Microsoftは、Windows 10の半期チャネルおよび長期サービスチャネルの最新バージョン「21H2」をリリースしました。ハードウェアや業務アプリ、周辺機器の互換性の関係でWindows 11にアップグレードできないPCは、今後も引き続きWindows 10を利用できます(SACバージョンは2025年10月14日まで)。
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Microsoftは、2021年6月の「Windows 11」発表と同時期に、「Windows 10」のサポートを「2025年10月14日」まで継続することを明らかにしましたが、今後のWindows 10の機能更新プログラムについて詳細な情報を公開していませんでした。
2021年11月16日(米国時間)、最新の機能更新プログラムである「Windows 10 November 2021 Update(バージョン21H2、ビルド19044)」の正式リリース(画面1)発表と同時に、Windows 10の半期チャネル(Semi-Annual Channel:SAC)バージョンのリリースサイクルについてMicrosoftから重要な発表がありました。
Windows 10のSACバージョンでは、これまで年に2回のリリースサイクルで機能更新プログラムが提供されてきました。Windows 10 バージョン21H2からは、Windows 11のリリースサイクルにそろえる形で、「年に1回」(Annual Channel)のリリースサイクルに変更されます。つまり、2022年前半にバージョン「22H1」が提供されることはなく、次は2022年後半のバージョン「22H2」になる予定で、同時期にWindows 11の次の機能更新プログラムも提供されることになります。
また、品質更新プログラムが提供されるサービス期間はこれまでと基本的に変わらず、HomeとProエディションが「18カ月」、EnterpriseおよびEducationエディションは「30カ月」(H2リリースなので)となります。ちなみに、Windows 11は、HomeおよびProエディションが「24カ月」、EnterpriseおよびEducationエディションが「36カ月」です。
年に1回のリリースサイクルにスピードが緩和されたことは、IT管理者にとってはうれしいニュースかもしれません。また、2025年10月14日のサポート期限まで、当面は1年に1回の機能更新プログラムのリリースがあるということが明らかになりました。短い方の18カ月というサポート期間を考えると、次の2023年後半のバージョン「23H2」、その次の2024年後半のバージョン「24H2」の最大でも後2回の機能更新プログラムは続きそうです。
Windows 10 バージョン21H2と同時に、長期サービスチャネル(Long-Term Servicing Channel:LTSC)のWindows 10 Enterprise LTSC 2021もリリースされています(画面2)。
LTSCバージョンは、インターネットやクラウドに接続できない環境で、デスクトップ環境を必要とする特殊なデバイスや用途(医療機器や製造機械の制御など)向けに提供される製品です。
これまで、LTSCバージョンは、Windows ServerのLTSCと同時期に同じOSビルドベースで提供されてきましたが、今回のLTSCバージョンは、Windows 10 バージョン21H2と同じビルドベース(ビルド19044)であり、最新の「Windows Server 2022」(ビルド20238)やWindows 11(ビルド22000)とは異なります。
また、サービス期間はこれまでの「10年」(メインストリーム5年+延長サポート5年)から、メインストリームサポートのみの「5年」(2027年1月12日まで)に大幅に短縮されています(IoT Enterprise LTSC 2021は従来通り10年)。この変更により、1つ前のWindows 10 Enterprise LTSC 2019(2029年1月9日まで)よりも2年先にライフサイクルが終了してしまうことになります。Microsoftの想定していない汎用(はんよう)クライアントOSとしてLTSCバージョンを導入している企業もあるようですが、この点にご注意ください。
Windows 10 バージョン21H2は、バージョン20H2や21H1と同様に、バージョン2004のビルドベース(VB_RELEASE)の小規模なアップデートであり、品質更新プログラムは共通です(アプリやドライバ開発者向けのWindows Software Development Kit《SDK》、Windows Driver Kit《WDK》も共通です)。新機能は少数であり、それも多くのユーザーが待ち望んでいたようなものではありません(新機能については、前出の「What’s new」のページで確認してください)。Windows 10 バージョン2004、21H2、21H1、21H2のビルド番号は、それぞれ19041、19042、19043、19044となります。
Windows 10 バージョン2004以降で2021年9月(またはそれ以降)の品質更新プログラムがインストールされていれば、バージョン21H2の新機能は無効化された状態で既に取り込まれており、Windows 10 バージョン2004に対するバージョン21H2や21H2のときと同様、Windows Updateを使用する場合は有効化パッケージ(Enablement Package)という小さな更新プログラムのインストールで、短時間で新機能の有効化とバージョン情報の切り替えが可能です。インストールメディアを使用した更新や、Windows 10 バージョン1909以前からのWindows Updateによる更新は、アップグレードインストールになることに注意してください。
Windows 10 バージョン2004以降を実行中であれば、今回の機能更新プログラムは小規模なアップデートであり、アップグレードインストールを伴わないため、アプリやハードウェアの互換性の問題も生じにくいため、企業の担当者はスムーズに最新バージョンに移行できるはずです。
なお、Windows 10 バージョン2004は全てのエディションのサポートが「2021年12月14日」で終了します。Windows 10 バージョン1909のEnterpriseおよびEducationのサポートは「2022年5月10日」に終了します。それ以前のWindows 10のSACバージョンのサポートは既に終了しました。
Windows Updateを使用し、「自動更新」が有効になっている場合、Microsoftがブロード展開を開始すると自動的にWindows 10 バージョン21H2にアップグレードされます(ちなみにWindows 10 バージョン21H1のブロード展開開始は2021年11月初め)。当面の間は、Windows Updateで「更新プログラムのチェック」をクリックしたユーザーに対して、段階的に提供範囲を広げながら利用可能になります(画面3)。
「Windows Update for Business」のポリシー設定で機能更新プログラムの受け取りを制御している場合は、以下の場所にある「ターゲット機能更新プログラムのバージョンを選択する」ポリシーを有効化し、Windows製品のバージョン「Windows 10」、ターゲットバージョン「21H2」を指定することで、次回のWindows Update時にWindows 10 バージョン21H2の機能更新プログラムのダウンロードとインストールを行うことが可能です(画面4)。
「Windows Server Update Services(WSUS)」を導入している場合は、Windows 10 バージョン21H2のリリースと同時に、Windows 10 バージョン21H2の機能更新プログラムの通常版と有効化パッケージ版(イネーブルメントパッケージ経由)の両方が利用可能になっています。サイズは通常版が約3.6GB(x64版の場合)に対して、有効化パッケージ版はわずか23KBしかありません(画面5)。
配布対象がWindows 10 バージョン2004以降である場合は、有効化パッケージ版を利用することで、ネットワーク帯域の節約と短時間の更新が可能です。また、アップグレードインストールが行われないため、互換性問題もほとんどなく、クライアントPCのディスク領域も消費しません。
以下のブログでアナウンスされているように、Windows 10 Home/Pro/Enterprise/Educationは現在の「バージョン22H2」が最後のバージョンになることが発表されました。このバージョンのまま「2025年10月14日」までサポートされ、更新プログラムが提供されることになります(日本時間2025年10月15日に提供される更新プログラムが最後)。
Windows 10 Enterprse LTSC 2019は「2029年1月9日」まで、Windows 10 Enterprise LTSC 2021は「2027年1月12日」(延長サポートは提供されません)までサポートが継続されます。また、Windows 11 Enterprise LTSCは、2024年後半のリリースが予定されています。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2009 to 2022(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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