フロントエンドだ、Javaエンジニアだ、なんてタイトルはいらない。男女の区別もいらない。やりたいこと、楽しいことに向き合う、ただそれだけでいい。
国境を越えて活躍するエンジニアにお話を伺う「Go Global!」シリーズ。日本のアニメ「NARUTO -ナルト-」などのデジタルコンテンツの開発、集約、配布をクロスメディアで提供しているベトナム企業「POPS Worldwide」で、Data Science Leadとして活躍しているAmy Dang(エイミー・ダン)さんのインタビュー、前編は、農村の内気な少女がPCに魅せられ、大学でデータ分析のスペシャリストとしてさまざまな研究を行うようになるまでをお届けした。
後編は、大学卒業後の起業経験(意外にもIT関連ではない!)や現在の仕事について、そして女性エンジニアを増やすために必要だとダンさんが考えていることなどを伺った。
阿部川“Go”久広(以降、阿部川) 大学院を修了された後、すぐにIT企業に就職したのですか。
Amy Dang(エイミー・ダン、以降ダンさん) いえ、実は会社を経営していました。マスターで勉強していたとき、何か違うことを、具体的には医療用品などを扱うビジネスをしたいと思うようになりました。いきなり大規模な商売は無理なので、まずは小さなパッケージの薬の販売を、100ドルの手元資金で始めました。勉強の合間にFacebookページを開設し、オンラインで販売を始めました。典型的なSOHO(Small Office/Home Office)でした。
最初は一般消費者に、その後ドラッグストア向けにも販売しました。ビジネスは結構順調に成長し、利益率も良かったのですが、家族全員を養うには足りませんでした。兄弟に多少手伝ってもらいつつ1人でやっていましたが、学業との両立もあり、3年後に弟にビジネスを譲りました。しかしコロナの影響が大きく、弟は2020年に会社を畳んでしまいました。
阿部川 ビジネスを辞めた後はどうされたのですか。
ダンさん 薬の販売をしていたときから、別にIT関連の仕事もしていましたので、それに集中することにしました。最初はドイツ系企業で、その後「East Agile」で働きました。
East Agileは米国資本のスタートアップ企業なので、最初の製品を開発して市場に出すことが必要でした。データサイエンティストとしてエンジニアチームをサポートするのが私の仕事です。1年半ほどその仕事を行い、その後シニアソフトウェアエンジニアに昇格しました。
East Agileはそれまでデータサイエンスや機械学習(マシンラーニング)に関する経験がなかったのですが、ブロックチェーンを用いた製品の開発を目指しており、そのために私のAIやマシンラーニングの知識が生かせると社長が考えたからです。会社にはデータそのものは多くありましたが、それを解析したり、統合したりするスキルが足りなかったのです。
阿部川 現在働いているPOPS Worldwideでは、Data Science Leadという肩書ですが、具体的にどのようなことを行っているのですか。
ダンさん 私が入社した2020年6月当初のPOPS Worldwideは、ストックされたデータはほとんどないし、データサイエンティストもいませんでした。そこでまず、YouTubeを中心にデータを適切に収集することから始めました。
その後、集めたデータを解析し、ビジネスチームにプレゼンテーションし、ビジネス分野への応用を協議しました。この数字はどのような意味を持つのか、生のデータをどのように分析するとビジネスと連動する意味のあるデータになるのか、などをディスカッションしたのです。
当時POPS Worldwideは、YouTubeなどを介することなく、ユーザーにビデオストリームを直接届けるプロダクトを計画していました。そこでマシンラーニングのテクノロジーを使って、ビデオだけではなく、アニメやコミックなどのレコメンデーションを行えるようにしました。
他にも、オートデータエンジニアリングや、データを可視化するためにアプリケーションから直接生のデータを入手して分析する手法などを開発しました。ビッグデータの分野も注力していて、1回で数百〜数千GBのデータを処理し、解析するにはどうしたらいいのかなどを検討しています。単にデータのボリュームだけではなく、転送の速度など、多岐にわたって検討しています。
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