ノークリサーチはDX提案の成功/失敗の要因に関する提言を発表した。DXに取り組む原資を捻出するためのコスト削減は重要だが、業務効率に与える影響などを考えないコスト削減は避けるべきだとしている。
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ノークリサーチは2022年8月22日、同社の「2022年版 中堅・中小企業のDXソリューション導入実態と展望レポート」にある700社のデータに基づいて、DX(デジタルトランスフォーメーション)提案の成功/失敗の要因に関する提言を発表した。データから導かれる定石を着実に実践することで、無用な失敗を回避できるとしている。
DX導入の効果と課題の関連性を解析した手法は、展望レポートのデータをベイジアンネットワーク(BN)分析にかけるというものだ。
DX導入の効果として、「ビジネスの刷新や開拓ができる」「現場業務の効率を改善できる」「業務システムを改善できる」といったプラス効果がある9項目を挙げた。同時にマイナス効果として「議論だけで実践が伴わない」「費用が予想/計画を上回る」「期待した効果が得られない」といった5項目を挙げた。
DX導入の課題に関する選択肢は、「費用に見合う効果を得られる確証がない」や「DXの検討をするために費用が発生する」「クラウドサービスへの移行が目的化している」といった23項目だ。BN分析とは、これらの項目を確率変数と見なし、互いの関連性を有向グラフとしてモデル化する手法。課題の関連性を視覚化し、ある課題が他の課題や導入効果にどう影響するのかを推論できる。
BN分析の結果、「DXの検討をするために費用が発生する」「DXに対する理解の内容がさまざまである」「IT関連部門の人員がDXに着手する余裕がない」という3つの課題がDXの導入効果に強い影響を与えていることが分かった。
分析結果を見ると、上記の費用や理解についての課題はプラス効果の方が高い。その一方で、「IT関連部門がDXに着手する余裕がない状態で経営層がDXの理解を深める努力をしても、効果は期待できない」といった定石が得られたという。
さらに、「DXの費用対効果が見えない状態で売り上げ向上を無視したコスト削減を進めると、DXの導入効果が下がる」ことも分かった。同社は、DXに取り組む原資を捻出するためのコスト削減は重要だが、業務効率に与える影響などを考えないコスト削減は避けるべきだとしている。
そして、検討段階でも必要な費用は捻出し、DXの理解に関して多様性を許容することが重要で、IT企業としては、まず現場業務に習熟し、その上でITスキルを習得することの重要性を啓発することが大切だと指摘している。
その際、伴走型SI/サービスでは、ユーザー企業からIT企業への人材派遣といった試みも検討の価値があるとしている。
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