Windows 10/11の「IEモード」のサイトリストをMicrosoft 365管理センターから集中管理する方法企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(116)

Microsoftは2021年11月のMicrosoft Edge バージョン96のリリースと同時に、Microsoft 365管理センターで「IEモードのクラウドサイトリスト管理(Cloud Site List Management for IE mode)」機能がパブリックプレビューとして利用可能になったことを発表しました。この機能で配布されるサイトリストは、Microsoft Edge バージョン93以降で利用できますが、どのような機能なのか歴史的な背景を含めてレビューします。

» 2022年01月18日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]

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「企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内」のインデックス

企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内

エンタープライズモードからIEモードへ

 Chromium版「Microsoft Edge」が備える「IEモード」は、もともと「Windows 7」以降の「Internet Explorer(IE)11」が備えていた「エンタープライズモード」の機能をMicrosoft Edgeに統合したものです。IE 11のエンタープライズモードは、事前に管理者が定義したサイトリストに基づいて、IE 11の互換モードをIE 7やIE 8のエミュレートに自動的に切り替えて表示するものでした。

 その後、サイトリストに基づいて「Windows 10」のレガシー版Microsoft EdgeとIE 11のデスクトップアプリを自動的に切り替える機能になり、レガシー版Microsoft Edgeのサポート終了と現在のMicrosoft Edgeへの完全な移行に伴い、Microsoft Edgeが備えるIEモードと統合されました。

 MicrosoftはデスクトップアプリとしてのIE 11のサポートを「2022年6月15日」に終了し、それ以降はIE 11をデスクトップアプリとして起動できなくなる予定です(Windows ServerおよびWindows 10 LTSCは除く)。Microsoft EdgeのIEモードは引き続き利用できるようになるため、IEモードは今後、IEでなければ適切に表示できないサイトのWindows 10および「Windows 11」における事実上、唯一の選択肢になります。

これまでの2つのEnterprise Site List Manager

 管理者はIEモードで表示するサイトの一覧を「エンタープライズモードサイトリスト」(XML形式)として定義し、ネットワーク共有やWebサイトに配置して、グループポリシーなどでMicrosoft Edgeを実行するクライアントにサイトリストを配布できます。

 以前から、Microsoftはサイトリストの作成ツールとしてスタンドアロン版の「Enterprise Mode Site List Manager」を提供してきました。Microsoft Edge バージョン89以降では、Microsoft Edgeにサイトリスト作成ツールが搭載され、管理者が制限していない限り、誰でも利用できるようになっています。Microsoft Edgeに組み込まれたツールを使用するには、Microsoft Edgeのアドレス欄に「edge://compat/SiteListManager」と入力します(画面1)。

画面1 画面1 これまでのスタンドアロン版「Enterprise Mode Site List Manager」(画面手前)と、Microsoft Edge バージョン89以降に組み込まれたツール(画面奥)

3つ目のサイトリスト作成ツールはクラウドから

 「Microsoft 365管理センター」でパブリックプレビュー機能として利用可能になった「IEモードのクラウドサイトリスト管理」は、クラウドから提供される“第3のサイトリスト作成ツール”であり、サイトリストの配布ポイントとしても機能します。

 この機能を利用すると、1つ以上のクラウドサイトリストをモダンブラウザ上で作成、発行、インポート/エクスポートでき、Microsoft Edge バージョン93以降を実行する「Microsoft 365」の「Azure Active Directory(Azure AD)」に参加するWindowsデバイスのIEモードの動作を制御できます。クラウドがサイトリストの配布ポイントとして機能するため、デバイスの場所を選ばず、ユーザーに最新のサイトリストを提供し、IEモードの挙動を集中的に制御することができます。

 クラウドサイトリストを作成するには、Microsoft管理センターで[設定]→[組織(の)設定]→[Microsoft Edgeサイトリスト]を開き、スタンドアロンやMicrosoft Edge組み込みのサイトリスト作成ツールと同じようにサイトリストを追加またはインポートします。作成したクラウドサイトリストは、バージョン管理付きでユーザーに公開できます(画面2)。

画面2 画面2 Microsoft 365管理センターでIEモード用の“クラウド”サイトリストを作成、公開する

 プレビュー期間中は、[Microsoft Edgeサイトリスト]の項目が表示されない場合があるようです。その場合は、[組織(の)設定]→[組織のプロファイル]→[リリースに関する設定]を開き、[全員に対象指定リリース]または[特定のユーザーに対象指定リリース]を選択します。

 クラウドサイトリストは、クライアントにMicrosoft 365の管理ポリシーが適用されると反映されますが、クラウドサイトリストの公開だけでは不十分で、「グループポリシー」や「ローカルコンピューターポリシー」(Microsoft Edgeの管理用テンプレートを使用)、「Microsoft Endpoint Manager(Microsoft Intune)」でIEモードの構成と使用するクラウドサイトリストのIDの指定と組み合わせる必要があるようです。

 適切なポリシー設定との組み合わせでないと、Microsoft Edgeが正常起動しない場合がありました。グループポリシーやローカルコンピューターポリシーの場合は、「コンピューターの構成」または「ユーザーの構成」のいずれかで、Microsoft Edgeの管理用テンプレート「\Microsoft Edge\Internet Explorer統合を構成する」を有効にして、「Internet Explorerモード」を指定し、「\Microsoft Edge\エンタープライズモードクラウドサイトリストを構成する」を有効にして、サイトリストの識別子(Microsoft 365管理センターに表示される「サイトリストのID」の値)を指定します(画面3)。

画面3 画面3 「エンタープライズモードクラウドサイトリストを構成する」にクラウドサイトリストのIDを指定する

 Microsoft Endpoint Managerの場合は、現状、対応する設定は用意されていないようですが、以下の2つの設定をMDMやレジストリ設定として適用することで対応できるでしょう。

 以上の設定により、ユーザーがMicrosoft EdgeでWebサイトにアクセスすると、クラウドサイトリストの定義に基づいて特定のサイトを自動的にIEモードで開くようになります(画面4)。クラウドサイトリストを適切に取得できているかどうかは、Microsoft Edgeのアドレス欄に「edge://compat/enterprise」と入力することで確認できます(画面5)。

画面4 画面4 クラウドサイトリストの定義に基づいて、特定のサイトがIEモードで自動的に開かれるようになる
画面5 画面5 エンタープライズモードサイトリストにクラウドサイトリストが反映されている

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2009 to 2022(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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