レプリケートされたトランザクションや変更データキャプチャートランザクションの情報を出力するSQL Server動的管理ビューレファレンス(148)

「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「動的管理ビュー」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は、レプリケートされたトランザクションや変更データキャプチャートランザクションの情報の出力について解説します。

» 2022年09月26日 05時00分 公開
[伊東敏章@IT]

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SQL Server動的管理ビュー一覧

 本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で使用可能な動的管理ビューについて、動作概要や出力内容などを紹介していきます。今回は動的管理ビュー「sys.dm_repl_traninfo」における、レプリケートされたトランザクションや変更データキャプチャートランザクションの情報の出力について解説します。対応バージョンは、SQL Server(サポートされている全てのバージョン)です。

概要

 SQL Serverでは、レプリケーション機能を使用することで、データベースから別のデータベースにデータやデータベースオブジェクトをコピーして配布し、データベースを同期させることが可能です。

 変更データキャプチャー機能を使用することで、テーブルに対して適用された挿入、更新、削除の各アクティビティーを記録し、利用できます。

 「sys.dm_repl_traninfo」動的管理ビューを使用することで、レプリケーション機能でレプリケートされたトランザクションと変更データキャプチャー機能でキャプチャーされたトランザクションについて、トランザクションに関する一覧情報を出力できます。

出力内容

列名 データ型 説明
fp2p_pub_exists tinyint トランザクションがピアツーピアトランザクションレプリケーションを使用してパブリッシュされたデータベース内にある場合は「1」
それ以外の場合は「0」
db_ver int データベースのバージョン
comp_range_address varbinary(8) スキップする必要がある部分ロールバック範囲
textinfo_address varbinary(8) キャッシュされたテキスト情報の構造体のメモリ内アドレス
fsinfo_address varbinary(8) キャッシュされたファイルストリーム情報構造のメモリ内アドレス
begin_lsn nvarchar(64) トランザクションの開始ログレコードのログシーケンス番号(LSN)
commit_lsn nvarchar(64) トランザクションのコミットログレコードのLSN
dbid smallint データベースID
rows int トランザクション内のレプリケートされたコマンドのID
xdesid nvarchar(64) トランザクションID
artcache_table_address varbinary(8) このトランザクションに最後に使用された、キャッシュされたアーティクルテーブル構造のメモリ内アドレス
server nvarchar(514) サーバ名
server_len_in_bytes smallint サーバ名の文字長(バイト単位)
database nvarchar(514) データベース名
db_len_in_bytes smallint データベース名の文字長(バイト単位)
originator nvarchar(514) トランザクションが発生したサーバの名前
originator_len_in_bytes smallint トランザクションが発生したサーバの文字長(バイト単位)
orig_db nvarchar(514) トランザクションが発生したデータベースの名前
orig_db_len_in_bytes smallint トランザクションが発生したデータベースの文字長(バイト単位)
cmds_in_tran int 現在のトランザクションでレプリケートされたコマンドの数
is_boundedupdate_singleton tinyint 一意の列の更新が単一行に影響するかどうか
begin_update_lsn nvarchar(64) 一意の列更新で使用されるLSN
delete_lsn nvarchar(64) 更新の一部として削除するLSN
last_end_lsn nvarchar(64) 論理トランザクションの最後のLSN
fcomplete tinyint コマンドが部分的な更新かどうか
fcompensated tinyint トランザクションが部分ロールバックに含まれるかどうか
fprocessingtext tinyint トランザクションにバイナリラージデータ型列が含まれるかどうか
max_cmds_in_tran int ログリーダーエージェントによって指定された、論理トランザクション内のコマンドの最大数
begin_time datetime トランザクションが開始された時刻
commit_time datetime トランザクションがコミットされた時刻
session_id int 変更データキャプチャーのログスキャンセッションのID
「sys.dm_cdc_logscan_sessions」の「session_id」列にマップされる
session_phase int エラー発生時のセッションのフェーズを示す数値
「sys.dm_cdc_errors」の「phase_number」列にマップされる
is_known_cdc_tran bit トランザクションが変更データキャプチャーによって追跡されることを示す
「0」=トランザクションレプリケーショントランザクション
「1」=変更データキャプチャートランザクション
error_count int 発生したエラーの数

動作例

 1つのサブスクライバーを持つトランザクションレプリケーションを作成しました(図1)。

図1 図1 トランザクションレプリケーションを作成したところ

 パブリケーションデータベースでデータの変更を行うトランザクションを開始して、コミット前に「sys.dm_repl_traninfo」動的管理ビューを出力しました。この時点では、情報は何も出力されませんでした(図2)。

図2 図2 トランザクションのコミット前に「sys.dm_repl_traninfo」動的管理ビューを出力したところ

 次に、データ変更を行うトランザクションをコミット後に「sys.dm_repl_traninfo」動的管理ビューを出力します。1つのトランザクションの実行だと情報が出力されるタイミングに合わせて情報を出力することが難しいため、多数のトランザクションを実行しました。出力された情報から、レプリケートされるトランザクションのLSN(ログシーケンス番号)やコミット時刻などの情報を確認できました(図3)。

図3 図3 多数のトランザクションのコミット後に「sys.dm_repl_traninfo」動的管理ビューを出力したところ

 数分後にもう一度「sys.dm_repl_traninfo」動的管理ビューを出力しましたが、情報が出力されなくなっていました(図4)。

図4 図4 コミット後に時間をあけて「sys.dm_repl_traninfo」動的管理ビューを出力したところ

 「sys.dm_repl_traninfo」動的管理ビューではアーティクルキャッシュに読み込まれているトランザクションが対象になりますので、トランザクションがアーティクルキャッシュから削除されたために出力されなくなったものと思われます。

※本Tipsは、「Windows Server 2019」上に「SQL Server 2019」をインストールした環境を想定して解説しています。

筆者紹介

椎名 武史(しいな たけし)

BIPROGY株式会社(ビプロジー)所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。

伊東 敏章(いとう としあき)

BIPROGY株式会社(ビプロジー)所属。入社以来SQL Server一筋で評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。社内のプログラミングコンテストで4回の優勝経験も持つ。趣味は輪行で週末は自転車を持っての旅行。目標は色々な日本百選を制覇すること。


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