IDCは2021年2月23日、全世界の人工知能(AI)市場について、予測を発表した。AIソフトウェアやAIハードウェア、AIサービスを含む調査であり、「Worldwide Semiannual Artificial Intelligence Tracker」により詳しい報告をまとめた。
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IDCは2021年2月23日(米国時間)、全世界の人工知能(AI)市場について、予測を発表した。AIソフトウェアやAIハードウェア、AIサービスを含む調査であり、「Worldwide Semiannual Artificial Intelligence Tracker」により詳しい報告をまとめた。
AI市場全体の売上高は、2011年に2020年比16.4%増の3275億ドルに成長するという。2024年までの5年間の年間平均成長率(CAGR)は17.5%となり、総売上高は5543億ドルに達すると予測した。
ソフトウェア、ハードウェア、サービスの3つの部門のうち、2020年のAI市場では、ソフトウェアだけで総売上高の88%を占めていた。ただし、今後5年間のCAGRは17.3%であり、最も成長が遅いカテゴリーだという。
ソフトウェアをさらに細分化すると、2020年にはAIアプリケーションが50%を占めた。成長率ではAIソフトウェアプラットフォーム市場が最も高く、5年間のCAGRが32.7%と予測した。最も低いのはAIシステム基盤ソフトウェアで、5年間のCAGRは13.7%にとどまる。AIシステム基盤ソフトウェアはAIソフトウェアの売上高の約36%を占める。AIアプリケーション市場の中では、AI ERM(AI Enterprise Risk Management)が今後5年間でAI CRM(AI Customer Relationship Management)よりもやや成長が早いと予想した。
IDCのAIリサーチ担当プログラム・バイス・プレジデントであるリツ・ジョティ(Ritu Jyoti)氏は「世界的なパンデミックにより、AIは企業のアジェンダのトップに押し上げられ、ビジネスの回復力と関連性を強化している」と述べている。
「AIはビジネスのあらゆる機能分野でユビキタスになりつつある。機械学習や会話型AI、コンピュータビジョンAIの進歩は、AIソフトウェアのイノベーションの最前線にあり、ビジネスとITのプロセス最適化、予測と推奨を統合的に構築し、顧客と従業員の体験を変革することを可能にしている」(ジョティ氏)
AIサービス部門は、2020年の成長率が13%であり、AI市場全体よりも伸び率が低い。しかし、2021年には前年比17.4%の成長が見込まれており、AI市場全体を約1ポイント上回っている。今後の5年間のCAGRは18.4%であり、2024年までに売上高は379億ドルに達すると予測した。
IDCはAIサービスを2つの市場セグメント(ITサービスとビジネスサービス)に分けている。ITサービスの方が市場は大きく、AIサービスの売上高の約80%を占めている。成長の観点からみると、2024年を除き、AI向けITサービスはAI向けビジネスサービスよりも成長が速い傾向にあり、AI向けビジネスサービスはAI向けITサービスとAIサービス市場全体の両方をわずかに上回ると予測した。
同社のアナリティクス&インテリジェント・オートメーション・サービスのリサーチ・マネージャーであるジェニファー・ハメル(Jennifer Hamel)氏は次のように述べている。
「パンデミックの影響でAIサービス市場の成長の勢いは落ちたものの、ビジネスの回復をサポートし、人間の生産性を向上させるためのAI機能に対する企業の需要は、他の裁量的なプロジェクトが遅延するとしても、2020年には2桁の成長を維持した」(ハメル氏)
「AIアプリケーションの開発、実装、管理の技術的な専門知識に対する顧客の需要が、ITサービスの拡大を後押しした。他方、ビジネスプロセス内でのAI対応自動化の採用が増加していることが、ビジネスサービスへの支出を押し上げている」(ハメル氏)
Worldwide Semiannual Artificial Intelligence Trackerでは、AIサービス市場のベンダー企業160社を網羅している。AI向けITサービスについて、2020年上半期の上位3社はIBM、Accenture、Infosysだという。いずれも、AI向けITサービスの収益が5億ドルを超えており、3社の市場シェアは合計28%だった。
上位3社以外の13社は、同期間にそれぞれ1億ドル以上の収益があった。
AI向けビジネスサービス市場について、2020年上半期に1億ドル以上の収益を上げた企業は、Ernst & Young、PwC、Deloitte、Booz Allen Hamiltonの4社だという。
全体的に見ると、両サービス市場におけるAIの競争環境は非常に細分化されていた。サービスバリューチェーンにいる全てのプレイヤーは、テクノロジー資産やイノベーションリソース、AIを適用してクライアントの業界やドメイン固有の問題を解決するための専門知識へ投資を続けているという。
AIハードウェア市場はいまだ小さく、売上高をみると2020年時点でAI市場全体に占める比率が約5%だった。2021年にはAIソフトウェアを押しのけて微増すると予測した。
2020年にはAIサーバ市場がAIストレージ市場を上回る成長を遂げたが、2021年にはAIストレージ市場が前年比31.8%の成長を遂げると予測した。これに対し、AIサーバ市場は26.4%の成長を遂げるという。2024年までには、AIハードウェア市場の売上高は305億ドルに成長し、全体の収益のうち、AIサーバが82%を占めると予測した。
IDCのリサーチディレクターであるPeter Rutten(ピーター・ルッテン)氏は次のように述べている。
「AIサーバとAIストレージ市場は急速な成長を続けており、AI市場全体の下で、ますます専門化された革新的なインフラを提供している」
2020年上半期のベンダーごとのシェアをみると、AIサーバ市場のトップ企業はDell、Hewlett Packard Enterprise(HPE)、Huawei、IBM、Inspur、Lenovo(アルファベット順)だった。これらの企業はそれぞれ2020年上半期に2億5000万ドル以上の収益を上げており、これら6社を合わせて市場の58%を占めている。残りのうち30%はODM(Original Design Manufacturing)に流れている。
IDCの調査の対象となっている企業の数はそれぞれの市場で同じだが、AIサーバ市場の競争状況は、2020年上半期に上位3社が49%の市場シェアを占めていたAIストレージ市場よりも細分化されているという。
IDC Worldwide Semiannual Artificial Intelligence Trackerは、半年ごとにAIベンダーのシェアと市場予測データを発表している。ベンダーの製品や市場、ワークロードのモデリングを含むIDCの包括的な方法論に基づいて構築されたサーバやストレージ、ソフトウェア、サービスなど、全ての主要なテクノロジー分野のデータと洞察を提供しているという。
現在、650社以上のベンダー企業がTrackerに掲載されており、3つのテクノロジーカテゴリー全てにおいて競争状況が十分に表現されているとした。2021年1月版では、国レベルの詳細を初めて掲載しており、27の国と5つの地域のデータを購入できる。次回は2021年7月に新版を公開する予定だ。新版ではソフトウェアの展開タイプやソフトウェア分野の市場の粒度をより詳細に紹介するなど、Trackerの詳細を拡大していく予定だという。
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