これまでWindows Server Insiderプログラムを通じて提供されてきた長期サービスチャネル(LTSC)版Windows Serverの次期バージョン「Windows Server 2022」のプレビュー版が、評価版センターから入手可能になりました。
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Microsoftは2021年6月1日(米国時間)、「Microsoft Evaluation Center」(評価版センター)で「Windows Server 2022 Preview」の180日評価版が利用可能になったことを発表しました。Windows Server Insiderでは2021年5月下旬にアナウンスされており、実際には5月24日(米国時間)から利用可能になっています。
Windows Server 2022のプレビュービルドのISOイメージはこれまで、Windows Server Insiderプログラムの参加者に対し「Windows Server Insider download center」を通じて提供されていました。Microsoft Evaluation Centerで提供が開始されたことで、Windows Server Insiderプログラムに参加していないITプロフェッショナルもLTSC(Long-Term Serving Channel:長期サービスチャネル)版Windows Serverの次期バージョンをオンプレミスで評価できるようになりました。Windows Server 2022 Previewのバージョンは「21H2」、OSビルドは「20348」になります。
数年ごとにリリースされるLTSC版であるWindows Server 2022は、2018年10月リリースの現行バージョン「Windows Server 2019」の次のバージョンであり、2021年下半期の正式リリースを予定しています。LTSC版は「デスクトップエクスペリエンス」と「Server Core」の2つのインストールタイプを提供し、10年という長期サポートが提供されます(画面1)。一方、「半期チャネル(SAC)」のWindows Serverは、「Server Core」のみが提供され、18カ月のサポートとなります。
Windows Server 2022 Preview(ビルド20384)のデスクトップエクスペリエンスインストールは、一見するとWindows Server 2019をベースに「Windows 10」の次期バージョン「21H2」と新しいGUI(「設定」アプリのアイコンなど)を搭載したもののように見えます(画面2)。
真新しいことといえば、デスクトップエクスペリエンスにChromium版の新しい「Microsoft Edge」が標準搭載されていることです。Windows ServerとWindows 10のLTSC版にはMicrosoft Edge(既にサポートが終了し、Windows 10から削除されたEdgeHTMLベースの古いMicrosoft Edge)は新機能という扱いで搭載されませんでした。
「Windows 8.1」およびWindows 10のSACにおける「Internet Explorer(IE)」のサポートが、「2022年6月15日」に終了することが発表されています。ただし、LTSC版のWindowsは対象外であり、IEは引き続きサポートされることになりますが、Windows Serverで利用可能なブラウザが「標準でIEだけ」という制約(特に、リモートデスクトップサービス環境でのブラウジング環境)はなくなります。また、Windows Server上でもMicrosoft Edgeの「IEモード」という互換環境が利用できるようになります。
Windows Server 2022 PreviewのServer Coreインストールでは、「Sconfig」ユーティリティーがログオン後に自動開始するように変更されました。また、これまでのWindows Script Host(WSH)ベースのもの(Sconfig.cmdおよびja-jp\Sconfig.vbs)からPowerShellベースのもの(Invoke-Sconfigなど)に刷新されています(画面3)。
Windows Server 2022 Previewでは、Windows Serverのサーバとしての機能や役割に追加されたものや削除されたものは見当たりません。これまでに明らかになっている新機能は、2020年8月と9月にリリースされたビルド「20201」および「20206」のアナウンスの中で触れられたものだけです。
具体的には、ネットワークパフォーマンスの改善、コンテナおよびKubernetes向けの機能強化、Server Coreコンテナイメージのさらなる縮小、「フェールオーバークラスタリング」機能強化、SMB(Server Message Block)プロトコルのパフォーマンスとセキュリティ強化などで、Windows Server 2019からの大幅な変更はないようです。
Windows Server 2022には、Windows Server SACのバージョン1903以降に実装された新機能が搭載されて登場する予定です。そして、Windows Server SACに実装済みの機能は、Windows Server 2022の新機能の一覧には含まれない可能性があります。
例えば、「Windows Server, version 2004」では本物のLinuxカーネルで動く「Windows Subsystem for Linux 2(WSL 2)」がサポートされました。Windows Server 2022の古いプレビュービルドではWSL 2が動作しましたが、現在のビルドではWSL 2をセットアップできないことがユーザーからのフィードバックなどで報告されています。
Windowsの今後のバージョンでは「wsl.exe --install」で簡単にWSL 1またはWSL 2の環境をセットアップできるようになる予定で、その一部が現在のプレビュービルドに既に実装されています。
しかし、現在のビルド「20284」(過去のビルドも同様)で「wsl.exe --install」を実行すると、「Ubuntu」がWSL 1でセットアップされ、WSL 2に切り替えるオプションは全てヘルプ表示(「wsl.exe --help」と同じ)になってしまう状況です(画面4)。もし、Windows Server 2022 PreviewでWSL 2を評価したいと考えている場合は、ご注意ください。
Microsoftは2022年3月2日(米国時間)から、「Microsoft Azure」の仮想マシンでWindows Server 2022のInsider Previewビルドを評価できるように、「Microsoft Server Operating Systems」オファーの提供を開始しました(画面5)。
2022年6月1日(米国時間)現在、このオファーで提供される「Windows Server 2022 Datacenter」イメージは2021年3月末にリリースされたOSビルド「20324」がベースになっています(画面6)。これは、Windows Server 2022 Preview評価版よりも“古いOSビルド”であることに注意してください。今後、同じイメージでより新しいOSビルドのものが提供されることになるでしょう。
2021年6月7日時点でOSビルド「20348」ベースの「Windows Server 2022 Datacenter」イメージが利用可能になっています。また、2021年6月24日(米国時間)、「Windows Server 2022 Datacenter: Azure Edition(Desktop experience)」のパブリックプレビューが幾つかのリージョンで利用可能になったことが正式に発表されました。
「Windows Server 2022 Datacenter: Azure Edition(Core)」は2021年7月12日(米国時間)に利用可能になる予定です。Azure Editionは再起動の回数を抑制できるホットパッチ(プレビュー)対応のイメージです。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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