オーソドックスなアプローチにより、ハイブリッドワークやリモートワークで働く人々の不安を打ち消し、連携と効率を高める。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
2022年までに、世界のナレッジワーカーの25%がメインの勤務場所として自宅を選び、45%が週に2〜3日はリモートワークをするようになる見通しだ。この見通しを大いに喜んでいる従業員もいれば、そうでもない従業員もいる。
多くの従業員にとって、リモートワークの目新しさは既に薄れている。こうした従業員からは「ハイブリッドワーク(オフィスワークとリモートワークを組み合わせた勤務形態)環境に全面的に移行するのではないか」と懸念する声も上がっている。CIO(最高情報責任者)は、ハイブリッドワークやリモートワークで働く人々を含むチーム(以下、ハイブリッドチーム、リモートチーム)に特有の、仮想的なやりとりをはじめとする仕事上の課題に対処するためのシンプルな基本原則を、こうした従業員の不安を和らげるのに役立てられる。
以下では、ハイブリッドチームとリモートチームの従業員エクスペリエンスを3つの側面から改善する基本原則を挙げ、続いてそれらを実現するための7つのガイドライン例を示す。これらのガイドラインは、各チームや自社の文化に合わせてカスタマイズする必要があるだろうが、そうすることで、基本原則を効果的に実現できる。
チームの連携を促進する。特に、リモート環境では連携は保ちにくいが、チームの全体的なエンゲージメントとインクルージョン(包摂)を実現する上で重要だ。マネジャーは、共感力が高く、気さくな人柄でなければならない。それが優れた従業員エクスペリエンスとそうでないものとの違いを生む。
チームメンバーは、マネジャーの行動から仕事の大きなヒントを得ることが多い。このため、マネジャーは生産的な行動のモデルを示す必要がある。例えば、病院に行く、工務店と相談する、病気の子どもの世話をするなどのために、勤務時間を機動的に変更できることを取り上げて説明するとよい。「みんな、お互いさまだ」ということを強調するためだ。
チームが時間をどう使うかについて透明性を高め、仕事の進め方を柔軟に調整し、過程よりも結果を重視する。例えば、仕事の成果やアウトプットの基準を取り決める一方、チームがこうした目標をいつ、どこで、どのように達成するかに関しては、さまざまなやり方を柔軟に許容する。
このアプローチにより、チームメンバーのプロジェクトへの参加に関する次の方針が強化される。それは「チームメンバーの新規プロジェクトへの参加は、どこで働いているかではなく、これまでの貢献の実績と期待値によって判断される」というものだ。こうした“コラボレーションエクイティ”(公平なコラボレーション)の考え方は、「オフィスワークのプロジェクト参加者の方が、職場に物理的に存在するため好まれるのではないか」というチームメンバーの懸念を解消する上で重要だ。
いつ、どんな目的で、どんなテクノロジーやツールを使用できるかについて、明確なガイダンスを提供する。全ての機器が適切に動作することを確認し、チームメンバーがデジタルスキルを高める機会を提供するとともに、「従業員はリモートワークやハイブリッドワークを効果的に行うのに不可欠な要素として、自分のデジタル習熟度に責任を持つ必要がある」ことも明確に説明する。
オンライン会議が良い例だ。IT部門が機器のシームレスな提供と、効果的なサポートサービスの提供を担当している。だが、チームメンバーが自らの責任で、全ての重要な機能の使い方を把握し、会議のベストプラクティスを観察して学ぶことが基本原則でなければならない。
チームで基本原則の実現に向けて対話することで、リモートおよびハイブリッドワーク環境に関するメンバーの当事者意識が高まり、これらを管理しようとする意欲が向上する。
3つの基本原則を具体化するために、以下、7つの例のようなオーソドックスなガイドラインを設定すれば、リモートおよびハイブリッドチームメンバーが快適に働ける環境の構築に役立つ。
チームメンバーが個人や家族、仕事上でのそれぞれの義務を創造的に両立させ、求められる結果を出せるように後押しする。必要に応じて、チームメンバー同士が仕事上の義務の共有を交渉できるようにする。
例えば、会議の目的や雰囲気に適していれば、チームメンバーがビデオ会議の背景を個人の好みで選択できるようにする。
これはチームマネジャーと経営陣の両方に当てはまる。チームメンバーに影響する事項は必ず周知するようにする。また、誰かがリモートワーク疲れに苦しんだり悩んだりしている兆候がないかどうか、積極的にチェックすることも重要だ。
これについては、チームの活動に十分に参加し、仕事で適切なアウトプットを維持することを条件とする。例えば、チームメンバーはコラボレーション作業の回数や時間を指定できるが、タイムゾーンが異なるチームメンバーがいずれも就業可能な時間帯については、コラボレーション作業に優先的に充てる必要があるかもしれない。
例えば、音声通話やチャットには2時間以内に対応するが、緊急ではない電子メールには1営業日以内に返信するといったルールを取り決めることができるようにする。また、チームメンバーは各自が公開している勤務時間外では、急を要さない業務には対応する必要がないということで合意しておくとよい。
チームメンバーは、チーム会議を行う必要性やタイミング、時間の長さ、場所について、あらかじめ合意する必要がある。オフィスに出社しているチームメンバーとリモートのチームメンバーが混在する会議では、メンバーの参加機会が均等になるように努めなければならない。
全員がエンドポイントデバイス、インターネット接続、適切な音声、照明、ビデオ機能にアクセスして利用し、仮想コラボレーションに生産的に参加できるようにする。また、ハッシュタグや@メンションといった一般的な機能の使い方について合意する。
ハイブリッドワーク環境への移行は始まったばかりであり、ほとんどの企業は移行を進めながら、この環境への理解を深めていく。以上のガイドラインはその道のりにおける交通ルールであり、個人とチームはこれらに従うことで、自らの道を切り開くことができる。
これらのガイドラインは、ハイブリッドワークにおける共創と草の根的なイノベーションを可能にするだけでなく、新しいチームメンバーがチームの文化的な規範を迅速に理解し、受け入れるのに役立つ。
出典:Making Hybrid Work More Permanent? Set Some Ground Rules(Smarter with Gartner)
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