私が決めた要件通りにシステムを作ってもらいましたが、使えないので訴えます「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説(88)(2/5 ページ)

» 2021年05月26日 05時00分 公開

契約の目的と要件のズレが生んだ争い

 まずは事件の概要を見ていこう。

広島地方裁判所 平成11年10月27日判決

一般廃棄物の収集運搬処理を業務とするユーザー企業は、それまでバラバラに構築され運用されていた給与計算、販売管理などの業務系システムを統合し、これらを一括処理できるシステムの構築をベンダー企業に依頼した。

ところが開発されたシステムには多数の不具合が発生し、使用に耐えないものであったため、ユーザー企業はベンダー企業に対して損害賠償を請求し裁判となった。

尚、開発はベンダー企業が行ったが、要件定義についてはユーザー企業が行った。しかしユーザー企業にはITに関する知見が不足していたため、ベンダー企業がこれをサポートした。具体的にはユーザー企業が作成した「システム要求書」に対しベンダー企業が助言、提言を行い、ユーザー企業はそれを取捨選択しながら仕様を固めていくというものだった。

 このシステムには多数の問題が発生したが、今回は以下の2つの点を考える。

1 コード表の表示について

 操作者がある項目に入力する作業コードを検索する際、画面に6件しか表示しない。実際の作業コードは数百件以上と膨大にあり、目的のコードを見つけるまでに50回程度画面を切り替えなければならず、実用的ではない。

2 口座振替一覧表の不備について

 顧客企業に対して自動振替での入金を請求する際、このシステムの請求では「口座振替一覧表」を表示する仕様となっているが、画面には相手方口座の名義人、口座番号、銀行支店名などを表示するだけで、振替金額、振替日などの情報が含まれないので、実質的に取引銀行に対し口座振替を依頼することができない。

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