企業向けファイル共有サービスにはどのようなものがあるのか集中管理とアクセス監視で高セキュリティを確保

Comparitech.comは6つの主要な集中管理型の企業向けファイル共有サービスについて、レビュー結果を公開した。「Serv-U Managed File Transfer Server」が最高の評価を得た。重要なのは自社の目的に合うこと、不要な機能に費用を費やさないことだという。

» 2021年06月25日 18時00分 公開
[@IT]

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 比較サイトComparitech.com(以下、Comparitech)は2021年6月6日(英国時間)、集中管理型の企業向けファイル共有サービスのレビュー結果を公開した。レビュー対象は、SolarWindsの「Serv-U Managed File Transfer Server」、Files.comの「Files.com」、Citrix Systemsの「ShareFile」、Tresoritの「Tresorit」、Googleの「Google Workspace」、Dropboxの「Dropbox Business」だ。

 Comparitechはこの中でServ-U Managed File Transfer Serverに最高の評価を与えている。

優れた企業向けファイル共有サービスとは

 企業向けのファイル共有サービスでは、ファイル配布の効率性とアクセスの厳格な集中管理が要求される。多くは分散型のピアツーピアのファイル保存と配布ではなく、従来のクライアント/サーバアーキテクチャを採用している。

 Comparitechは6つの企業向けのファイル共有サービスを次の基準で評価した。

  • コスト低減と効率向上
  • データセキュリティの強化
  • ファイル操作の追跡、変更した個人の特定
  • ファイルの前バージョンの保存、変更の取り消し
  • データ保護基準の順守
  • 無料ツールまたは無料で評価できる期間
  • 機能の対価としての料金

 自社に最適な企業向けのファイル共有サービスを探すには、これらの基準のうち、自社の目的に合うものを見ればよい。全く使わない余分な機能に費用をかけることなく、安全で効率的なファイル共有を過不足なく実現するツールを入手することが大切だ。

(1)Serv-U Managed File Transfer Server

 Serv-U Managed File Transfer Server(以下、Serv-U)は、中央ドキュメントストアをオンプレミスに構築し、コラボレーションやファイル配布に利用できる。FTPS(File Transfer Protocol Secure)またはSFTP(Secure File Transfer Protocol)を用いて、転送中のファイルを強力に保護できる。

Serv-U Managed File Transfer Serverの画面(出典:Comparitech.com

 Serv-Uは全てのファイル操作をログに記録する。これはデータ保護の観点から大きなメリットだ。ロギングと監査機能が利用できることから、Serv-Uは、PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)、HIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act of 1996)、FISMA(Federal Information Security Management Act)、SOXといったセキュリティ関連の基準や法律を順守する必要がある企業に適している。

 Serv-Uでは全てのユーザーが自分のファイルを持ち、ファイルを共有したい場合は、Serv-Uサーバにコピーをアップロードする。その後、他のユーザーを招待して、そのファイルにアクセスできるようにする。ファイルのオーナーがどのユーザーと共有するか、どのアクセスレベルにするのかを管理する。

 ファイルはいったんサーバに置かれると、移動しない。位置が固定されるため、ファイルへのアクセスが追跡しやすくなる。Serv-Uはファイルの複製を不要にしているため、安全かつ効率的なファイル共有を実現できており、ファイルストレージ容量の節約も可能だ。

 Serv-UはActive DirectoryやLDAP(Lightweight Directory Access Protocol)に対応しており、ユーザーはこれらの認証情報を用いてファイルを共有できる。

 Serv-Uはエンドユーザー向けに無料FTPクライアント「FTP Voyager」を提供しているものの、「FileZilla」や「WinSCP」など、多数のクライアントを使って操作できる。

 Serv-Uのインストール先は、Windows ServerまたはLinuxだ。14日間無料で試用できる。

 Comparitechは、今回取り上げた6つのサービスの中で、Serv-Uを最も高く評価した。社内でファイル管理を行い、企業向けのファイル共有シナリオについて全てのアクセスイベントを追跡することが可能だからだ。さらにServ-Uの管理ツールでは、PCI DSS、FISMS、SOX、HIPAAの順守に役立つセキュリティおよびアクティビティー管理が可能だ。

(2)Files.com

 Files.com は、クラウドベースのファイル管理システムだ。ファイル共有を容易にする中央ストレージポイントを作成して利用する。

 コラボレーションと配布機能を備えているものの、クラウドストレージスペースが要となる機能だ。ファイルをFiles.comにアップロードすると、共有できるようになる。これにより、システムはファイルアクセスを追跡、制御できる。

Files.comの画面(出典:Comparitech.com

 HIPAAやPCI DSSに準拠して営業している顧客に、署名付きのBusiness Associate Agreement(BAA)を発行する機能を備える。セキュリティ基準順守の監査に必要なファイル操作ログは、Files.comサーバに保存され、Files.comダッシュボードのビュワーで閲覧できる。

 Files.comを利用すると、さまざまなファイル共有方法を実現できる。共有フォルダを作成し、そこにファイルを置くと、承認済みユーザーがアクセスできるようになる。ファイルを配布したいユーザーはファイルをFiles.comにアップロードし、アクセスリストをダッシュボードに追加する。するとFiles.comが、リスト内の各ユーザーに電子メールを送信する。このメールには、安全な接続を介してファイルにアクセスするためのリンクが含まれている。

