今日の気分を“スコアリング”できたらいいのにGo AbekawaのGo Global!〜Aaron Bramson(後)(2/3 ページ)

» 2023年01月06日 05時00分 公開

GAテクノロジーズでの仕事

阿部川 現在、GAテクノロジーズではどのようなお仕事をされているのですか。

アーロンさん 現在私が行っているのは、電車間のネットワークの解析です。GAテクノロジーズは東京23区の電車や駅に関する詳細な情報を持っています。駅の入り口や出口、ホームの位置や長さなどの構内の情報、他の駅とのコネクションなどです。その情報から、例えば「自分のいるところから一番近い駅に行く場合、どのルートが最適か」「坂道、歩道橋など車いすやベビーカーでの移動に支障はないか」などの情報を収集し、それをどう利用すればユーザーの便利さにつながるかを考える研究です。駅間のネットワークと、駅までのネットワークを融合させて、最適な移動方法を提案しようとしています。

画像 アーロンさん

 将来的にはこれらの情報を活用したさまざまなアプリケーションを開発できる可能性があると思っています。例えば、不動産物件の補足情報。物件の最寄り駅はどこで、そこまでどうやって行くのかなどの情報が分かれば購買者は安心して物件を購買できますよね。現在の物件情報では「家を出てから駅のプラットフォームまで何分あれば着くか」を1分単位で把握することは困難ですが、GAテクノロジーズの情報を使えばそれが分かります。

 もう1つの可能性はスコアリングです。自宅に一番近い駅がよく使う駅でしょうから、普通に考えれば「距離の近い駅」のスコアが高くなります。しかし日常生活の中では、必ずしも一番近い駅が最適な駅ではないこともありますよね。別の駅までは2分余計にかかるけれど近くにスーパーやお店がたくさんある、など。そういった駅にはまた別のスコアリングが必要です。

 利用者のやりたいこと、求めているものに対するそれぞれのスコアが分かれば、本当の意味での最適なルートを選定できます。東京ではコンビニがどこでもありますから、それほど苦労はしませんが、ドライクリーニングやコインランドリーなどはどうでしょうか。生活の中で中心となる活動や施設は人それぞれです。でもスコアリングで物件や駅などと利用者をマッチングできれば、最適な情報が引き出せる。そしてデータがあればあるほど、その人のライフスタイルによりマッチした物件を見つけられます。

 スコアリングについては、駅と駅周辺の情報が重要です。もちろん既存の情報はありますが、今よりもより精度を上げたいと考えています。顧客データも集める必要があります。「野球は好きですか」「ペットはいますか」「川沿いに住むのはお好きですか」などの質問に答えることで、より正確なライフスタイルを定義できると考えています。

 これらを実現することが、私の「スコアリング&マッチング」チームの究極の目標です。将来的には、スマートフォンに音声で入力すると最適な物件や駅などをシステムが応えてくれるようにしたいと思っています。


編集中村 編集 中村

 子どもがベビーカーを使っていたころは「階段をなるべく使わないルートを教えてくれる地図アプリ」を使っていて、本当に便利でした。これからは、例えばラーメン屋の「固め、濃いめ、少なめ」のように、そのときの気分を伝えるだけで地図アプリが自分に最適な情報を取捨選択してくれる未来が来るのかもしれないと思うとワクワクしますね。


阿部川 物件選びが、システムやデータによってより楽しいものになるのですね。

アーロンさん よりライフスタイルに密着した、理想のライフスタイルを実現してくれる物件選びになると思います。平日は仕事があるから駅に近い方がいいが、週末は犬を川沿いで散歩させたいかもしれない。建物や周りの環境、色などもあります。初めて東京に来た人は、どのエリアが自分に適しているかなどは分かりません。これらを解決するサービスは今のところ存在しませんから、解決することこそ「科学」だと思います。もちろんエンジニアリングが必要はところも多々あります。音声の認識や翻訳などはまさにエンジニアリングの分野です。

 それと、どんな質問をすればより的確なライフスタイル情報が得られるかを考えることも重要です。川沿いの犬の散歩だったら、どのぐらいの距離、時間がいいのか、川ではなく公園ではどうか、などの心理的な質問です。それを考え、翻訳し、尋ねる、といったシステムは現在存在しません。もちろん幾つかのアルゴリズムはあります。フランスの研究者がエージェントを介してそのような対話を研究しているのは知っていますが、現在まだ開発中です。そういった背景もあり、決して全てを一から作るわけではありませんが、エンジニアリングとの融合と研究開発は続ける必要があります。

 GAテクノロジーズ社内には物件の各種の写真データや間取りの詳細なデータを持っているチームがあるので、それらと協業し利用方法をより広げることが私のチームの役割です。それぞれの仕事の領域を常に触手のように伸ばし、それぞれが影響し合いながら仕事をしています。

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