阿部川 コロナ禍で、仕事の進め方などに大きな影響はありました。
タケオさん IT業界は、コロナの影響に一番対応しやすい業界ではないかと思います。基本的にPCとインターネットがあれば仕事ができますから。
とはいえ、コロナが感染拡大しつつあった早期の段階で、BEENOSから「今後は皆在宅勤務でいいです」と言ってもらったことには、とても感謝しています。社員を守ることで会社を守り、またそれは社会を守ることにつながる。その意味では「仕事に影響はない」と言えると思います。
阿部川 10年後にタケオさんは何をやっていらっしゃるでしょうか。
タケオさん やりたいことはたくさんあります。1番大きな目標は、イノベーションを通じて社会に貢献することです。また、なぜ自分が日本に来たのかを考えると、それ自体がチャンスなので、それをより生かした会社経営をしたい。具体的には、誰でも、好きなときに、好きなところで仕事ができる、そんな環境を会社に作りたいと思います。
日本オフィスでは現在でもある程度実現していますが、ベトナムオフィスにも広げたい。また私のように来日して仕事がしたい人に支援も行いたいと思っています。さらに、今後ITはもっともっと社会の基盤になっていくので、ITの力で世界の問題を解決できるようなサービスを開発したいです。自分で全て開発しなくとも、案件の一部をお手伝いすることで、全体として社会に対して貢献することも、素晴らしいと思っています。
現在、日本の技術者不足を海外からの技術者に支援してもらうプロジェクトを行っています。このような貢献はもっとできるし、もっと良いサービスを付加することもまだまだできると思っています。
阿部川 今でも日本が好きですか?
タケオさん はい。日本の武道がとても好きです。日本の食べ物も大好きで、特にお刺し身が好きです。日本の歴史も大好きで、特に明治維新からの明治、第二次世界大戦の後、この2つの時期に大変興味があって、本やWikipediaで学んでいます。日本の歴史の中でも激動の時期で、とても興味深いと思います。日本は私の第二の故郷です。
阿部川 最後に、日本の若いエンジニアたちにメッセージをいただけますか。
タケオさん これは個人的な考えですが、日本には、世界的にも高い教育環境で育った素晴らしいエンジニアがたくさんいると思います。アクセンチュアの先輩後輩にもたくさん優秀な方々がいらっしゃいました。でも私から見ると、皆さんは、いつもちゃんとした状態というか安全な場所にいるように思えます。
もっとイノベーションが必要ではないでしょうか。私は、日本の方々は、もっとオープンに、そしてもっと枠を取り払うようなイノベーションを行える方々だと思います。私はそう信じています。
イノベーションを行うためには、心を開いていくといいと思います。日本に、特に東京には、外国人がたくさんいます。でも外国人の間では、日本人の友達を作るのは難しいといわれてきています。もうちょっと心を開いて、たくさんの外国人の友達ができれば、考え方もだんだん変わってくる、そうすると自然に枠の外に出ることができる。そんな小さなことの積み重ねが、大きな効果につながると思います。
私が尊敬する浜野製作所の浜野慶一CEOは、起業は「まずやってみる。ダメなら元に戻ればいいだけ」と言い、しかし「事業の目的がフラつく人は逆境に弱い」とも教えてくれる。タケオさんほど事業の目的が真っすぐな人も実は稀有(けう)だ。起業の理由をたずねると、「日本とベトナムへの恩返し、社会に対する貢献」とよどみなく答えてくれた。すがすがしかった。
どんなに貧しくとも、親は何とかして子どもたちのために生計を豊かにしようと身を粉にして働き、子どもはその背中を見て真っすぐに育つ。戦中戦後の日本も、そんな真っすぐが当たり前の国だったはずだ。日々の売り上げや市場での競争に翻弄(ほんろう)されることはビジネスでは当たり前のこととしても、同時に、100年先のドラえもんへの夢を見失わないことこそ、尊敬してくれる国々の方への、私たちの責務ではないだろうか。
アイティメディア 事業開発局 グローバルビジネス戦略室、情報経営イノベーション専門職大学(iU)教授、インタビュアー、作家、翻訳家
コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時より通訳、翻訳も行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在情報経営イノベーション専門職大学教授も兼務。神戸大学経営学部非常勤講師、立教大学大学院MBAコース非常勤講師、フェローアカデミー翻訳学校講師。英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行うほか、作家、翻訳家としても活躍中。
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