複雑怪奇なIT“業界”を解説する本連載。今回のテーマは年収です。大手SIer、外資ITコンサルでは珍しくない年収1000万円をWeb系企業のエンジニアは目指せるのか、そのために必要なスキルは? 行動は? を徹底解剖します。
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2021年7月現在、売り手市場といわれているITエンジニア。外資ITコンサルや大手SIerでは年収1000万円の大台は珍しくありません。では、Web系企業に所属するITエンジニアは大台を超えることは現実的なのでしょうか――。
その核心に、スクールフォトや保育ICTなど幼保DX(デジタルトランスフォーメーション)を提供する「千」のVPoE(Vice President of Engineering、エンジニア組織のマネジメント責任者)として多数のエンジニアを見てきた橋本が迫ります。
始めに結論を述べます。年収1000万円を超えるエンジニアやマネジャーたちと接する機会が多数あり、Web系ベンチャー企業に所属するVPoEのポジショントークとして、断言します。「Web系企業で年収1000万円は可能」です。
IT企業全体としては大手SIer、外資ITコンサルに大台を超える人が多くいるのは間違いありません。
その一番の理由として、上流工程という重要な仕事がビジネスのメインであることが挙げられます。要求定義、システム設計の価値に対して少人数先鋭で対応すれば、高単価、高収益であるのは当然です。また、顧客にそれなりの投資力があり、「高品質、高単価であろう」外注先に依頼することが可能なため、高額な報酬を受け取れます。
それに対してWeb企業の多くは、自社開発体制(内製)、または本社の少人数で設計し、製造工程を海外のオフショアに任せて開発、運営するケースが多いでしょう。上場していないWeb企業(ベンチャー)の場合は、プロダクト開発にかけられる予算がVC(ベンチャーキャピタル)からの投資の範囲内に限られていたり、自社サービスの売り上げから開発投資に回したり、と必然的に投資額に限界が生まれるでしょう。そのため、そこで働くエンジニアが年収1000万円を超えることが難しくなる要因や条件が多くあります。
収入格差を感じるエンジニアは多いでしょう。
一般的にはエンジニアの年収は、400万〜600万円が多くを占めるといわれています。しかし中には、年収1000万円や2000万円の人もいます。ということは、条件を理解し、それらをクリアできれば、大台に手が届く可能性が高くなる、ということです。
エンジニアの年収格差の一番大きな要因は、「スキル、モチベーション格差」だと私は考えます。スキル、モチベーション格差は、社会情勢や所属企業など外部要因には関係なく、個人でコントロールできる領域です。エンジニアのスキルやスタンスについては、「どの時代にも生き残るエンジニアのスキルとスタンス」をご参照ください。
モチベーションに関しては定量化しにくいので、ここでは、スキルと年収の関係を独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が定める「ITスキル標準」(ITSS)で表現します。
プロフェッショナルとしてスキルの専門分野が確立し、社内外において、テクノロジーやメソドロジー、ビジネスを創造し、リードするレベル。市場全体から見ても、先進的なサービスの開拓や市場化をリードした経験と実績を有しており、世界で通用するプレイヤーとして認められます。
プロフェッショナルとしてスキルの専門分野が確立し、社内外において、テクノロジーやメソドロジー、ビジネスを創造し、リードするレベル。社内だけでなく市場においても、プロフェッショナルとして経験と実績を有しており、国内のハイエンドプレイヤーとして認められます。
プロフェッショナルとしてスキルの専門分野が確立し、社内においてテクノロジーやメソドロジー、ビジネスを創造し、リードするレベル。社内において、プロフェッショナルとして自他共に経験と実績を有しており、企業内のハイエンドプレイヤーとして認められます。
プロフェッショナルとしてスキルの専門分野が確立し、自らのスキルを活用することによって、独力で業務上の課題の発見と解決をリードするレベル。社内において、プロフェッショナルとして求められる経験の知識化とその応用(後進育成)に貢献しており、ハイレベルのプレイヤーとして認められます。スキル開発においても自らのスキルの研さんを継続することが求められます。
要求された作業を全て独力で遂行します。スキルの専門分野確立を目指し、プロフェッショナルとなるために必要な応用的知識、技能を有します。スキル開発においても自らのスキルの研さんを継続することが求められます。
上位者の指導の下に、要求された作業を担当します。プロフェッショナルとなるために必要な基本的知識、技能を有するスキル開発においては、自らのキャリアパス実現に向けて積極的なスキルの研さんが求められます。
情報技術に携わる者に最低限必要な基礎知識を有します。スキル開発においては、自らのキャリアパス実現に向けて積極的なスキルの研さんが求められます。
参考:ITSSの詳細
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