2023年3月に「仮想マシン(クラシック)」が終了、Azure Resource Managerにできるだけ早く移行をMicrosoft Azure最新機能フォローアップ(133)

Microsoftは、2023年3月1日にMicrosoft AzureのIaaSにおける「仮想マシン(クラシック)」の提供を終了します。まだ2年ありますが、もう2年しかないとも言えます。「仮想マシン(クラシック)」で複雑な環境を運用している場合は、テストや移行に時間を要するかもしれません。速やかに移行の検討を開始した方がよいでしょう。

» 2021年02月04日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]

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Microsoft Azure最新機能フォローアップ

2023年3月1日までに「仮想マシン(クラシック)」のARMへの移行が必要

 Microsoftは2014年から、それまでの「Azure Service Manager」または「Azure Service Management」(ASM)と呼ばれるデプロイモデルを置き換える「Azure Resource Manager」(ARM)でのIaaS(Infrastructure as a Service)を開始しました。

 ASMベースを「仮想マシンV1」、ARMベースを「仮想マシンV2」と呼ぶこともありますが、現在の標準であり、推奨されるのはARMベースの仮想マシンです。ASMベースは「仮想マシン(クラシック)」と呼びます。

 「仮想マシン(クラシック)」は、2020年2月末から新規作成ができなくなっており、ASMを介した管理もそれ以降、非推奨になりました。非推奨であっても、作成済みの「仮想マシン(クラシック)」は引き続き利用可能ですが、「2023年3月1日」にはサービスが完全に廃止される予定です。

 2023年3月1日には、「仮想マシン(クラシック)」は起動できなくなり、稼働中のものは停止され、割り当てが解除されます。その後、「仮想マシン(クラシック)」が残っているサブスクリプションに対しては、リソースが削除されるまでのタイムラインが通知されることになっています。

 比較的シンプルなデプロイ環境の場合は、Azureポータルの「仮想マシン(クラシック)」ページにある「設定」の「ARMへの移行」から、数クリックで簡単かつ短時間で移行することができます(画面1)。

画面1 画面1 「設定」の「ARMへの移行」から仮想ネットワーク単位の移行を開始する

 移行は選択された仮想マシンが接続されている仮想ネットワークに、同様に接続された全ての仮想マシンに対して一括で実施されます。事前検証で問題がない場合、移行は完全に自動で行われます。

 まず、ステップ1ではリソースの移行が可能かどうかが検証されます。このとき、仮想ネットワークに接続される全ての仮想マシンとそれにひも付いた「クラウドサービス」が移行対象としてリストアップされます(画面2)。

画面2 画面2 同じ仮想ネットワークに接続される全ての仮想マシンが移行対象としてリストアップされる

 ステップ2では、「クラウドサービス」に依存せず、「リソースグループ」に依存するARMベースの仮想マシンのために、移行先となるリソースグループ名(以前の「クラウドサービス名-Migrated」)が準備(まだ作成されていません)されるので確認します(画面3)。

画面3 画面3 ASMベースの仮想マシンは「クラウドサービス」に、ARMベースの仮想マシンは「リソースグループ」に依存するため、移行先のリソースグループ名を確認する

 最後のステップ3で「はい」と入力して、「コミット」をクリックします。筆者の3台の仮想マシン(割り当て解除済み)の場合、15分以内に移行が完了しました。以前の「クラウドサービス」は削除され、新しい「リソースグループ」に仮想マシンが移行されます。仮想マシン名や仮想ネットワーク名など、その他の名称は以前のものが引き継がれました(画面4)。

画面4 画面4 割り当て解除済みの仮想マシンの場合、わずか15分ほどで移行が完了

 ARMベースの仮想マシンへの移行が完了したら、起動して問題がないかどうかを確認します。ARMベースに移行することで、ASMで利用できなかったさまざまな新機能が利用可能になります。

 例えば、仮想マシンのディスクを「マネージドディスク(Managed Disks)」に移行すれば、仮想マシンのサイズをよりコストが抑えられ、パフォーマンスの優れたものに、柔軟に変更することができるでしょう。ASMベースの仮想マシンは、何年も前にデプロイされたものが多いでしょう。移行のタイミングでサイズを最適なものに変更すれば、毎月の課金コストを抑制しながら、性能を向上させることができます。

「クラウドサービス」に依存するその他のデプロイも早めの移行の検討を

 2023年3月1日のIaaSにおける「仮想マシン(クラシック)」、つまりASMの廃止は、「クラウドサービス」、仮想マシン(クラシック)で使用されていない「ストレージアカウント」と「仮想ネットワーク」、およびASMでデプロイされたその他のクラシックリソースには影響しません。

 AzureのPaaS(Platform as a Service)の一部は、以前としてASMベースです。「クラウドサービス」にひも付く、IaaS仮想マシン以外のロール(Web、Worker)はASMベースです。

 Microsoftは、2021年1月25日に「クラウドサービス(延長サポート)/Cloud Services(extended support)」のパブリックプレビューを開始しました。「クラウドサービス(延長サポート)」は、簡単に言ってしまえばARMデプロイモデルにも対応したクラウドサービスです(画面5)。従来のクラウドサービスは、今後、「クラウドサービス(クラシック)/Cloud Services(Classic)」と呼ばれて区別されることになります(画面6)。

画面5 画面5 Azureポータルの検索ボックスに「クラウドサービス」と入力すると、「クラウドサービス(延長サポート)」が見つかる
画面6 画面6 従来のクラウドサービスは、「クラウドサービス(クラシック)」として識別される

 「クラウドサービス(延長サポート)」に移行する方法としては、アプリ(構成ファイルとパッケージ)を直接新しいARMベースのクラウドサービスにデプロイする方法と、既存の「クラウドサービス(クラシック)」からのダウンタイムのないインプレースアップグレードの方法が用意されているようです。

 まだプレビュー段階ですが、近い将来の「クラウドサービス(クラシック)」の廃止の可能性があります(まだ発表されていません)。「クラウドサービス(クラシック)」に依存する「仮想マシン(クラシック)」以外のアプリやリソースがある場合は、「クラウドサービス(延長サポート)」だけでなく、ARMベースに完全に切り替わった「Azure App Service」(ASMのサポートは2018年6月に廃止)など、より新しいPaaSへの移行を含めて、できるだけはやく検討を開始することをお勧めします。

最新情報(2021年4月6日追記)

 2021年4月5日、「クラウドサービス(延長サポート)」のGAが発表されました。また、「クラウドサービス(クラシック)」から「クラウドサービス(延長サポート)」へのインプレースアップグレードのプレビューが開始されました。


最新情報(2023年1月25日追記))

 Microsoftは2023年1月23日(米国時間)、「仮想マシン(クラシック)」のサービス終了期限を「2023年9月1日」まで延長することを発表しました。これ以上の再延長はないということです。


筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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