2021年に持続可能なアプリケーションデリバリーを実現するための必須スキルGartner Insights Pickup(198)

アプリケーションリーダーは、組織がビジネスニーズに対応していけるように、アプリケーション基盤のレジリエンス(回復力)とサステナビリティ(持続可能性)に重点を置き、アプリケーションチームを進化させていく必要がある。

» 2021年03月12日 05時00分 公開
[Peg Ventricelli, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 2020年に組織が学んだ教訓は、ディスラプション(破壊的変化)への適応は死活的に重要だということに尽きる。新型コロナウイルス感染症の大流行(パンデミック)に伴い、サプライチェーンが混乱し、世界中の国々がさまざまなロックダウン(都市封鎖)措置の実施と解除をそれぞれ段階的に行い、国によってはこれらを繰り返すのに至り、組織は急きょ、生き残りを優先しなければならなくなった。

 現在の困難な状況に対処するには、組織はアプリケーションのプラットフォームとアーキテクチャのレジリエンス(回復力)、サステナビリティ(持続可能性)を高め、進化を続けてビジネスニーズに対応していく必要がある。

 アプリケーションデリバリーの最適化では、継続的な進化が常に焦点となってきたが、デジタルトランスフォーメーションを実践し、既存アプリケーションをモダナイズし、イノベーションを起こすには、分散アーキテクチャや統合パターン、クラウドプラットフォーム技術のスキルが極めて重要になる。

 「持続可能なアプリケーションデリバリーを実現するには、効果的なガバナンスとアーキテクチャを活用する力、関連するスキルを、アーキテクチャとプラットフォームに適用する必要がある」と、Gartnerのアナリストでバイスプレジデントのブラッド・デイリー(Brad Dayley)氏は語る。

 2021年にアプリケーションリーダーは、アプリケーションデリバリーを反復可能で効果的、効率的にするために、その最適化と高度化を進める必要がある。アプリケーションチームが以下の課題にフォーカスして、継続して学ぶことが重要になる。

  • 強力なアジャイルアーキテクチャ:チームはアプリケーションのコンポーネント(個々のアプリ、API、サービスなど)について、それぞれ独立したペースで最適な技術を使い、デリバリーを実現するスキルを持っているかどうか
  • DevOps:アプリケーション担当者は、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)をサポートするオペレーションと効果的なツールチェーンを実現できるかどうか
  • クラウドネイティブなスキル:チームは、クラウド環境ですぐにデプロイ(展開)し運用できるアプリケーションを設計、構築、統合、運用できるかどうか

 これらの分野でスキル基盤を作ることで、アプリケーション担当者は、新しいアーキテクチャや統合技術、プラットフォーム、パターンが登場したときに、それらを現実的かつ実践的に評価できる。

 だが、組織やアプリケーションチームが、将来の新しい課題に柔軟かつ適応的に対応するには、もっと多くのものが必要になる。

アプリケーションアーキテクチャの適応とモダナイズ

 ユーザーニーズや顧客の期待、ビジネスモデル、プロセス、アプリケーションデリバリー要件など、これらの変化は、ビジネス運営の見直しを迫る本質的な課題だ。だが、パンデミックが見直しの必要性を大幅に加速させた。

 適切なスキルと技術を持つアプリケーションアーキテクトおよびデリバリーチームは、自社が前進し、こうした大きな課題に適宜対応して、困難を乗り切る支援に成功してきた。

 逆に、スキル不足のアプリケーションデリバリー担当者は、必要な移行ができずにいる。この移行は、ビジネスニーズへの対応やデリバリーペースの加速、コストの最適化、アプリケーションのスケールアップによる要求の増大に対応するために必要なものだ。

スキルの優先順位付け

 アジャイルアーキテクチャやDevOps、クラウドネイティブアプリケーションのスキルを持つアプリケーションチームは、実際のビジネスニーズとアプリケーションニーズに基づいて、スキルに優先順位を付ける必要がある。また、ビジネスにおける有効性を考慮して、必要な追加のスキルを判断する際は、次の問いをたててみる。

  • このスキルは、既に自社で重要と見なされているかどうか
  • このスキルは現在、チーム内や自社で不足しているかどうか
  • このスキルを自分の現在の役割にどう生かせるか
  • このスキルによって、担当している製品で自分の現在の役割を広げられるかどうか
  • このスキルは、社内で承認され、進行しているモダナイゼーション/イノベーションの取り組みに必要かどうか

 自信を持って明確に「はい」と答えたり、説明できたりする場合は、必要な追加のスキルと言えるが、不確かな部分があるスキルは避ければよい。

経験と知識の獲得

 スキルの習得に成功するには、知識と経験のバランスを取る必要がある。知識を詰め込み過ぎるのは危険だ。いつ、なぜそうするのかを経験で理解することなく、物事のやり方を知ってしまうからだ。また、経験を通じてのみスキルを学ぶのは、大変な労力が掛かる。

 目指すスキルの内容と個々人の学習スタイルに応じて、さまざまな学習活動が可能だ。例えば、チュートリアルやオンラインコース、ブートキャンプ、カンファレンス、概念実証(PoC)、読書会、ランチセミナーといった具合だ。社内でこれらの機会を探し、利用するとよい。機会がなければ、自分から動いて適切なときに機会を設ける。ただし、実践的な経験を提供し、知識と経験の両方が得られる活動を常に優先すべきだ。その例として、次のようなものがある。

  • 実践コミュニティー
  • PoC/プロトタイプ
  • ペアを組んで行うプログラミング、設計、アーキテクチャ
  • チームローテーション/共有

 こうした活動は、アプリケーションアーキテクチャや統合の担当者に、次のようなさまざまなメリットをもたらす場合が多い。「これらの担当者が実世界の問題に集中することを可能にする」「通常のワークフローに統合されるので、学習時間を確保する必要がない」「多くの場合、結果が本番アプリケーションで使用される」

継続して学ぶ文化

 成功している組織のほとんどは、継続して学ぶ文化を奨励、支援しており、新しいスキルを学ぶ時間や機会を技術担当者に提供している。継続して学ぶ文化は、個人がスキルを伸ばすために、さまざまな活動を可能にする土台となる。

 アプリケーションアーキテクチャや統合の担当者は、こうした活動に参加したり、自らこうした活動を企画、立ち上げ、促進したりすることで、この文化に貢献する。社内に新しいスキルを学ぶ時間や労力を問題視する見方がある場合、それを克服するには、学習活動による価値ある測定可能な成果を定義するとよい。

 技術スキルだけでなく、ソフトスキル(時間を管理する、人の話を聞くなど)を磨くために時間をかけることも重要だ。

出典:Mandatory Skills to Sustain Application Delivery in 2021(Smarter with Gartner)

筆者 Peg Ventricelli

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