スマホゲームで「手の疾患の有無」を推定する方法を開発 慶應大学の杉浦准教授ら専門家がいない環境でも手根管症候群をスクリーニング可能

東京医科歯科大学の藤田浩二講師と慶應義塾大学の杉浦裕太准教授の研究グループは、ゲームを操作する親指の軌跡を機械学習によって解析することで、手根管症候群を簡便にスクリーニングする方法を開発した。

» 2021年03月18日 08時00分 公開
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 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科の講師を務める藤田浩二氏と慶應義塾大学理工学部の准教授を務める杉浦裕太氏の研究グループは2021年3月15日、スマートフォンゲームを使って手根管症候群をスクリーニングする方法を開発したと発表した。ゲームを操作する親指の軌跡を機械学習によって解析する。

画像 ゲーム画面(出典:慶應義塾大学

親指の軌跡データから疾患の有無を推定

 手根管症候群を患うと、疾患の悪化に伴って親指の動きが悪くなる。研究グループはこの点に着目して、親指を使って操作するスマートフォン用のゲームアプリを開発し、ゲーム中の親指の軌跡データから機械学習によって疾患の有無を推定するプログラムを作成した。

 このプログラムは「異常検知手法」を用いており、疾患保有者のデータが蓄積されていなくても、手根管症候群のない被験者12人のデータから疾患の有無を予測できるという。研究グループは「30秒から1分程度の簡単なゲームをするだけで手根管症候群の可能性を検査できる。自宅や保健所など専門家がいない環境でもスクリーニングできるようになる」としている。

画像 ゲーム中の親指の動き(出典:慶應義塾大学

 構築した推定モデルを、症状のない別の被験者15人と、手根管症候群患者36人のデータに適用すると「感度が93%、特異度が69%、AUC(Area Under the Curve)が0.86という結果が得られた。これは、形外科専門医が身体所見によって診断した場合と同等かそれ以上の精度だ」という。

 手根管症候群は、手首の神経が圧迫されることで、手のしびれや指の動きにくさを引き起こす疾患。正確な診断には高価な機器と専門的な技術が必要で、専門知識や技術がなくても検査できる、簡便なスクリーニングツールが求められていた。

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