HDDの1GB当たり単価は13年間で約87%下落していた 底値は?「近い将来、HDDのGB単価は0.01ドルになる」と予測

Backblazeは、2009年以降で自社データセンター用に購入した26万台超のHDDを対象に、容量別、購入年別に1ギガバイト(GB)当たりの容量単価を調査した結果を発表した。

» 2023年01月20日 12時00分 公開
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 クラウドストレージやクラウドバックアップサービスを提供するBackblazeは、2009年以降で自社データセンター用に購入した26万台超のHDDを対象に、容量別、購入年別に1ギガバイト(GB)当たりの容量単価を調査した結果を発表した。

HDDの購入台数

 Backblazeでは、2009年までさかのぼれるHDD購入記録が残っている。それによると、2009年以降の総購入台数は26万5332台。その容量別の内訳は次の通り。

図1 Backblazeが2009年以降に購入したHDDの容量別の購入台数、最初に購入した月、最後に購入した月(提供:Backblaze) 図1 Backblazeが2009年以降に購入したHDDの容量別の購入台数、最初に購入した月、最後に購入した月(提供:Backblaze)

 Backblazeは現在、16TBのHDDのみを購入しており、他の容量のHDDは、少量のスペアを購入する可能性があるとしている。今後数カ月間に納入される購入済みの16TB HDDが1万2000台あるが、これらは今回の調査対象に含まれていないという。

 Backblazeは2023年に、18TB、20TB、場合によっては22TBのHDDを購入対象に加える予定だが、これらを大量に購入するのは少し先になると述べている。

所有するHDDの種類

 Backblazeが購入する全てのHDDはPMR(垂直磁気記録方式)を採用している。PMRはCMR(従来型磁気記録方式)とも呼ばれる。SMR(シングル〈瓦〉磁気記録方式)を採用したHDDは使用していない。SMR HDDは安価な場合もあるが、ランダム書き込みの際や、ファイル削除で使用可能になった領域を再利用する際に、明らかに速度が低下するとBackblazeは説明している。

1GB当たりのHDD単価

 Backblazeが2009年にHDDを購入したときのGB単価は0.11ドルを超えていたが、2017年末にはGB単価は0.03ドル強まで低下していた。その時点では、8TB HDDがBackblazeの主要なHDDだった。その後の数年間に同社は12TB、14TB、16TBのHDDを追加し、下のグラフのように、平均GB単価は下落し続けてきた。

図2 Backblazeが2017年以降に購入したHDDのGB単価(提供:Backblaze) 図2 Backblazeが2017年以降に購入したHDDのGB単価(提供:Backblaze)

 2017年から2022年11月までの間に、Backblazeが購入した全HDD(8TB、12TB、14TB、16TB)のGB単価は、0.033ドルから0.0144ドルへと56.36%下落した。年平均では9%以上の下落率となった。Backblazeはこのデータの背景を説明するために、2009年〜2022年11月の間でデータドライブとして使用した全種類のHDDについて、GB単価の推移を次のグラフで示している。

図3 Backblazeが2009年以降に購入したHDDのGB単価の推移(提供:Backblaze) 図3 Backblazeが2009年以降に購入したHDDのGB単価の推移(提供:Backblaze)

 GB単価は全体的に低下の一途をたどっているが、3TBおよび4TB HDDのGB単価だけは、上昇と下降の繰り返しという変動を示している。これは、タイで洪水が発生したため2011年後半に始まったHDD危機によるもので、この事態は2013年に正常化するまで市場に影響を及ぼし続けた。

 Backblazeが購入したHDD全体の平均GB単価は、2009年の0.114ドルから2022年11月には0.014ドルに下落している。この差は0.100ドルだが、2009年〜2022年11月の平均GB単価の下落率は、87.4%ということになる。2009年1月以降の月ごとの平均下落率は0.52%だ。

 この間にHDDメーカーは、同じ3.5インチの基本シャシーにより多くのプラッタを詰め込み、面密度を劇的に高め、HDD内部にヘリウムを充填(じゅうてん)する方法を考え出し、プラッタにガラス基板を使用し始めた。これらの他にも改良と革新に取り組んできた。特定のHDDメーカーをどう評価するかはさておき、業界全体として非常に素晴らしい動きだとBackblazeは評価している。

HDDの購入価格と市販価格

 Backblazeは、自社で使用している12TB、14TB、16TB HDDのうち最も安価なモデルの購入価格を、その市販価格とともに次のように示している。

図4 Backblazeが購入した12TB、14TB、16TB HDDのうち最も安価なモデルの購入価格と市販価格(提供:Backblaze) 図4 Backblazeが購入した12TB、14TB、16TB HDDのうち最も安価なモデルの購入価格と市販価格(提供:Backblaze)

注1:Western DigitalによるHGSTのHDD事業の統合に伴い、これらのHDDのモデル番号はWestern Digital方式に変更されている。注2:このモデルはサーバベースのHDDとして販売されており、「MG07ACA14TE」のような類似モデルはより安価だ。

 Backblazeは、購入価格と市販価格の違いについて「われわれはHDDを、価格や納期などを保証する契約を結んで大量に購入している」と説明している。

調査から分かる教訓

  • 長期的に見ると、HDDのGB単価は毎月平均約0.5%のペースで下落する。最初は徐々に下落し、その後一定期間、加速度的に下落した後で、緩やかな下落に転じる。
  • ほぼ全てのケースで、HDDの新たに投入された容量モデルは、GB単価が最終的に、従来の容量モデルよりも下がる。例えば、14TBモデルのGB単価は12TBモデルよりも低くなり、16TBモデルのGB単価は14TB HDDよりも低くなる。

HDDの底値はどこか

 Backblazeは、2017年に発表した同テーマに関するレポートで「底を目指す競争は終わった」と宣言し、HDDのコストがこれ以上下がることはないとの見通しを示していたが、これは間違いだったと振り返っている。

 さらに「HDDのGB単価の次のマイルストーンは、0.01ドルだ」と述べ、これは販売価格ではなく、市販価格における節目だと注釈した。22TBまたは24TBのHDDが登場する2025年半ばには、この水準に達するだろうとBackblazeは予測している。そうなれば、CostocoやAmazonで、22TB HDDが約220ドル、24TB HDDが約240ドルで購入できるようになる。

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