2022年後半、Windows 11の次期バージョンと同時期に、Windows 10の機能更新プログラム「バージョン22H2」のリリースが予定されています。2022年7月末には、Insider ProgramのRelease Previewチャネル向けに先行的にリリースされました。前回の「バージョン21H1」のときにも説明しましたが、サポート期間中のWindows 10に最新の累積更新プログラムがインストールされていれば、実は「バージョン22H2」は既に手元のデバイスまで来ています。
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「Windows 10」は、以前は「半期チャネル(Semi-Annual Channel、SAC)」として1年に2回リリースされてきました。それが「Windows 11」のリリース後は、Windows 11と同じ「一般提供チャネル(General Availability Channel)」にそろえられ、1年ぶりのリリースとなります。
Microsoftは前バージョンに対する小規模なアップデートの場合、「有効化パッケージ(Enablement Package)」形式で機能更新プログラムを提供することがあります。最近では、Microsoftは「Enablement Package KB(EKB)」と呼ぶようになりました。
有効化パッケージは、アップデート対象の前バージョン(場合によってはさらに前のバージョン)とOSのコア部分が共通となっており、毎月の累積更新プログラムは共通です。Windows 10の新機能は、一般提供までに毎月の累積更新プログラムによって“無効化された状態”で追加されます。有効化パッケージはそれを有効化し、新しいバージョン情報に切り替える小さな更新プログラムパッケージということもできます。
例えば、Windows 10 November 2019 Update(バージョン1909、19H2)は、Windows 10 May 2019 Update(バージョン1903、19H1)に対する有効化パッケージとして提供されました。その後、Windows 10 May 2020 Update(バージョン2004、20H1)は大型アップデートとして通常の機能更新プログラムとして提供され(事実上のアップグレードインストール)、その後のWindows 10 October 2020 Update(バージョン20H2)、Windows 10 May 2021 Update(バージョン21H1)、Windows 10 November 2021 Update(バージョン21H2)は全て有効化パッケージ形式で提供されています。バージョン2004からバージョン20H2までのOSのコア部分は、「VB_RELEASE(19041.vb_release)」と呼ばれています。
通常の機能更新プログラムは引き続き提供され、それを利用したアップデートも可能ですが、その場合は事実上のアップグレードインストールが行われます。そのため、ダウンロードや失敗時のロールバックのためにより多くのディスク領域を必要とします。
対して、Windows Updateや「Windows Server Update Services(WSUS)」経由で利用可能な有効化パッケージは、サイズが小さいため(過去の例では数十MB)、あっという間にダウンロードが完了しますし、インストールも通常の累積更新プログラムと変わりません(もっと短時間で終わる可能性もあります)。OSのコア部分に変更がないため、ハードウェアやソフトウェアの互換性問題の影響も受けにくいという利点があります。
2022年7月末、MicrosoftはWindows 10のRelease Previewチャネル向けに次期バージョン「Windows 10 バージョン22H2」の先行提供を開始しました。バージョン22H2もまた、「VB_RELEASE」をベースにしたOSで、有効化パッケージとして提供されることになります。
現行のバージョン「21H2」について、以下の記事で有効化パッケージが提供する新機能が、一般提供前に既に組み込まれていることを示しました。サポート対象のWindows 10で最新の累積更新プログラムがインストールされていれば、Windows 10 バージョン22H2の機能もまた既に組み込まれているのです。
今回も有効化パッケージを使用せずに、バージョン22H2に更新してみました。なお、この方法はあくまでも実験的に行ったものです。バージョン22H2へのアップデートは、くれぐれも一般提供後、正規の方法で実行してください。今回使用したパッケージファイルは、今後の累積更新プログラムでさらに新しいものに差し替えられる可能性もあります。
最新の累積更新プログラムがインストールされているWindows 10 バージョン21H2を実行するPCで、「C:\Windows\Servicing\Packages」フォルダ内で「20H2」を含む拡張子「MUM」ファイルを探すと、「20h2-EKB-Package」や「20h2-EKB-Wrrapper-Package」という文字列を含むMUMファイルが幾つか見つかるはずです(画面1)。
これらがバージョン20H2に関連するパッケージであるため、「DISM」コマンドで全てをインストールした後、OSを再起動すると(画面2)、あーら不思議、バージョン表記が「バージョン22H2(ビルド19045.1889)」に切り替わりました(画面3)。
インストール済みの更新プログラムを確認してみても、最後にインストールしたWindows 10 バージョン21H2向けの「2022年8月のBリリース」以降、何もインストールされていないのが分かります(有効化パッケージの対象となるOSの累積更新プログラムはバージョンに関係なく共通であることを思い出してください)。
なお、Windows 10 バージョン21H2の場合「C:\Windows\Servicing\Packages」フォルダには「20H2」や「21H1」「21H2」関連のMUMファイルも見つかるはずです。
Windows 10は「2025年10月14日」までサポートされることになっていますが、廃止が決定しているWindowsに対して、今後、大規模な変更が加えられることは期待できません。そのため、あと何回機能更新プログラムが提供されることになるのかはっきりしませんが、次も有効化パッケージによる小規模な更新になると予想します。逆に言えば、Windows 10 PCを数多く抱える企業は、向こう3年は大規模アップデートに起因するもろもろの問題からは解放されるということでもあります。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2023(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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