL Server 2014」以降で動作するアプリケーションを変更し、Aurora PostgreSQLに移行するのに必要な労力を軽減でき、より迅速、より低リスクで、費用対効果の高い移行が可能になる。

 Babelfishは、Amazon Auroraに組み込まれた機能であり、追加コストは不要だ。Amazon RDS管理コンソールから数クリックの操作で、Amazon AuroraクラスタでBabelfishを有効にできる。

 AWSは2021年に、BabelfishをオープンソースとしてGitHubで公開する計画だ。オープンソースのBabelfishでは、Apache 2.0ライセンスを採用する予定だ。

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