「1」コード表の表示について
(コード表表示については、ユーザー企業が)設計(実質的には詳細要件定義)していることが認められるが、ITベンダーとしては専門技術的見地から統一性・拡張性を備えたシステムになるようサポートする義務があり、ユーザー企業の設計を漫然と使用したことは右(上述の)義務を怠ったものといわねばならない。よって、被告は原告が作業コードを円滑に入力できるよう設計する義務があったのにこれを怠ったといえ、債務不履行になるといえる。
「2」口座振替一覧表の不備について
(証拠略)によれば、ユーザー企業が口座振替一覧表を設計(実質的には詳細要件定義)していることが認められるが、ITベンダーとしてはこれが銀行に提示して振替を行うことができるかどうかを検討し、適正なものを作成するようサポートする義務があり、これを怠ったといえる。
裁判所はベンダーの主張をしりぞけ、ユーザー企業勝訴となった。
この裁判所の判断はかなり思い切ったものではないかと思う。前述した通り、システムの要件定義は通常、ユーザーが責任を持って行うものであり、このプロジェクトにおいてもベンダーは「サポートするのみ」と決まっていた。
結局のところ、契約の目的も、システムを利用する人間のスキルや業務の流れや悩みも、一番よく知っているのはユーザー企業自身のはずだ。裁判所のいう専門技術的見地など持ち合わせていなくても、この程度の要件を定めることはユーザーだけで十分にできたのではないかというのが正直な感想ではある。
だが、裁判所の判断は上記の通りだ。「専門技術的見地」とは、導入したシステムを使ったら、操作者がどのように困り、生産性を落とすのかまで考慮する、という一種の想像力も含まれると考えた方がいいのかもしれない。
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