 「Microsoft Outlook」と「Gmail」のユーザーは、Files.comプラグインをインストールして添付ファイルを管理できる。プラグインは添付ファイルを検知すると、Files.comサーバにアップロードし、その位置のリンクをメールに挿入する。

 Files.comは、他のクラウドストレージシステムのファイルディレクトリにアクセスするクライアントとしても機能し、それらへの単一インタフェースを提供する。「Googleドライブ」や「Dropbox」「Microsoft OneDrive」といったクラウドストレージシステムに対応している。

 ファイル転送は全てFTPSまたはSFTPで保護され、ブラウザによるファイル表示はHTTPSで保護される。ファイルストレージスペースも暗号化されている。

 Files.comを使って共同作業でファイルを作成したい場合、「Microsoft 365」プラグインを導入することもできる。さらに「Slack」や、Atlassianのプロジェクト管理ツールなどのメッセージングシステムとのやりとりも可能だ。

 Files.comは1カ月単位で利用できるサブスクリプションサービスで、「Starter」「Power」「Premier」の3エディションがある。それぞれ1TB、5TB、10TBの容量を使用でき、7日間無料で試用できる。

(3)ShareFile

 ShareFileは幅広い安全なファイル共有サービスが利用できるクラウドプラットフォームだ。サービスの要は、クラウドストレージプラットフォームだ。ShareFileのアカウントには無制限のファイルスペースが含まれるので、既定のファイルサーバとして使用できる。

Citrix ShareFileの画面(出典:Comparitech.com

 ファイルを配布したいユーザーは、ファイルをShareFileシステムにアップロードし、その位置へのリンクを配布先ユーザーに送信する。これらのユーザーはサーバ上のファイルを見ることができ、ファイルのコピーを受け取る必要がない。

 ファイル転送はFTPSで保護され、100GBまでのファイルに対応する。ストレージエリアも暗号で保護される。

 ShareFileシステムは、Microsoft 365や電子メールシステムと統合されており、この機能は、4つのエディションのうち、最も下位のもの以外で利用できる。Microsoft 365との統合により、チームは共同でドキュメントを作成できる。メールとの統合により、添付ファイルはShareFileサーバに移動され、その位置へのリンクがメールに挿入される。

 全てのファイル操作が、認可されたユーザーによって実行されるため、全てのアクセスイベントがユーザーIDやタイムスタンプとともにログに記録される。この機能はデータが流出した場合の追跡に役立ち、全てのファイル操作に責任を持たせる。読み取り専用アクセスに制限したり、簡単に取り消したりできる。上位プランでは、電子透かしシステムを用いたファイル配布も可能だ。

 ShareFileは、30日間無料で試用できる。

(4)Tresorit

 Tresoritはクラウドで提供される安全な企業向けのファイル共有サービスだ。HIPAAとGDPR(一般データ保護規則)の要件に対応したセキュリティ対策が可能だ。

Tresoritの画面(出典:Comparitech.com

 主要サービスとして、2要素認証を採用した安全なストレージや保護されたファイル転送、リンク共有によるファイル配布、電子メールの添付ファイル管理などを提供している。ユーザーデバイスからTresoritにアップロードされるファイルは、アップロード前に暗号化される。転送中のファイルも別の暗号化レイヤーで保護され、アカウント領域全体も暗号化で保護される。

 ユーザーは同僚や外部のユーザーに電子メールでリンクを送信できる。アクセス権限については、編集を許可または禁止でき、アクセス権はファイルオーナーとシステム管理者が簡単に取り消せる。

 Tresoritは、「Business Standard」「Business Plus」「Enterprise」の3エディションが用意されたサブスクリプションサービスで、各ユーザーに割り当てられるストレージ容量はそれぞれ1TB、2TB、カスタムとなっている。

 Tresoritは14日間無料で試用できる。

(5)Google Workspace

 Google Workspace(旧称:Google G Suite)では、クラウドストレージサービスのGoogleドライブが中核をなしている。Google Workspaceの他の要素はオンライン生産性スイートだ。Googleドライブは、個人が無料で15GBまで利用できる。企業向けプランの1つでは、管理者による制御が可能だ。

Google Workspaceの画面(出典:Comparitech.com

 企業向けのファイル共有の出発点は、Googleドライブにファイルをアップロードすることだが、Google Workspaceのオンライン生産性スイートを使って、Googleドライブ上に新しいドキュメントを作成できる。各ユーザーのアカウントはGmailアドレスとリンクされている。Gmailは企業ドメインの電子メールアドレスも管理できる。

 オンライン生産性スイートのコラボレーション機能は、ロールバックのために保存された個々の前バージョンのファイルごとに変更を追跡できる。誰がそれぞれの変更を行ったのか特定できる。

 ファイルのリンクを電子メールで送信することでファイルを共有できる。ファイルオーナーは、付与するアクセスレベルを決定でき、権限は簡単に取り消せる。

(6)Dropbox Business

 Dropbox Businessは、配布やコラボレーションによってファイルを共有できる安全なクラウドストレージシステムだ。バックアップや同期にも利用できる。ファイルアクセスは、リンクを電子メールで送ることで同僚と外部者に付与できる。

Dropbox Businessの画面(出典:Comparitech.com

 「Standard」「Advanced」「Enterprise」の3エディションがあり、Standardで各ユーザーに割り当てられるストレージ容量は5TB。他の2つのエディションでは、容量は無制限となっている。

 Dropbox Businessは、30日間無料で試用できる。

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